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月光の中のアルテミス

俺は目覚めた……


何か寒い……


(ん? 俺、もしかして床に寝てる?)


俺はゆっくりと体を起こすと、目に真っ白いものが飛び込んできた


(何だこれは……えっ、脚だ! しかも美味しそう……じゃなくて、一体誰の脚だよ……)


立ち上がると、それは月の女神アルテミスの脚だと分かった


俺は長イスから飛び出しているアルテミスの脚をそっと長イスの上に戻した……






ここは、ペガサス2頭立ての魔法の馬車の中である


馬車は、後ろのステップを上がり、ドアを開けると左右に長イスがあり、1番奥には御者台に上がる階段がある


その階段の左側には冷蔵庫があり、冷蔵庫の横には引き戸棚がある


階段の右側には机とイスがあり、冷蔵庫のそばと机のそばには、大きな窓がついている


そして今、長イスの左側には月の女神アルテミスが、右側には聖女モモーナが寝ていた……俺はなぜかその2人の間の床に寝ていたのだった


俺はもう一度窓から差し込む月の光に照らされるアルテミスを見たが、やはり月の女神は美しかった……


その姿に、時を忘れるくらいに惹きつけられた……何時間でも眺めていられそうだ……


だが俺は深呼吸すると、何とかアルテミスを見つめるのをやめ、引き戸棚の上に置いてあるコーヒーメーカーから、熱々のコーヒーを、2つのコーヒーカップに注いだ……


そして俺は2つのコーヒーカップを持って御者台への階段を上がった


そこで小さなドアを開けて御者台の方を見ると、アイスの魔女セリーナが魔法の馬車の手綱を取っていた


アイスの魔女セリーナの髪や服は風で激しくなびいていた……


俺たちがこの魔法の馬車で大型空浮艦アイコディーナ号から飛び立ってから丸1日経っていたが、まだ南の大陸は見えない……


この時間、辺りは真っ暗だったが、月の光で、なんとか魔法の馬車は海の上を飛んでいた


アイスの魔女セリーナが手綱を取っている御者台の横のランプは、煌々(こうこう)と照り、そのそばにはアイスの魔女セリーナのシンボルが備え付けられていた


俺はセリーナに熱々のコーヒーカップを渡しながら言った


「セリーナ、代わろうか?」


「ルキ……ありがとう、まだ大丈夫」


俺はセリーナの隣に座った……






それからしばらく2人でコーヒーを飲みながら話していると、突然後ろのドアノブが回る音がして、小さなドアからアルテミスが顔を出し言った


「セリーナ、大丈夫? 私が代わるから休んで」


「ええ、ありがとう……じゃあそうする」


セリーナはアルテミスに手綱を渡しながら御者台から馬車の中に入っていき、アルテミスは御者台に座り手綱を取った


アルテミスの隣に座っている俺はアルテミスに言った


「俺が手綱を取るよ」


「ええ……」


アルテミスは俺に手綱を渡すと、俺にもたれかかってきた……


俺が片手でアルテミスの肩を抱くとアルテミスは、俺の肩に頭を乗せた……






突然、魔法の馬車が風にあおられたせいで揺れ、俺とアルテミスはバランスを崩しそうになった


俺はアルテミスの肩をもう一度強く抱くとアルテミスを引き寄せた


アルテミスは俺に体をピッタリと密着させている


俺はドキドキしながら言った……


「アルテミス、大丈夫?」


「うん……」


俺たちは自然と目が合い、視線が絡み合った


澄んだ瞳、美しい表情、全身から溢れ出す品のある色気と魅力的なオーラ……


俺はもうとっくに、月の女神のとりこになっていた……


辺りを照らす月の光が、2人の甘い空間を、とろける甘い蜜のように優しく幸せに包み込んでいったのであった……







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