月の女神アルテミス怒る
次の日の朝、月の女神アルテミスは、アイコディーナが止まっているスイートルームに赴いた
「人払いを……」
アルテミスが言うとアイコディーナは侍女たちを部屋から出した
「何でしょう……アルテミス様……」
「アイコディーナ……あなた、モモーナとは前からの知り合いなんですってね……そして、モモーナは南の大陸のコーチス王国のプリンセスだそうね……」
「どうしてそれを……」
「そんなことはどうでもいいわ! しかもモモーナは家出同然でこの国へやってきてる……今回の私への謁見も、本当の目的はあなたがモモーナの様子を伺いにきたってところかしら」
「申し訳ありません、アルテミス様……このまま黙って見逃してもらうことは出来ませんでしょうか?」
「私の耳に入った以上このままにはしておけません……」
「まさか、モモーナをコーチス王国へ送り返すんですか?」
「いえ……皆でコーチス王の元へ赴き、話し合いをするのです……そしてモモーナの希望するこれからを皆で応援するのです……どうです? アイコディーナも手伝ってくれますか?」
「はい、アルテミス様……私が間違っておりました……全面的に協力させていただきます……つきましては、私の大型空浮艦アイコディーナ号をお使いください」
「そうですか……分かりました、私も事を大きくしたくありません……私たちの周りの者たちだけで内密に行くことにしましょう」
「はい、私もアルテミス宮殿に長期滞在すると王都へは連絡を入れておきます」
「そうですか……では私はバカンスにでも行くということにしときましょう」
アルテミスはアイコディーナのスイートルームを出ると今度はモモーナのスイートルームへ赴いた……その際、密かに俺とセリーナも呼ばれた
アルテミスがそこにいる全員に何があったかを説明し、これからどうするかを伝えると、モモーナは嫌な顔一つ見せずアルテミスにたった一言だけ口を開いた
「分かりました……」
その凛とした顔と気丈に振る舞う態度は生まれ持った大国のプリンセスとしてのサガのようにも見えた……
俺とセリーナもアルテミスの側近として同行することになった
アイコディーナ王女は側近の宮廷魔術師リコッチーを呼んだ
「リコッチー! リコッチー!」
アイコディーナ王女が叫ぶとリコッチーは、アルテミス宮殿警備副隊長でライオンの獣人ガオー大佐に首根っこをつかまれ、ぶら下がった状態でやってきた
「ガオー大佐、これは一体どういうこと?」
「はい、王女様、昨日庭の奥でこの不審者に襲われまして、牢屋にぶち込んでおきました」
それを聞いてリコッチーが憤慨しながら叫んだ
「私は不審者じゃなーい! 王女様、助けてー!」
「リコッチー、もういいから、私と一緒に来なさい」
「分っかりましたー!」
リコッチーは、ガオー大佐に首根っこをつかまれ、ぶら下がった状態のまま、敬礼をしたのであった……




