どデカい月ノ輪熊の獣人ムーンシャン
「それで逃げてきたと…」
「は、はい…申し訳ありません、ミカエル様…」
ここは天界の大天使ミカエルのオフィスである
ミユナシアは悪魔犬グラシャラボラスが恐ろしくて天界に逃げてきたのだった
「まあ、いいでしょう、ミユナシアにはしばらく休暇を与えます……実家に帰ってゆっくりしなさいて……あっ、あと、この手土産を持ってあなたの実家のパパ……いや私の上司であられる能天使軍【パワーズ】の指揮官カマエル様によろしくお伝えください
一方、俺と月の女神アルテミスとエルフの王女ソラファと悪魔犬グラシャラボラスとヒヨコの獣人は4頭立ての高級大型馬車に乗り森の中の道をガタゴト揺れながら小型水晶玉のお昼のニュースをダラダラ見ていた……
「お腹減ったな」
俺はダラダラと立ち上がり冷蔵庫を開けて見たがアイスしかなかった
「……ったく、馬車に運び込む食料をセリーナに任せるんじゃなかったな……」
すると俺の言葉を聞いたソラファがみんなに言った
「お昼にしましょう、みんな外に出て!なぜかフライパンと香辛料はあるから獲物を取りに行きましょう」
俺達はソラファに続いて馬車を降り森の中に出た
澄んだ空気だ……深呼吸すると気持ちいい
鳥のさえずりも聞こえる
突然ソラファが叫んだ
「あっ、ホネツキチキンドリだわ!」
ソラファの視線の先を見ると、たしかにお肉が羽を生やし飛んでいた
その距離およそ20メートル
ソラファは素早く背中から弓矢を取り出すとホネツキチキンドリに狙いを定め弓を目一杯引き矢を放った
矢は一直線にホネツキチキンドリ目掛けて飛んでいき見事に命中した
「グラちゃん!」
ソラファが叫ぶと悪魔犬グラシャラボラスはものすごい勢いで獲物目掛けて走っていきホネツキチキンドリを咥えソラファの所へ戻ってきた
「ワンワンワン」
「グラちゃん、お利口さんね」
ソラファはグラシャラボラスの頭を撫でている…それを見ていた月の女神でありながら狩猟の女神でもあるアルテミスが俺に言った
「負けてられないわよ、ルキ!」
どうやら闘争本能に火がついたらしい
黄金の弓矢を空中から取り出し黄金の弓を引き矢を放った! もちろんど真ん中に命中した
「ルキ!」
「なんだよ、取ってこいってか、俺は猟犬か」
「ルキ!!!!!!」
「はいはい、分かったよ」
俺は小走りで黄金の矢の突き刺さったホネツキチキンドリを拾い上げるとアルテミスの元へ持っていった
「はい、アルテミス」
「ルキ、お利口さんね」
アルテミスはそう言うと俺の頭を撫でた
「俺は犬か!」
2人て笑い合い、俺は、そう言いながらも内心はドキドキしていたのであった…
エルフ川の河原に火をおこし、取ってきた野草とホネツキチキンドリをフライパンで焼き始め香辛料をふると良い匂いが辺りに立ち込めてきた
俺はヒヨコ獣人を見ながら言った
「あとは卵が欲しいよな」
「ワイ、オスやで、しかもまだヒヨコやで、でも気張ってみまひょこか?」
「いいよ、冗談だって」
俺はヒヨコ獣人のダジャレを無視しながらそう言い放ったのだった
昼ごはんを食べ馬車は先に進んだ
道はどんどん森の奥に続いているようだ
突然、ものすごい金属音と共に、木の倒れる音がした
ドドドーン!!!!!!!
馬車の目の前に巨木が倒れてきた
「あっ、危ない!!!」
「ヒヒーン!!!」
すんでのところで馬車の御者が手綱を引き急ブレーキをかけたことで何とか巨木を交わすことが出来たのだった
みんながホッと胸を撫で下ろした時、巨木の向こうから声がした
「大丈夫だか?ケガはないだべか?」
その声の主は巨木に飛び乗った
それは巨大な斧を持った、どデカい月ノ輪熊の獣人だった
俺達は警戒しながら馬車の外に降りた
「私達にケガはないけど…あなたは誰?」
ソラファが言うと、どデカい月ノ輪熊の獣人は言った
「ああ、オラか?オラはキコリだ、んで、この先のぶどう村のものだ……お詫びに、ぶどう村に招待するだ、みんなで来ねえべか?」
そしてソラファが答えようとした時だった
突然どデカい月ノ輪熊の獣人が震えるような声で言った
「ア、ア、ア、ア、アルテミスだべさーーー!!!!!!!!」
どデカい月ノ輪熊の獣人はそう叫ぶと逃げるようにして道の先へ行ってしまったのだった
俺は言った
「おい、アルテミス様だろ、様をつけろよ! ん? アルテミスを知ってるのか?」
俺の声をよそにアルテミスはおもむろに馬車の前に倒れている巨木の前に行くと巨木に両手をピタッと引っつけた
次の瞬間、アルテミスの両手が光ったかと思うとアルテミスは巨木を頭の上まで持ち上げ道の邪魔にならない所まで歩いていき巨木をそこに下ろしたのだった
俺は目が点になり思った
うん、アルテミスには逆らわないことにしよう……と
その後、俺達は馬車に乗り込み先を急いだ……
そしてみんなで今夜どこに泊まろうか、どこで寝ようか相談していた矢先、御者が叫んだ
「ソラファ様、吊り橋があります」
馬車は吊り橋の前で止まった
どうやらエルフ川を渡れるらしい
だがこの、4頭立て高級大型馬車が通れる幅はなかった
俺達は馬車を降り吊り橋の前に集まった
そして吊り橋の入口を見ると、吊り橋の入口には、この先ぶどう村と書いてあったのだった……




