怪物エキドナvs.俺たち……そしてラブラブハートマン
俺とアイスの魔女セリーナは、アルテミスの滝の上空からアルテミスの滝を見ながらボーッとしていた
あれから別段変わった様子はない……
(穏やかな陽気、流れる雲、滝から吹き上がってくる風、黙ってると可愛いセリーナ……ああ……気持ちいい……)
その時、突然セリーナが叫んだ
「あっ、あれは何かしら?」
俺がセリーナの叫んだ方を見ると、何かがフラフラとゆっくりこっちへ飛んできている
その飛んできているものが近づくにつれ、それは、まるでスーパーヒーローのような格好をした何者かだということが分かった
そして、そのスーパーヒーローのような格好をした何者かは、そのまま俺たちが乗っている魔法の空飛ぶアイスモナカの皮のじゅうたんに飛び乗ってきたのだ
そのスーパーヒーローのような何者かは、口と鼻まで隠した全身タイツを着て、背中には大きなマントをつけ、頭の上には巨大なコーヒーカップが乗っていた
そのスーパーヒーローのような何者かは、俺たちに言った
「我が名はラブラブハートマン! 心の赴くまま、愛のために戦う者だ!」
「いや、ココアサンドラだろ!!!!」
俺は食い気味のツッコミを炸裂してやった
なぜなら、目と眉毛と声が、完全にココアサンドラだったからだ
「いや、我が名はラブラブハートマンだ!」
「はいはい、で、そのハートマン様が何の用だ?」
「略すな! ラブラブハートマンだ!」
「分かった分かった、そのラブラブハートマン様が、どした?」
「心の赴くまま、愛のために悪者退治の旅をしている途中、この展望台が見えたので休憩のために立ち寄ったのだ」
「展望台じゃないけどな、ああ、だから疲れてフラフラした飛び方だったんだな」
「それは違うぞ、ルキ……あっ、いや、その、つまり、我は本来の姿にならないと、ちゃんと空を飛べないのだ、分かったか!」
「いや、分かったか、 じゃねーよ! 今完全に俺のことルキって言ったじゃん!」
「言ってない!」
「はっ? ココアサンドラだろ? 脱がしてやる!」
俺は顔を見ようとココアサンドラの頭に乗っている巨大なコーヒーカップに手をかけた瞬間、突然セリーナが叫んだ
「ルキ!!!! 滝の中を見て!!!!」
俺がセリーナの指さす方を見ると、滝の中に昨夜、俺が見た巨大な雫の形の魚影が見えた……と思った次の瞬間、それは滝の上から飛び出してきた
それは、両手で魔法の空飛ぶアイスモナカの皮のじゅうたんを掴もうとしたが、セリーナによって、とっさに交わすと、セリーナは魔法の空飛ぶアイスモナカの皮のじゅうたんを地上へ猛スピードで下ろした
ラブラブハートマンはそのまま空に残り飛んでいた
俺とセリーナは魔法の空飛ぶアイスモナカの皮のじゅうたんを襲ってきた、それを見た……
それは巨大な生物で、上半身は女性だが下半身はヘビ、背中には翼が生えていた
「ルキ、あれは……」
「ああ、怪物エキドナだ!!!!」
その時、突然後ろから声がした
「どけどけどけーー!!!! 私にまかせとけーー!!!!!!!!」
宮廷魔術師リコッチーだった
リコッチーは、俺とセリーナの前方に出ると腕をぐるぐると回し始めた
両手の先から花火が連続で上がっていく
当然、怪物エキドナには当たるわけもなく、空にキレイな花火が咲いた……
俺は少し強めにツッコんでやった
「おい! リコッチー、花火ぶち上げとらんと攻撃せんかい!!!!!!!!」
「すまぬ、あとはまかせた!!!!」
「いや、何しにきたんだよ!!!!!!!!」
俺の声をよそに、魔法の杖を取り出したセリーナが叫んだ
「フリージング・ブリザード・レベル四!!!!!!!!」
するとアイスの魔女セリーナの魔法の杖から放たれた雪の渦は、すぐに猛吹雪となり、滝がみるみる凍結すると同時に怪物エキドナまで凍りついたのだった
「やったか?」
俺がそう言った数秒後……
ピキピキピキ……パリパリ……ドーン!!!!!!!!
怪物エキドナが凍りついた滝の中から飛び出してきたのだった
明らかに怒りに満ちた顔をしている……
そして俺たちに向かって攻撃の一手を繰り出そうとした瞬間、突然空からアイドルの歌らしき曲が鳴り響いた
ラブラブハートマンだった……
どうやら、頭の上に乗っている巨大なコーヒーカップから音が鳴っているようだった
怪物エキドナは視線をラブラブハートマンに向けると、突然ラブラブハートマンに向かって飛び上がり襲いかかった
「ココアサンドラーーーー!!!!!!!!」
俺は叫んだ
ラブラブハートマンは怪物エキドナから逃げようと、上へ上へと飛んでいった
怪物エキドナもラブラブハートマンを追いかけ上へ上へと飛んでいった……
その時、不意にラブラブハートマンが怪物エキドナの方に振り返った
そして叫んだ
「ココアパウダー・ダストエクスプロージョン!!!!!!!!」
すると、ものすごく巨大な茶色の粉の玉が上空に現れたかと思うと怪物エキドナ目掛けて飛んでいき、怪物エキドナに当たる瞬間、巨大な茶色の粉の玉は、まるで粉塵爆発のように破裂した
次の瞬間、凄まじい音と共に大爆発が起こった
地上にいた俺たちも、その爆風により立っていられないほどだった
辺りに立ちこめる煙がなくなった後、空を見上げると、そこにはもう怪物エキドナの姿はなかった……
そして俺とセリーナが振り返ると、その空にはラブラブハートマンがフラフラとゆっくり飛び去っていくのが見えた
セリーナは呟いた
「ありがとう、ラブラブハートマン……」
(セリーナ……何言ってんだよ……あれはココアサンドラだって……)
その一部始終を後ろの森の中で唖然として見ていた天使ミユナシアのさらに後方……
そこには、大天使軍【アークエンジェルス】、西方面、小隊長の天使ヒナスタシアと、天界のエンジェル・スクール特別講師の大天使ラファエルと大天使アリエルがいた
「怪物エキドナを調査しに来たが、とんだハプニングが起きたな……さあ、天界に戻ってミカエルに報告だ……観光地でアリエルとデートも出来たし良かった」
すると大天使ラファエルの嫁、大天使アリエルが言った
「えっ、デート? 調査でしょ? あなた、そんな浮ついた気持ちで仕事してたの?」
「ん? 俺はてっきり、デートのついでの調査かと……」
「はっ? 調査のついでのデートでしょ」
悪魔のバックドロップと呼ばれるアルテミスの滝……今後、その呼び名が変わるかどうかは、今は誰にも分かるはずもないのであった……




