ゲート
俺がカフェ・ド・セリーナの店内に入るとメイド姿の神官ユーカリスが、カウンターにいるアイスの魔女セリーナの横でモジモジしていた……
「どうされたんですか?」
俺が声をかけるとユーカリスは言った
「まだ接客に慣れなくて……」
それを聞いた俺はセリーナに言った
「セリーナ、注文を取りに行くのを代わってさしあげなさい!」
「はっ? ルキ、そんなこと言ってると、ここから出ていってもらうわよ!」
「俺が行きましょう!」
俺はユーカリスに代わり注文を取りに行った
「いらっしゃいませ、ご注文は? あれっ、見たことがある! 失礼ですが有名な方ですよね」
「私か? 私はサンドイッチ伯爵であ~る」
「やっぱり! この注文の紙にサイン貰えますか?」
その瞬間、横目にセリーナの怖い顔が目に入った
「あっ、やっぱり後にします」
「そうなの? 分かったのであ~る」
そう言うとサンドイッチ伯爵はサンドイッチをカバンから取り出し食べ始めた
「あっ、申し訳ありませんが、持ち込み禁止です、没収させてもらいますね」
俺はサンドイッチ伯爵から、サンドイッチを没収し注文を聞いた
「はい、金の魔法のカップケーキと精霊のハーブティーですね」
俺は注文を取り終えると、セリーナの元へ戻った
するとセリーナが言った
「ねぇ、ルキ……さっきから、あなたのことを、まじまじと熱い視線で見ているお客様がいるんだけど……」
「えっ、どこ?」
「あそこ、あの111.6cmの巨大タワーパフェ、セリーナスペシャルを食べていらっしゃる2人連れのお客様のおひとりが……」
たしかに俺を見ている……
それも、見ているだけで思わず心と体が惹き込まれそうになるくらい美しい女性だ
すると店長の巨大な白熊の獣人カゴシャンが言った
「あれは、おそらく魔族の者でしょう」
「なんで、分かるんだ?」
「もう1人の連れの尻から悪魔のシッポが出てますから」
たしかに巨大タワーパフェ、セリーナスペシャルを1人で、がっついている少女には、悪魔のジッポがついていた
「あれっ、あの子……どこかで見たような……」
「はっ? ルキ、まさか、あんな子にまで手を出してるんじゃないでしょうね」
「ちげーよ! ちょっと行ってくる」
「あの、俺に何か?」
その女性のそばに行くと、ものすごい美人で背中がゾクゾクした……
いや、実際にその女性のまわりには、冷気が漂い魅力の渦がパワーとなって、人族ではない何か凄まじいオーラが出ていた……
その女性は突然立ち上がると俺に抱きついてきた
「えっ……」
俺が驚いて戸惑っていると、その女性は俺に抱きついたまま言った
「ルキ! やっぱりルキでしょ! 会いたかった! どれだけ探したことか……さあ、魔界へ帰りましょう!」
「えっ、あの……たしかに俺はルキですけど、あなたは誰ですか?」
「チホリリスよ! どうしちゃったの? なんでしらばっくれるの?」
「いや、俺たぶん、あなたの言ってるルキとは違いますよ」
「何言ってるの? 違う? 本当に私のこと知らないの? 他人の空似? でも似すぎてるわ……でも、たしかに雰囲気は全く違うし……それに魔力も低すぎる……」
俺はこのチホリリスという女性のことを必死に思い出そうとしていたが、どうしても思い出すことが出来なかった……
そのうち俺は息が苦しくなり、急いでその場を離れ、2階の自分の部屋に向かった
俺は自分の部屋の前で深呼吸をして息を整えるとドアを開けた
「モモーナ、ただいま!」
「ルキ、おかえりー! ごはんにする? お風呂にする? それともモモーナにする?」
「じゃあ、モモ……」
突然アーサー王国のアイコディーナ王女が叫んだ
「衛兵! 衛兵! この者を捕らえ、はりつけの刑にしなさい!!!!」
「えっ、王女様、まだ俺のベッドの上にいたんですか? 」
「当然でしょ、この部屋は私の部屋なんだから!」
「いや、なんでいつの間にか、ルキの物は私の物みたいな理論ぶち上げてくれちゃってるんスか!」
「うるさい!!!!」
「ちょっと俺、疲れてるんで、隣、失礼します」
俺は、アイコディーナ王女がいるベッドの上に上がろうとアイコディーナ王女の半径1m以内に近づいた
その途端、けたたましいサイレンと共に、天井からリコッチーが俺の上に降ってきた
「ウゲッ、リコッチー、どうして……」
「かかったな、ルキ! こんなこともあろうかと、リコッチートラップを仕掛けておいたのよ! アイコディーナ様の半径1m以内に入ったら私が現れるというトラップをね!」
俺が寝ている上に馬乗りになり、俺の両手を押さえつけ、俺に顔を近づけながらリコッチーは言った
「可愛い顔、近づけんなよ、リコッチー」
俺はリコッチーを逆に抱きしめ言ってやった
「えっ、う、うるさい、離せ、ルキ!」
ちょっと照れたような素振りを見せリコッチーは俺から離れた
それを見ていたモモーナが、ちょっと怒ったような態度で俺に言った
「ルキ、ちょっと一緒に来て」
「う、うん……」
俺はモモーナに促されるまま一緒にカフェ・ド・セリーナから出ると近くの湖のそばの公園のベンチに一緒に座った
「王女様は、かわいそうなお方なのよ、もっと優しくしてさしあげて! ずっと苦しんでこられて……釣りもしたことがないくらい窮屈な宮中なのよ」
「う、うん、分かった……ああ、そういえばモモーナ……アルテミスに電話で何か言われなかった?」
「別に……たいしたことじゃないわ……」
するとモモーナは急に立ち上がり、湖のそばまで行くと、しゃがみこんだ
モモーナの目から涙が頬を伝い湖に落ちた……
(モモーナ、泣いてる?)
俺はすぐさまモモーナに駆け寄り、慰めようとしたが、その時、俺の服の中から、サンドイッチ伯爵から没収したサンドイッチが湖に落ちた
その次の瞬間……
「パンパカパーン!!!!!!!! アイテム調合コンプリートを確認いたしました ……只今よりアイスの魔女セリーナ様のアイスの国への扉が開かれます」
すると湖面が光だし巨大な湖を取り囲むようにして、草木の精霊たちが、激しいダンスを繰り広げ始めた
光が収まると同時に湖面の水がみるみるバニラアイスに変化していき盛り上がっていった
そして、目の前にアイスの湖面の中に降りていく階段が現れたのだった
俺とモモーナが、びっくりしていると、先程の声の主と思われる女性が近づいてきた
俺はその女性に叫んだ
「お前は誰だ! これは何だ!」
「私はアイスの国のアリス! この湖の番人であり、ゲートの管理者だ! ここは、アイスの国へ通じる巨大なゲートだ! セリーナ様がパスワードのように決めた3つのアイテムが、この湖に同時に存在した時、アイスの国への扉が開かれるのだ!」
「その3つのアイテムとは何だ!」
俺は興奮しながら聞いた
「その3つとは、1つ目はサンドイッチ、2つ目は聖女の涙、3つ目はマンボウだ!」
「マンボウ? マンボウなんていないじゃないか!」
俺がそう言った途端
「ワイのことかいな?」
バニラアイスの湖面を巨大なマンボウが滑ってやってきた
俺は気が動転して混乱した
「お、お前はなんだ! ん? いや、見覚えがあるぞ……」
「ワイか? ワイはカフェ・ド・セリーナの中におる魔獣使いナツーキス様の家来や! 空も飛べるんやで~」
バタン!!!!
突然、カフェ・ド・セリーナの入り口の扉が開いたかと思うと、疾風のごとき勢いでセリーナが飛び出してきて言った
「ま、まさか、そんな……決して簡単には開かないようなアイテム設定にしてたはずなのに……ルキ! ルキでしょ!」
「いや、俺じゃねーし……だいたい、何でこのことを隠してたんだよ!」
「そ、それは……とにかくすぐにアイスの国へのゲートを閉じるわよ!!!!」
「う、うん、分かった」
俺は何が何だか分からず、ただそう答えるしかなかったのであった……




