聖女モモーナ釣る
釣り竿を持った聖女モモーナがアイスの魔女セリーナに言った
「ねぇ、セリーナ、冷蔵庫のアイスを釣りのエサにしてもいい?」
「モモーナ! いくらモモーナでも、それはダメ、今の一言、もしルキが言ってたら秒殺してるところよ」
「じゃあ釣りのエサどうしよっかな……」
するとセリーナは1冊のノートを取り出した
「モモーナ、このノートに描いた絵は具現化して実際に現れるのよ」
「えっ、すごい!」
「じゃあ、試しにバナナの絵を描くから見ててね」
そう言うとセリーナはバナナの絵をノートに描いた
するとあっという間にセリーナの手にバナナが現れたのだった
「はい、モモーナ、バナナをあげる」
「ありがとう、セリーナ」
「但し、上手に描かないと本物とは少し違ったものになるわよ……ほら、このバナナもこんなにカッチカチ」
モモーナはセリーナからカッチカチのバナナを受け取ると、空飛ぶ魔法の馬車の後ろのドアを開け、釣り針にカッチカチのバナナを強引につけて糸を垂らした
セリーナとモモーナのやり取りを見ていた俺はモモーナに聞いた
「カッチカチのバナナで一体何を釣るんだよ」
モモーナが答えようとした瞬間、釣り竿にものすごい引きがきた
「ルキ、釣り上げるのを手伝って!」
「分かった!」
俺はモモーナの背後に回り、モモーナの体を支え一緒に釣り竿を持った
「もう少しよ」
モモーナがそう言った数秒後、獲物が見えた
「えっ!」
俺とモモーナは同時に叫んだ
釣り糸の先には人魚セイレーンの子供がエサのカッチカチのバナナにガッチリ噛みついていたからだ
「おい、モモーナ、これどうすんだよ、釣り上げて食べるのか?」
「そんなわけないでしょ! どうしよう」
俺とモモーナが戸惑っていると突然、空飛ぶ魔法の馬車の下の方から大音量の美しい声が聞こえてきた
俺とモモーナが空飛ぶ魔法の馬車の下の方を見ると、怒りに満ちた顔をした人魚セイレーンの大人たちがロケットのように次から次へと飛んできていた
そしてついに空飛ぶ魔法の馬車は人魚セイレーンたちに取り囲まれてしまったのだった
前方からは、御者台にいるアイスの魔女セリーナの使い魔キツネのコンちゃんの叫び声と共に、ペガサスの嘶きが聞こえてきた
「モモーナさん、早くお子様をお返ししなさい……」
「わ、分かったわ……」
モモーナが人魚セイレーンの子供を両手で掲げると、1匹のセイレーンが近づいてきてセイレーンの子供を受け取った
俺たちは、助かったとホッとしたが、それは見当違いだった
セイレーンの大人たちは、さらに増え空飛ぶ魔法の馬車の周りを取り囲み、ついには一斉に槍を構え、こちらを今にも攻撃してきそうな緊張感が漂っていた
俺は急いで振り返り叫んだ
「アルテミスー!!!!」
グー!
アルテミスはスヤスヤと気持ち良さそうに寝ていた……
セリーナとモモーナは、すぐにセリーナの使い魔コンちゃんがいる御者台に上がっていった
俺は無防備に眠っているアルテミスを見てキュンとなった
(いや、キュンとしている場合じゃなかった……)
俺はアルテミスに声をかけながら体を揺するとアルテミスは起きた
「どうしたの? ルキ」
「アルテミス、窓を見て!」
アルテミスが窓を見ると馬車の両側の窓からたくさんのセイレーンたちが隙間なくビッシリと目をギラつかせながら覗いていた
御者台にいるセリーナはモモーナに言った
「敵が多すぎる……モモーナ、具現化ノートに、たくさんの鳥の兵士の絵を描いて! 味方を増やすのよ!」
「分かったわセリーナ、すぐに描くわ!」
モモーナは、たくさんの鳥の兵士の絵を具現化ノートに描いた
だが具現化した、たくさんの鳥の兵士たちはすぐに海に落ちていった
「モモーナ、具現化ノート見せて! えっ、何、これが鳥? インコ? 何なの? うふふ、うふふ、うふふふふ……いや笑ってる場合じゃなかったわ、絵が下手すぎて具現化出来ないんだわ」
「ちょっと! そんなに下手じゃないでしょ!」
俺は空飛ぶ魔法の馬車の後ろのドアを開け、ロケットのように次から次へと飛んでくる人魚セイレーンたちを盾で食い止めながら、剣で1匹ずつ倒していった
アルテミスも黄金の弓矢で俺の背後からセイレーンたちをどんどん射落としていった
だがまだまだセイレーンたちはいる……
一方、空飛ぶ魔法の馬車の上にいるセリーナは、魔法の杖で巨大なマシンガンを出し、セイレーンたちに向けて撃ち始めた
巨大なマシンガンからは鋭いアイスのコーンが飛び出し、セイレーンたちに突き刺さった
セイレーンたちは次々と海に落ちていった……
その時、突然日が差してきた……
夜明けをむかえたのだった……
セイレーンたちは、太陽光が苦手なのか、どんどん海の底へ帰っていった
「終わった……」
俺たちがホッとした瞬間、アイスの魔女セリーナの使い魔キツネのコンちゃんが叫んだ
「セリーナ様、巨大な陸地が見えます!」
「コンちゃん、あれは南の大陸よ!」
俺たちはついに南の大陸にたどり着いたのであった……




