第14話:魔王の救出
暗がりから現れたのは、黒いマントに身を包んだ人影だった。
「迎えに来たよ」
ハインの声だ。
「ハイン!」
思わず立ち上がろうとした瞬間、体に激痛が走った。真実の魔薬の副作用か、体が言うことを聞かない。
「無理するな」
ハインが私に駆け寄り、優しく抱き上げた。
「どうして…赤い石は取られたはずなのに」
「君の魂は私と繋がっている。石がなくても、君の危機は感じ取れた」
月明かりに照らされたハインの顔は、いつもより青白く見えた。彼は私を抱えたまま、牢獄の外へと向かった。
「でも、このままじゃ追手が…」
「安心しろ。結界を張った。気づかれることはない」
城内を抜け、庭園を通り、城壁の外へ——ハインは私を抱えたまま、まるで風のように素早く移動した。彼の腕の中で、不思議なほど安心感があった。
禁忌の森に入ると、彼のペースはさらに速くなった。魔力が満ちた森の中では、彼の力がより強くなるのだろう。
やがて、前に案内された青い湖のほとりに到着した。ハインは私を静かに地面に降ろした。
「ここなら当分は安全だ」
「ありがとう…」
体の痛みはまだ残っていたが、森の魔力が少しずつ癒してくれるように感じた。
「ハイン、私のせいで王国との関係がさらに悪化してしまった」
「気にするな。元々、彼らはいつか私を排除する計画を持っていた」
「え?」
「エリザベス王女が秘密裏に進めていた計画だ。魔王討伐の準備を…」
「そんな…」
ハインは湖の水面を見つめながら、静かに続けた。
「君に罪を着せ、それを理由に私を攻撃する。完璧な計画だった」
「でも、なぜそこまで…」
「彼女は知っているんだ。私が何者か、本当の力が何か…そして、君との関係を」
「私との…?」
ハインは一旦言葉を切り、深く息を吸った。そして私の方を振り向き、真っ直ぐに目を見つめてきた。
「全てを話す時が来たようだ」




