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生者を笑うモノ ——その5

「レイバーン先生。オバケ退治をするので、次の授業を欠席させてください」

「……えーと、白蔵? ナニを言ってるのか全然わからないんだけどォ?」


真白さんから相談を受けた翌日。俺は"生者を笑うモノ"のメカニズム解明に必要な「授業中の調査」を行う準備を進めていた。

結局、隠神に倣って授業をサボることにしたのである。とはいえ無断欠席で余計な心配をかけるわけにもいかないと思い、俺は馬鹿正直にサボリの事前申告をしにきていた。


「オバケ退治ってさァ、もしかしてこないだ言ってたヤツ?」

「はい。生徒会で推進している百鬼椰行の撲滅運動です。今回は、授業中にしか起こらない怪奇現象の調査を行いたくて」


抜けることにしたのは、本日三時限目の英語の授業。教科担当はレイバーン先生だった。もちろん英語の授業を軽んじているわけではない。真白さんがプールで笑い声を聞いた時間帯に合わせての考慮である。

まずは納得してもらえるよう、レイバーン先生にも"生者を笑うモノ"の話を伝える。ジャパニーズホラーが苦手だという彼は「ぐえー、聞きたくないよ」と言って舌を出していたが、なんとなくの事情は理解してくれたようだった。


「ようはオバケの笑い声を聞くために、張り込みしたいってコトね?」

「そうなります。授業を休むことになってしまうのは申し訳ないんですが……」

「あー、いいよいいよ。白蔵は成績いいしね。一回や二回休んだくらいで問題ないっしょ」


生徒会の活動という名目があるとはいえ、それなりに苦言を呈されるだろうと覚悟していたのだが。なんだかアッサリ許可が下りてしまった。


「さすがに公欠ってわけにはいかないケド、お咎めナシにはしといてあげる」

「ありがとうございます。ちなみに隠神も参加させたいんですが……」

「彼女は……成績も出席日数もヤバいから授業に出てほしいなァ」

「あはは……そうですよね……」


できるなら隠神の分も許可を取っておいてあげたかったのだが、それは普通に却下された。悲しきかな、これが日頃の行いの差というやつである。

しかしレイバーン先生は「でもまぁ、あの子は止めたってキミについてくだろうしねェ。今のは聞かなかったコトにしようかな」と、教師という立場における最大限の譲歩をみせてくれた。


「そういえばレイバーン先生、放送部の顧問なんですよね」

「ん? もしかして隠神に聞いたァ?」

「ええ。ユウレイラジオの件で何度かお話を伺っているとか」

「ホントになんにも知らないんだケドさァ、なかなかあきらめてくれなくてねェ……困っちゃうよ」


隠神から聞いていた通り、レイバーン先生はこの件について何も知らないというスタンスを押し通そうとしていた。

そんなはずはないと思うのだが……まぁ、無策で問い詰めたところで出てくる情報もないだろう。


「レイバーン先生は怪談がお嫌いでしたもんね」

「そーなんだよ。だからオレ、こないだ隠神に言ったんだ。『怖いから百鬼椰行のハナシなんてしないでくれ』って。そしたら彼女、なんて言ったと思う? 『オバケなんて存在しないってことを証明してあげます』だってさ。この学校から、百鬼椰行をぜんぶ消すって言うんだよォ」


それを聞いて、ひとつ腑に落ちた。ユウレイラジオの汚名返上に固執している隠神が、どうしてわざわざ"放送室の幽霊部員"以外の百鬼椰行まで解決しようとしていたのか、だ。

あいつはすべての百鬼椰行を破壊し尽くすことで「オバケなんて存在しない」という証拠をレイバーン先生に突きつけるつもりだったのだ。


「オバケが存在しないと証明できたらDJユウレイについて教えろ、って詰め寄られてさァ。そんなの不可能だって思ったから、ついOKしちゃったんだケド……まさか白蔵が協力してるとはね。ハッハッハ、もっと考えて返事をするべきだったかなァ」


レイバーン先生は冗談めかして笑っていたが、その表情には困惑の色が滲んでいるように見えた。

きっと先生は、俺たちが百鬼椰行を全滅させられるとは考えていないだろう。しかし一方で、本気で達成されたら困る、という立場でもあるのだ。

DJユウレイの正体を知らないというのが本当だとしても、その言葉の裏に何かを隠しているのだとしても。


「おっと、そろそろ休み時間も終わりだねェ。キミらは体調不良ってコトにしといてあげるから、調査がんばってきな」

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