とりあえず死んだ事にしようと思います。
秀勝は秀吉に提案をします。
「はい、私の事なのですが…死んだ事にして欲しいのです」
「…どういう意味じゃ?何故わざわz『父上は私が目を覚ましたのを見て複雑そうなお顔をされておられました。私が死んでいた方が良かったという事では?』…そ、そのような、そのような事は断じてない、断じてないぞ!」
俺の言葉に秀吉さんは驚きと戸惑いが混じったような声色でそう言っていたが…そんな声色じゃ肯定しているのと同じようなものだけどね。
「別に父上が私を嫌っているとは思っておりません。羽柴の家の今後の事を考えると…という意味でそうお考えになられたのでは?」
「ほぅ…何故、そなたが死んだ方が羽柴の家の為になると思うのだ?」
「おそらく父上は私が死んだ事で跡継ぎがいなくなった事を憂い、信長様に御子の一人を養子にと願い出るおつもりであったのでは?そうすれば、如何に羽柴の家が今後どれだけ大きくなろうともそれは全て信長様の御子が受け継ぐ事になります故、信長様にとって悪い話でも無いと」
俺がそう言うと、秀吉さんは図星を突かれたような表情を見せて押し黙る。
「それに、信長様は厳しい御方ではありますが、御子には甘い一面もおありです。今後如何に失敗があろうとも羽柴の家を潰そうとまではせぬはず…違いますか?」
「…違わぬな。じゃからこそ儂は、お主が死にかけていると聞いた時に即座に信長様の御子を貰う事を考えた…お主には悪いがそれが羽柴の家の為と思うた。しかしお主が目を覚ました以上それも叶わぬとの思いもない交ぜになって、それが表情に出てしもうたのじゃろうな。お主にはすまぬ事をした」
秀吉さんはそう言って頭を下げる。
「いえ、それについてはお気になさらず…して、如何でございましょう?」
「お主を死んだことにする事か…もしそうなったらお前はどうするのじゃ?」
そういえば死んだ事にした後についてほぼ考えてなかったな…どうしようかな?
「そうですね…とりあえずは日ノ本の外へ行こうと思っております」
「外…明へか?」
「明に限らずですね。南蛮の国々とかも含めて」
「南蛮のぉ…行くだけでも何年もかかるぞ?」
「望む所です」
秀吉さんの言葉に俺がそう答えると、秀吉さんは大きく目を見開き俺の顔をしばらくじっと見つめる。そして…。
「分かった…お主の言う通りにしてみよう。羽柴の家の為にな」
一つ息をついてからそう答える。ふぅ、とりあえずはこれでと思ったのだが…。
「だがその前に一つ答えぃ…お主は誰じゃ?見てくれこそは秀勝じゃが儂の目は誤魔化せんぞ?」
そう言って秀吉さんは俺を笑ったような怒ったような顔で睨みつけてくる…もしかしなくても、中身が別人ってバレてる?どうする、俺?