聖女モモーナと観覧車
アルテミス宮殿を飛び立ってから数日が経っていた……
大型空浮艦アイコディーナ号は、空の魔物にも出会わず、オートパイロット機能により、順調な飛行を続けていた……
「わぁー!!!! ルキ、綺麗な夜景だねー!!!!」
無邪気にはしゃぐ聖女モモーナを見て俺はなぜか嬉しくなった……
突然こんな事態になり、聖女モモーナが、てっきり塞ぎ込んでいるかと思っていたからだ……
俺とモモーナは今、大型空浮艦アイコディーナ号の甲板にある厚さ5mの防弾ガラスで出来たドームの中の観覧車のゴンドラの中に2人並んで座っている
そして今まさに俺たちの乗ったゴンドラがその観覧車の頂点に到達した時モモーナが不意に俺に言った
「ルキ……キスしよっか……」
「えっ……モモーナ……俺……」
「はっ? ルキ、本気にした? 冗談に決まってるでしょ……」
モモーナは、そう言うとイタズラな目をしたまま視線をゴンドラの外に向けた
夜空は今にも星が降ってきそうなほど美しかった……
俺はゴンドラの外を見るモモーナを見ていたが、可愛い横顔の中に、どこか悲しげな表情を見て取って胸が苦しくなり、モモーナから視線を外し眼下を見下ろした
俺は防弾ガラスドームを通して見る大型空浮艦アイコディーナ号のその迫力に圧倒されつつ、左右に3枚ずつついている巨大な赤い翼が、ゆっくりと優雅にしなやかに羽ばたくさまに、感極まっていた
俺は再びモモーナを見た……
初めての出会いが最悪だったモモーナと、こんなに仲良くなるなんて思ってもみなかった……何か気になる存在だ……
ん? 気になる存在?
(えっ、 俺……モモーナのこと……)




