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聖戦士クルセイダー・マフィーナ

月の女神アルテミスが言った通り、たしかにレストランの前には軍隊がいた


それも重装歩兵がうじゃうじゃとバラバラに立ち、こちらを見ていた


だが重装歩兵たちの目は、俺たちを見ているわけではなく重装歩兵たちの前に立つ一人の美しい女性戦士に注がれていた


その女性戦士は、美しい鎧を着て馬にまたがっており、刃先を下に向けた長い槍を右手で持ち、背中には盾を背負っていた


「そこをどけ!!!!」


女性戦士が怒鳴ると一人の重装歩兵が言った


「お前が道の端を通ればよかろう!」


だが女性戦士はひるむことなく言った


「ここはみんなの道だ、お前らこそ、今すぐどけ!」


その途端、突然重装歩兵の中の3人が女性戦士に襲いかかったが、女性戦士が馬上から長い槍を重装歩兵たち3人目掛けて、ひと振りすると重装歩兵たち3人は吹っ飛んだ


その光景を見た他の重装歩兵たちは次々に女性戦士をののしりながら女性戦士目掛けて突進してきたが、女性戦士は慌てることなく馬から降りると重装歩兵たちに向かって走り出した


そして先頭の重装歩兵の前でジャンプしたかと思うと重装歩兵たちの頭を踏んで歩き、自ら重装歩兵たちの輪の中へ飛び込んだのだった


その瞬間重装歩兵たちは一斉に女性戦士に襲いかかってきたが、女性戦士はジャンプを繰り返し素早い動きと長い槍の威力で重装歩兵たちを次々に倒していったのだった






その時、重装歩兵たちの間から馬のひづめの音がして1人の騎士がやってきて言った


「あなたたち何をしているの! やめなさい! 勝手な行動はゆるさないわよ!」


それは白馬にまたがったアリーシャ公国の公爵令嬢アリーシャの側近であり近衛兵のサーラであった


サーラは、アリーシャ公国軍本体の参謀で騎士団長でもある


「一体何の騒ぎなの?」


サーラが言うと一人の重装歩兵が答えた


「そ、それがあの女と小競り合いになったのですが、あの女がめちゃくちゃ強くて……」


「えっ? これだけの重装歩兵が倒れているのは、たった1人のあの女性戦士にやられたというの?」


「はい……きっと人族ではないのではないかと……」


「とにかく重装歩兵は今すぐ隊列を組み直したあと、盾を構えて人の壁を作りなさい! そしてアリーシャ様をお守りするのです!」


「はっ!!」






だがその時、美貌と可愛さの両方を兼ね備えた光り輝く女性がレストランから出てきた……アリーシャだった……


「じ、実はアリーシャ様……」


アリーシャはサーラのその言葉に反応せず、そのまま女性戦士のほうに向かって声をかけた


「私はこの軍隊を率いるアリーシャ公国のアリーシャです……あなたの名前と要件を教えて!」


「私はマフィーナ……ただ道を通りたいだけだ」


「その強さで、マフィーナって……あなたもしかしてあの有名な聖戦士マフィーナじゃないの?」


「ああ、たしかに私は聖戦士クルセイダーのマフィーナだ」


するとサーラが横から驚きの声を上げた


「えっ、そうなの? あの天下無双のマフィーナ……どうりで強いはずだわ」






そこへ月の女神アルテミスがアリーシャに近づいてきた


「えっ……アルテミス様、どうしてこちらに……」


「久しぶりね、アリーシャ……とにかくもうこの軍隊を連れてこの場から立ち去りなさい……」


「分かりました、アルテミス様……お見苦しいところをお見せして申し訳ありませんでした……後日改めてご挨拶にお伺いします」


それからすぐにアリーシャ近衛兵旅団はエルフの国の方へ向かっていった


月の女神アルテミスは、あとに残った聖戦士クルセイダーのマフィーナに話しかけた


「あなたがあの有名な聖戦士マフィーナなのね……あなた、ものすごく強いのね」


「それほどでもないわよ……あなたこそあの有名な月の女神アルテミスなのね」


「そうだけど……ねぇ、マフィーナ、しばらくこのルキの護衛をしてみない?」


「はっ? 護衛? 誰よこいつは? 嫌よ……それに西の大陸の女神アルテミスといえば南の大陸ではいい噂は聞かないわ……だからあなたとは、つるみたくない」


「へー、あなた南の大陸出身なの?」


俺は話に割って入った


「ちょっといいですか? マフィーナさん……俺は要人ではないですけど、こいつ呼ばわりはないんじゃないですか?」


ギロッ


マフィーナが俺を殺しかねない目つきで見た


(怖っ! 見た目はそんなに美しいのに怖っ!)


するとアルテミスが言った


「ルキはちょっと黙ってて!」


俺は黒きゴスロリ美少女バトルアンドロイド・カーリンの後ろに隠れた


それを見てマフィーナがアルテミスの質問に答えた


「ええ、私は南の大陸の出身よ……」


「じゃあ女神ヘスティアの信者なのね」


「別にそういうわけじゃないけど……」


「まあいいわ……マフィーナ、レストランでおごるから一緒に夜ご飯食べない?」


「えっ、奢ってくれるの?」


「ええ、マフィーナは何が食べたい?」


「わ、わたしはコロッケが大好物なの!」


「そう……私たちの仲間になってくれるならコロッケ何個でも食べていいわよ」


「えっ、いいの? アルテミスって、何か南の大陸で出回ってる噂と印象が違うわね……ルキ……こいつの護衛か……分かったわ、アルテミス、しばらくこいつの護衛をしてあげるわ」


「本当に? ありがとう!」






聖戦士クルセイダー・マフィーナが仲間になった


でもやっぱり、どこからも音楽は流れてこなかったのであった……


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