「お前を愛する事はない。お前はネズミでも捕っていろ」と言われて「ニャ!?」と返した猫の話
「お前を愛する事は無い」
「ニャ!?」
「俺には犬がいるのだぁ!」
「ワン!」
「ミャ~ン?」
「お前はただこの家でネズミを捕っていればいいのだ!ナハハハハッ」
若旦那が犬をつれて何か言っていると思ったが、しょうも無いことを言っている。
私は三毛猫のミケ、この家では、先代からネズミ捕りで雇われている。
「ミィケちゃん。ブラッシングをしてあげるね」
「ミャン」
あの若旦那の義妹で先代の実子だ。こりゃ、中々上手いね。
「ニーナ、テスト、悪かったわね」
「ごめんなさい」
「ミャー、ミャー」(まあ、まあ)
この子は義母とはそりが合わない。
私も横に並んで謝ってやる。
「フン、この猫、いっぱしの親気取りかね。親が死んだらみなしだ。孤児院に行くかい?」
「グスン、グスン」
「シャアアアアーーー」(言い過ぎだよ)
「まあ、生意気な猫ね」
「ワン!ワン!」(ごはん。ごはん)
「まあ、リスキー、可愛いわね。今、あげるわ。あんたと猫はご飯抜きだよ!」
・・・・
「ワン!ワン!ワン」(食べなよ。あの子にもあげて)
「ニャン、ニャー!」(結構だよ。あの子は犬のご飯を食べられないよ)
「ワン?」(こんなに美味しいのに?)
前足でお皿を差し出して、私と嬢ちゃんに食べなってきたものだ。
この犬、中々だな。犬にしておくには惜しい。
しかし、ある日、決定的な事が起きた。
リスキーが壺を割ったのだ。
ガチャン!
「ニーナ!壺を割ったでしょう!」
「クゥ~ン」(僕だよ。ご主人)
「私じゃありません」
「フン、リスキーのせいにして、アンタなんか出て行きなさい!」
「ウワ~ン、ウエ~ン、グスン、グスン」
ついに追い出されちまった。
あのブラッシングの手入れは欲しい。
後をついていくか。
ザーザーザー!
雨が降り出した。防水樽の後ろに隠れな。
「ニャー!ニャー!」
「え、ミケちゃん」
「ミャー、ミャー!」(ほら、抱っこして暖めあいな)
「ミケちゃん」
どうしようか。この子、12歳だけど大きな猫的には幼いんだよね。
「クゥ~~~ン。クン~ン」
あら、リスキーが来た。
リードの先には、あの若旦那がいる。
「そんな所に隠れていたのか?ニーナ、さっさと帰るぞ」
「クゥ~~ン」
「でも・・・」
「猫も一緒でいいぞ」
「はい、お兄様、キャ」
「フン、やっと兄と呼んだか」
帰ったら、若旦那が自分の母親に説教している。
「母さん。ニーナに仕事を言いつけて勉強する時間がないでしょう」
「ダグラス、どうしたの一体。あの子は連れ子よ」
「それに、壺を割ったのはリスキーだ。だな?」
「ワン!」
「フン、罰として俺とリスキーはご飯抜きだ。その総責任者の母さんもだ」
「そんな」
「ニーナは夕飯を食べな。魚も買っておいた。ミケにあげな」
「でも、お兄様もお義母様もリスキーもミケも皆、ご飯を食べるのがいい」
「良い。そうでなければこの罰はなくならないよ」
「ダグラス、母さんお腹減ったよ。勘弁しておくれよ」
「ダメだ。有言実行だ」
何だ。こいつ。観察するか。
ニーナが私をブラッシングしているとこっそりのぞいている。
ありゃ、母猫が子猫を構いたがる視線だよ。
「ミャン!」
「ミケちゃん。あ、お義兄様」
「おう、猫用のクッション買いにいくか?」
「はい!」
仲良くなりたかったんだね。
犬から聞いたら、いつも私と仲良くしているから嫉妬していたんだってね。
「ミャン!」
「おい、ミケ、膝に乗るな・・・まあ、いいか」
ナデ~ナデ~
フン、下手だね。
こいつを教育する必要があるね。
あの母親には。
「ヒィ、ネズミ、ベッドにネズミがいるわーーー」
ネズミの死骸をプレゼントしてあげた。
「母さん。猫は自由だよ。少し優しくしたら、嫌いな相手にはベッドの上でうんこをするって聞くよ」
「はあ、はあ、猫を追い出します」
「ネズミはどうするのさ」
まあ、しばらくこの家にいてやっても良いと思う今日この頃だ。
最後までお読み頂き有難うございました。