第19話:光の力
二人の周りには、騎士団や魔道士たちが控えている。アレクシスとユリウスの姿も見える。彼らの目は虚ろで、操られているように見えた。
「ゲーム通りのエンディングを迎えさせるだけよ。クラリスは処刑され、魔王は倒され、二つの国は戦争を始める。そして私たちプレイヤーが、新たな王として支配する」
エリザベスの言葉に、胸が痛んだ。これは私が作り上げたゲームの世界。その世界の住人たちを、単なる駒のように扱うなんて…。
「許さない…」
私の声は小さかったが、確かな決意が込められていた。
「何ですって?」
「あなたたちを許さない。私が作った世界、私が愛した登場人物たちを、好き勝手にはさせない!」
私の声が響くと同時に、胸の中から赤い光が溢れ出した。「永遠の約束」の石だ。その光が強くなり、私の全身を包み込む。
「何をする気?」
エリザベスが後ずさる。彼女の背後では、石碑が不気味な光を放ち始めていた。
「物語の真のエンディングを書くわ。創造主として、そして登場人物として」
ハインが私の肩に手を置いた。彼の力が、私に流れ込んでくるのを感じる。
「私の力を使え。私たちの約束の力を」
私は目を閉じ、前世の記憶を全て呼び覚ました。藤堂美咲としての生、シナリオライターとしての思い、そしてゲームに込めた想い。
《この世界の本当の結末は…幸せであるべき》
光が強くなり、辺りを白く染め上げる。石碑も同様に光り輝き、二つの世界の境界がぼやけ始めた。
「やめなさい!私たちの結末を邪魔しないで!」
エリザベスの声が遠くなる。私の意識は、二つの世界の間に浮かんでいた。創造主としての藤堂美咲と、登場人物としてのクラリス・フォンティーヌ。二つの人格が融合し、新たな力が湧き上がってくる。
「私は物語を終わらせる…本来あるべき形で」
混沌とした光の中で、私は手を伸ばし、目に見えない何かを掴むような仕草をした。それは「物語の糸」。私が紡いできた世界の筋書きだ。
そして、新たな結末を紡ぎ始めた。
《エリザベス王女の中のプレイヤーの意識は、光に包まれ消えていく。彼女は本来の優しい王女の姿を取り戻す。隣国の王女も同様に、乗っ取られた意識から解放される。》