第16話:プレイヤーの存在
「人の魂は、強い想いがあれば、死後も繋がりを持ち続ける。我々が交わした約束は、そんな力を持っていた」
彼は静かに私の手を取った。その手は温かく、力強かった。
「あの赤い石は、単なる魔力の塊ではない。君と私を繋ぐ約束の証だ」
「でも、取られてしまったわ」
「問題ない。本物はここにある」
彼は私の胸元を指さした。
「…心の中に?」
「そう。永遠の約束は、君の魂に刻まれている」
その言葉と同時に、胸の奥に温かいものが広がるのを感じた。赤い光が私の胸から漏れ出し、形を作り始める。それは小さな赤い石の形をしていた。
「これが…」
「君自身の魂に宿る約束の証だ」
私は恐る恐るその石に触れた。触れると、さらに記憶が鮮明に蘇ってきた。
《私の創ったキャラクターが、命を持ち、実在するなんて…》
《死んでしまうなんて…まだやり残したことが…》
《お願い、私の物語を…完成させて…》
《永遠に、あなたと…》
「私…約束したのね。『永遠の約束』を完成させると」
「ああ。そして私も約束した。君を守ると」
鮮明に蘇る記憶と共に、感情も溢れ出てきた。ハインへの信頼、依存、そして——愛情。
「私、あなたを愛していたのね…創造主としてではなく、一人の人間として」
「そして私も、君を愛していた。被造物としてではなく、一人の魂として」
ハインの瞳に映る感情は、今まで見たことのないほど深く、暖かかった。
「でも、これからどうすればいいの?明日には私の行方が気づかれる。王国は大騒ぎになるわ」
「その前に、もう一つ重要なことがある」
ハインの表情が急に真剣になった。
「エリザベス王女は、実はこの世界の人間ではない」
「え?」
「彼女の中には、別の世界から来た意識が宿っている。『プレイヤー』と呼ばれる存在だ」
「プレイヤー…」
そう、ゲームをプレイする人のことだ。まさか、私の作ったゲームの世界に、プレイヤーの意識まで入り込んでいたなんて。
「彼女は君のゲームのエンディングを知っている。クラリスが処刑され、魔王が倒されるバッドエンド」