深海城のプリンセス・オットー
「えっ、ミカエル?」
意外な人物とは大天使ミカエルだった
「えっ、ルキですか? いや、ずいぶん雰囲気が変わりましたね……そういえば最近、魔界を支配なさったとか……おめでとうございます」
「いやいや、そんな……大したことじゃないよ……それよりミカエルとは、1年前に、魔界の巨大観覧車の1番上のゴンドラの前で会って以来だね」
「あーー!! そうでした!! よ~~く覚えてますよ!! ルキの配下の天使が、ふつうの饅頭と見せかけて私に生気を奪う死神饅頭を一つくれたのを……あの時はどうもありがとう!!」
「いや、キレてるし……」
「いえ、キレてないですよ……しかも、あのあとルキが熾天使セラフィム様に献上した死神饅頭を食べた天界の天使たちが、皆、ふらついてましたからね」
「ミカエル、目が怖いぞ……なんか圧も強いな!!」
(あの後、神界にも死神饅頭を配ったことは、黙っておこう……)
「あっ! 私としたことが……我らの神よ……私の未熟さをお許しください……」
「ところで、ミカエルは、どうしてこの深海城にいるんだ?」
「ああ……それは、今度、天使界で慰安旅行をする事になったので、幹事の私が先遣隊として候補地を回っているのです」
「それは、うらやましい……いや、お疲れ様」
「では、ルキ、私はスパを調査するのでこれで……またどこかでお会いできたら良いですね」
「ああ……じゃあな」
ミカエルはスパの中へ入っていった
するとどこに居たのか廊下の先からお供らしき天使達の列がゾロゾロと出て来てミカエルの後に続いてスパの中へと入っていく……
(一体、何人お供がいるんだ? 全然列が途切れないぞ……)
その時ある天使が叫んだ
「あいつだ!!!!」
次の瞬間、ゾロゾロとスパに入っていく天使達が一斉に俺を見たかと思うと、歩みを止めることなくブツブツ言いながらそのままゾロゾロとスパに入っていった
「あいつだ……あいつだ……あいつだ……あいつだ……あいつだ……あいつだ……あいつだ……あいつだ……あいつだ……あいつだ……あいつだ……あいつだ……」
(はっ? 天使どもが皆一様に俺にメンチを切っていってるやん……おい! 天使ども! もういっぺん、死神饅頭食わすぞ……しかし、この人数……これは経費で落ちるのか?)
「まあ、とにかく今はスパを見学するのは、やめにしとこう……もうそろそろ魔界に帰ろうかな……」
俺は深海城を出るため、エントランスに向かっていたが突然、後ろから、ものすごい足音が聞こえてきた
俺は殺気を感じ後ろを振り返った……
するとプリンセス・オットー様が、呪いのおみやげ箱を小脇に抱え、必死の形相で、まっすぐ俺に向かって、ガニ股で走ってくるのが見えた
俺は、とっさにテレポートで逃げようとしたが逃げる間もなく追い詰められてしまった……
「呪いの……おみやげ箱……ハァハァ……お忘れですよ……ゴホッゲホッ……」
「あっ、呪いのおみやげ箱、いらないっス……それでは」
俺がプリンセス・オットー様の横を、すり抜けようとすると、プリンセス・オットー様は、俺の腕をゴリラの握力のごとき力でガッチリつかみ言った
「まあまあ、そう言わずにお一つ……」
「いや、かさばるので、いらないです」
「それならこれを……」
プリンセス・オットー様は、どこか服の中から瓶を取り出すと言った
「これは、呪いのおみやげ瓶です……但し、決して開けてはなりませぬ!」
「えっ、中身は何ですか?」
「決して開けてはなりませぬ!」
「いや、ちょっと意味分からないっスね……しかも、瓶の中で何か黒いものが渦巻いていますけど……いらないです、では、さよなら」
俺はそう言うとテレポートし、深海城の外へ出た
「あっ、アルテミス様!!!!」
「あっ、ルキさん、どうされたのですか?」
「いえ、これから帰るところなんです……アルテミス様はどうしてここに?」
「私も、これからアルテミス神殿にテレポートで帰るところです……よかったらこれからアルテミス神殿に、いらっしゃいますか?」
「行きます! 行きます!」
「では、私の手を握ってください」
「えっ……」
「ルキさんも一緒にアルテミス神殿までテレポートしますので」
「分かりました……では」
俺は嬉しさを隠し女神アルテミスの手を握った……
その時、深海城の入り口からプリンセス・オットー様が呪いのおみやげ瓶を持って走って来た
プリンセス・オットー様は石につまづき、コケた……
プリンセス・オットー様の手から呪いのおみやげ瓶が離れ、俺の方に飛んできた……
呪いのおみやげ瓶は、俺の足元で派手に割れた……
「キャッ!」
女神アルテミスが割れた瓶の音に驚き、悲鳴とともにのけぞった……
その瞬間、俺と女神アルテミスはテレポートしたのだった……