聖女モモーナの秘密
アルテミス宮殿の立食ビュッフェパーティーも終わり、聖女モモーナは宮殿のスイートルームの自分の部屋に戻って休んでいた……
それからどのくらい経ったのだろう……
うとうとし始めたちょうどその時ドアをノックする音が聞こえた
モモーナがドアを開けると1匹の黒猫がいた
モモーナと黒猫は、まるで会話をするように、しばらく見つめあっていたが不意にモモーナはベッドの下から魔女が使うようなほうきを取り出すと跨った
モモーナが黒猫に合図すると黒猫もほうきに飛び乗った
そしてモモーナが何事か唱えだすと、ほうきはたちまち光だし、ふわりと浮かんだ
その時突然バタンと開閉窓が開き、窓から飛び込んでくる夜風でモモーナの髪が靡いた
「さあ、行くわよ!」
モモーナがそう言うと、ほうきはその言葉に応えるように再び光り、ほうきはブルブルと震え出した……そして待機している
「よし、行けーー!!!!」
その声に、ほうきはものすごい反動力で飛び出し、窓がその振動で軋んで揺れた
ほうきに乗った聖女モモーナと黒猫は、一気に高い高い満点の星が輝く夜空まで飛んで行った
夜空は向かい風がビュービューと吹きすさんでいてモモーナの髪や服は激しく靡いた
「さあ、ここまで来たら喋っていいわよ、アイコディーナ」
「ええ、モモーナ、連れ出してくれてありがとう……王女としての毎日は窮屈だし退屈だし……ほんと嫌になる……」
「贅沢な悩みね、アイコディーナ……まあ、いいわ……広い広い草原に行きましょう! そこで背伸びをして走り回れば気持ちがきっと楽になるわ」
「ええ、ありがとう……でもこんな事を言って分かってもらえるのはきっとモモーナだけだわ……だって、あなた本当は、南の大陸、最大最強の大国、コーチス王国のプリンセスなのだから……」
「アイコディーナ……私こそあなたに感謝の言葉をいっぱい言いたい……私が黙ってコーチス王国を飛び出してあなたを頼ってこの国へ来た時、親身になって助けてもらって……その上、アルテミス様まで紹介して頂いて……アルテミスシティで暮らすようになって……今では私の気持ちはとっても楽になったもの……」
「当然でしょ!! 私たち友達なんだから!!」
「アイコディーナ……」
2人は真剣に語り合い、時に笑い合い、そんな会話をしていると、あっという間に広い広い草原に出た
モモーナが、ほうきに下に降りるように指示すると、ほうきは急降下して地面スレスレで止まった
2人は草原で追いかけっこをした後、寝転がって満点の星空を見た
「ねえ、アイコディーナ、釣りはしたことある?」
「えっ、ないけど……」
「いいわ、じゃあ今度2人で抜け出す時は釣りに行きましょう……私が教えてあげる」
「ほんと? 嬉しい!」
アイコディーナはモモーナの言葉を聞いているうちに、自分の頬を自然と涙が伝っていくのを感じたのであった……




