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魔界の死神饅頭






魔界か......本当に俺はここでやっていけるのだろうか......






俺は魔界にあるチホリリス宮殿の一室を借りて住むことになり、チホリリスのママに挨拶したあと、自分の部屋に戻り、これからすぐに天界の最高指導者、熾天使してんしセラフィムの所へ会いに行くことにした......


俺が準備していると、魔界にあるチホリリス王国の女王チホリリスがやって来て言った


「ルキ、今から天界に挨拶に行くの?」


「ああ、そのつもりだ」


「私も一緒に行ってもいいかな?」


「えっ、なんで? まあ、いいけど......悪魔ってバレるなよ」


「あら、そういうルキも、堕天使だてんしとなって、この魔界に居るんだから、もう悪魔なんじゃないの?」


「はっ? そんなにすぐに悪魔にはならないだろ......本当の悪魔になるには、なんかあるんだろ?」


「まあ、そうだけど......私、また天使に変装するからバレないわよ」


「分かったよ......じゃあ、着いてこいよ」


「ええ、楽しみだわ!」


「なんで楽しみなんだよ......」






チホリリス宮殿を出た俺たちは、まず魔界のデパートに行き、手みやげを選ぶことにした


魔界のデパートを歩いていると、悪魔の店員と悪魔の客たちが一斉に俺を見て、ひそひそ話をしている


俺たちは、そんな連中を気にすることなく手みやげを選んだ


俺は反対したのだが、チホリリスに死神饅頭しにがみまんじゅうがいいわよと押し切られ、死神饅頭をたくさん買うことにした






魔界のデパートを出た俺たちは、天界と魔界を繋ぐ唯一の場所に向かった






その通称観覧車と呼ばれる天界と魔界を繋ぐ唯一の場所に着いた俺たちは、そこにいた魔界の兵士に検問を受けた


俺が身分証を渡し目的など簡単な質問に答えると、魔界の兵士はどこかへ連絡をしていた


「乗っていいぞ」


許可が出たらしい......


しばらくすると薄暗い魔界に光が差し込み、魔界の兵士の先に巨大な観覧車が出現した


俺とチホリリスが行こうとすると魔界の兵士にチホリリスが止められた


だが俺が、チホリリスは自分の連れで俺が責任を持つと言うと、魔界の兵士はそれ以上何も言わずに俺たちを通してくれた






観覧車の前に来た俺たちが天界行きと書かれた観覧車のゴンドラに乗り込むと観覧車は、静かにゆっくりと動き出したのだった......






だんだん高さが増してくると魔界の森や、チホリリス宮殿がよく見えた......


「なんか、天界から降りてくる時は見えなかったものが、今はよく見えてる気がする......」


俺が哲学的に重く言うとチホリリスは軽く言った


「そう? さっきとは気持ちが違うんじゃないの? ていうか降りる時と上がる時は見える景色も違うわよね!」


「おい! 俺が感傷に浸ってる時に水を差すんじゃない!」


「いいでしょ! 本当にのことなんだから! そんなことより、ルキ......観覧車が真上に行ったら私とキスしない?」


「はあ? 真上に着いたら観覧車の扉がすぐに開くだろうからそのまま天界へ行くぞ......それに......いや、キスはしないけど、こんな魔界のおどろおどろしい雰囲気ではしたくないな......」


「あっ、そう!!!!!!」


チホリリスは、そっぽを向いた






しばらくすると、俺たちの乗ったゴンドラは真上に着き、すぐに扉が開いたが、なんとそこには大天使ミカエルがいた


「あっ、ミカエル!」


「ルキ、どうしてこんな所にいるのですか?」


「ああ、俺は魔界に住むことにしたから、セラフィム様にご挨拶に行こうかと」


「そうですか、魔界ですか......とにかく決まって良かった......私はこれから、その魔界に用があって行くところです」


その時、チホリリスが大天使ミカエルに言った


「こ、こんにちは、ミカエル様......これ、おひとついかがですか?」


(ゲッ! 大天使ミカエルだわ......悪魔を懲らしめるアークエンジェルス司令官......死神饅頭を食わしてやる!)


「ん? お饅頭ですか! ありがとうございます、お嬢さん......もしかしてルキの新しい彼女ですか?」


「えっ! そう見えます? 嬉しい......残念ながらまだなんです」


「おい! そんなわけないだろ......」


俺がチホリリスに言うと大天使ミカエルは死神饅頭を手に取りながら言った


「そんなわけないことぐらい、分かってますよ......冗談です......ではいただきます」


パクっ......


「な......なんだか生気を奪われますね」


大天使ミカエルは、ふらついた


「大丈夫か? ミカエル」


「何ですか? このお饅頭は?」


「死神饅頭だけど」


「えっ......」


俺の言葉を聞いて驚いた大天使ミカエルはチホリリスに向かって大天使ミカエルにしては珍しく興奮しながら言った


「お嬢さん......私に何か恨みでもあるのですか? 見たところ天使のようですが......どこの所属ですか?」


「あっ、ごめんなさい......私、ルキフェル様の配下だった者で......これは魔界のおみやげで......」


とっさに嘘をついたチホリリスだったが大天使ミカエルは信じたようだった


「そうですか......分かりました、私も言い過ぎました」


「では、もう一ついかがですか?」


「い、いりません!!!! ではルキ、またいつか......」


「ああ......じゃあな、ミカエル」






大天使ミカエルが巨大観覧車の1番真上にあるゴンドラに乗り込むと巨大観覧車は静かにゆっくりと動き出した......






俺たちは熾天使セラフィムの暮らすセラフィム大宮殿に向かった......






大宮殿に着いた俺は天使に変装した魔界の女王チホリリスを大宮殿の控えの間に残し熾天使セラフィムに謁見して、今までのお礼と魔界に住むことを報告し、みなさんでどうぞと死神饅頭を手渡した


すると熾天使セラフィムは言った


「ルキ......我らの神もルキのことを心配されてました......この後、ご挨拶に行きなさい」


「分かりました......ではこれで失礼いたします」






俺と魔界の女王チホリリスはセラフィム大宮殿を出ると天使達が崇拝する神がいる神界へ向かったのだった......








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