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生者を笑うモノ ——その2

ざざ、ざ……とノイズが入り、ユウレイラジオの放送が終了する。とは言っても、今回のそれは隠神のスマホから流された録音だった。

ユウレイラジオを聴くために学校に来ている、とまで豪語するこの女。最近はお昼になると生徒会室のスピーカー近くにスマホをセットして、いそいそとユウレイラジオのアーカイブを録っているのだ。

当人は「他の場所だと雑音が入っちゃうので上手くいかなかったんですが、生徒会室だと綺麗に録音できますねぇ」などと言ってホクホクだ。


「聞かせたいものがあるって言うから何かと思えば、結局ユウレイラジオかよ」


隠神が生徒会室に入り浸るようになったので、このところは俺もユウレイラジオを聴くのが日課になっていた。ファンとは言わないまでも、毎日聴いていれば番組への愛着もそれなりに湧いてくる。

ただし今日は(本来は隠神も参加すべき)生徒会の仕事でバタバタしていたのでユウレイラジオを聞き逃していた。すると放課後、隠神が「聞かせたいものがあります」と本日分のユウレイラジオを再生したのである。


「今の放送を聴いて、思うところはありませんでしたか?」

「キュウリが河童肉の代替品だってことくらいしかわからなかったが」

「もっと聞き逃せないところがあったでしょう」

「……回転ずしの皿は河童から剥ぎ取ったものだ、ってところ?」

「不正解です。罰として地獄に落ちてもらいます」

「ペナルティ重ッ。まて、ちゃんと考えるから」

「DJユウレイの正体に迫る大ヒントが隠されていたじゃないですか」

「……あ、もしかしてレイバーン先生のことか?」

「正解です。天国に行くことを許可します」

「死は免れないかぁ」


この放送の中で、DJユウレイは「レイバーン先生にプール掃除を手伝わされた」というエピソードを話していた。それが事実なら、レイバーン先生とDJユウレイには面識があるわけだ。


「知ってました? あの教師、放送部の顧問なんですよ」


隠神は不機嫌そうにそう言った。『あの教師』という言い方にトゲを感じる。

そういえばレイバーン先生も前に隠神の名前を聞いて気まずそうにしていた。もしかして仲が悪かったりするんだろうか。


「レイバーン先生はDJユウレイの正体を知ってるんだろうか」

「聞いても教えてくれませんよ」

「もしかして、もう掛け合ってみたのか?」

「ええ、何度も。けれど『なにも知らない』って言い張るんですよ」


DJユウレイがレイバーン先生の名前を口にするのは、今日が初めてではないらしい。

だから隠神は幾度となく「DJユウレイの正体を教えてほしい」とレイバーン先生に要求してきた。ところが彼は頑なにDJユウレイとの関係を否定し続けているのだという。


「あの教師、絶対なにか知ってるはずなんですけどね。でも、聞き出そうとするといっつもこう言うんです。『オレは臆病だから、百鬼椰行なんてものの話はしたくないんだ』って」


今日の放送の中で、DJユウレイは「ユウレイラジオ存続のために放送部の顧問には逆らえない」というようなことも言っていた。

やはりユウレイラジオと放送部には繋がりがありそうだ。だとすると何故、放送部顧問のレイバーン先生も、放送部部長の蟷螂坂も、ユウレイラジオの情報を秘匿しようとするのだろう。


「放送部はDJユウレイの正体を隠す手伝いをしている、ってところか?」

「正体を隠すというのがDJユウレイ自身の意思なら、私だって無理に正体を暴こうとはしませんよ」

「どういうことだ?」

「だって変じゃないですか。正体を隠したい人が、自分に繋がる人間の名前をベラベラ喋らないでしょう、普通」


それもそうだ。本気で正体を隠し通すつもりなら、面識のある人間の名前は伏せるべきだろう。レイバーン先生の話題を出すにしても、「R先生」とか適当に仮名をつければ済む話だ。

仮にDJユウレイが「自分の正体を明かさないでくれ」とレイバーン先生に頼んでいるなら尚のこと。徹底的に素性を隠しながら、レイバーン先生というパイプの存在は仄めかす。正体を隠したいのか、誰かに見つけてほしいのか。DJユウレイの行動は実にちぐはぐだ。


「私的には、あの教師がDJユウレイを拉致監禁してると睨んでます。あえて名前を出すのは、聴いている人へのSOSなんですよきっと!」

「そんなわけあるか。第一、自分とこの生徒を拉致してどんなメリットがあるっていうんだよ」

「DJユウレイを独占できるなんて素敵なことじゃないですか。きっとあの教師、DJユウレイに毎晩トークさせてるんですよ。耳元で。うらやま……いえ、許せない」


発想が絶妙に気持ち悪い。いつかDJユウレイの居所が判明したとき、本当に彼を拉致監禁するつもりなのはコイツではなかろうか。

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