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101人のプレイヤーと巨大マンモス

美少女バトルアンドロイドであるサヤ・カーリンは他人の能力をコピーすることが出来るのである。

プレイヤー名:カーリン

種族:人族(自己申告)

カテゴリー:一般参加

予選順位:1位


俺とヘラは正面の平面水晶モニターに映し出されているカーリンの情報を見たあと、ベット・マシーンの2人がけソファーから2人で立ち上りテラスの手すりの所まで歩いていった。


グラウンドが一望出来るその場所から下を見ると、そこには予選を通過したプレイヤー101人と、この位置からでも一際ひときわ大きく見える巨大マンモスがいた


「おお、忘れておったぞよ」


俺の彼女でフィアンセのオリンポスの大女神ヘラは無邪気に笑いながらそう言った。


俺のヘラ……


最強の美貌びぼうの持ち主でありながら最強の可愛さをも兼ね備え、しなやかで官能的な抜群のスタイルを誇っているヘラ……

人をきつける色香と上品な身のこなしながら、知的でりんとした雰囲気をもかもし出している。

というかヘラは実際、聡明そうめいだし優しく思いやりのある女性だ。

俺はそんなヘラに、事あるごとに見とれてしまう。

心が震え、想いが溢れる……

俺はヘラの声も本当に誰よりも好きだ。

その七色の声のような話し方に心が躍る。

俺にとってヘラは本当にもうたまらないほど完璧な女性だ。

どんな一面を見ても魅力的に感じる。

俺はヘラと出会った奇跡に感謝している。

時々胸が締め付けられるほどヘラを誰にも渡したくない感情が湧き上がってくる。

俺はヘラのためなら悪魔にだってなるだろう……


ん? ああ……俺はもうとっくに悪魔だった……



ヘラはマンモスの方へ手のひらを向けた。


パォーーーーン!!!!!!!!


その瞬間、巨大マンモスは触れ込み通り、凶暴な一面を見せつけるかのようにその場で狂ったように暴れだした。


俺は大暴れする巨大マンモスに右往左往する魔術省の連中を見ながらヘラへの高まる気持ちを抑えきれず思わずヘラに耳打ちした。


「ヘラ……今すぐここで抱きしめたい」


俺の言葉に少し驚いた様子のヘラは俺の方を向くと言った。


「今は……無理じゃぞよ……」


「分かってるさ、言ってみただけ……」



突然、魔術省の魔術師たちがあらゆる方向から、わんさか出てきた。

魔術師たちは巨大マンモスを遠巻きに取り囲んだかと思うと一斉に魔術の杖を振り上げた。


そして魔術師たちが一斉に魔術の杖を振り下ろした次の瞬間、巨大マンモスの足元が光り巨大マンモスより少し大きい魔法円が現れた。


突然巨大マンモスの大きな体がグラッとかたむいた。


パォーーン!!!! パォーーン!!!!


巨大マンモスの必死な鳴き声が辺りにとどろく。

同時に巨大マンモスの体がゆっくりと地面の中へと沈んでいった。


どうやら、収拾がつかないこの状況を見て先に巨大マンモスを魔法円同士で繋ぐ魔術、その名を魔法円の門、マジカルサークルゲートで、サリエル山の北側に広がる砂漠の中にある広大なオアシス、通称エデンと呼ばれる人工オアシスへ送るらしい。


そうしている間にも徐々に巨大マンモスは魔法円の中に沈んでいったが、巨大マンモスの鼻がマジカルサークルゲートから完全に見えなくなると同時に魔法円はすぅーっと消えたのだった。



会場に有名な招待プレイヤーが次々に紹介されている。

俺はその度に20万人近くの観客の歓声……いや、地鳴りのような圧力を感じた。


ギネヴィア・アリーナ4階正面に設置されている超巨大水晶玉に招待プレイヤー、タイヤキマンなる者が映し出された。


「怖いぞよ、ルキ」


突然ヘラはそう言ったあと震えながら俺に抱きついてきた。


「ヘラ様、大丈夫ですか?」


俺はそう言いヘラの方へ向き直るとヘラは俺の胸に飛び込んできた。

俺は一瞬、自分の右目の端にうつる右のベット・マシーンからこちらをジッと見ている等身大の餅人形、大賢者ササーヤンの視線が気になったが、構わずギュッとヘラを抱きしめた。


するとその瞬間、俺の右の耳元で声がした。


「ちょっと、何してんの、ルキ!!!!」


「わっ!!!!」


俺は驚いて、すぐに右を向くと、いつの間にかヘラの側近で虹の女神イーリスが立っていた。


「い、いや……ヘラ様が超巨大水晶玉にうつるタイヤキマンを見て怖がってたから……」


俺はわざと大賢者ササーヤンたちにも聞こえるように大きな声でイーリスに答えた。


「えっ? そうなの?」


イーリスはそう言うと俺の前に回り込みヘラに近づくと言った


「ですがヘラ様、以前ヘラ様はタイヤキを頭から豪快に食されてましたよね……アガガガガ」


突然イーリスが口を押さえ、もがき始めた。


「どうした、イーリス?」


俺が聞くとヘラが言った。


「イーリスは、口が閉じぬようになったようじゃな」


俺がヘラを抱きしめたまま何か言おうとすると再び右の耳元で声がした。


俺が再び右を向くとそこには大賢者ササーヤンがいた。


ササーヤンは俺を真っ直ぐ見ると真顔で言った。


「ねぇ、ルキ、このことをアルテミスは知ってるの?」


その大賢者ササーヤンの、いつもとは違う冷たい言い方と、アルテミスという言葉に俺は背筋が凍った。


「な、何のことだよ……」


「さあ……」



その時、突然、超巨大水晶玉から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「しっか! しっか! しっか! しっか! 鹿君、鹿君……出ってきってちょ~!!!!!!!!」


「呼んだか~、カーリン!!!!!!!!」


俺が超巨大水晶玉を見た時、もうすでにカーリンはその巨大なオスの鹿にまたがっていた。


「あっ! カーリンだ! ねぇ、みんな見て!」


俺がそう叫ぶとみんなも超巨大水晶玉を見た。


巨大なオスの鹿にまたがり左手にはやりを持っているカーリンは、目元だけを隠すベネチアンマスクのような奇抜な仮面をつけていた。


だが、着ている服は空色のジャージだった。


ん? 俺は気づいた……気づいてしまった……


「なあ、ササーヤン、たしかカーリンは将軍になったことを喜んでなかったんだよな?」


「そうやん、ちっとも喜んでなかったやん」


大賢者ササーヤンはいつもの喋り方といつもの穏やかな雰囲気に戻っていた。


俺は一瞬ホッとしたが、それを聞いてすぐさま言った。


「でも、カーリンのジャージの左胸のとこ見てみろよ! 白いペンか何かを使って、ひらがなで『しょうぐん』って書いてあるじゃん! あれ絶対喜んでるって! 将軍意識してるって!」


「そ、そうやん、喜んでるやん……」


俺は振り返りベット・マシーンまで急いで行くと立体的な巨大タラコ唇に聞いた。


「ちょっと聞くんだけど、ルール上、最初から鹿に乗ったり、自分の武器を持ったりしてもいいのかな?」


「ああ、あの鹿に乗ったプレイヤーのことですか? あれはどうやって持ち込んだのですか? プレイヤーは私物は持ち込めないはずなんですけど」


「えっ、ああ、たぶん、カーリンは魔獣使いと魔術師のスキル持ってるから、鹿と武器は、今出したんだと思うけど」


「あっ、それならルール上、問題ないと思います……プレイヤーのスキルまで禁止することはないですから」


「ああ、そうなんだ、良かった……じゃあカーリン、ものすごいアドバンテージじゃん!」


俺は再びヘラのところへ戻るとヘラに今ベット・マシーンから聞いたことを話した。


「おお、それは良いぞよ! カーリンには是非とも優勝してもらわぬばな」


その時、場内に大きな声が響き渡った。


「間もなくスタートです! プレイヤーの方はスタート地点へ移動してください……尚、今回優勝したプレイヤーの方には、ギネヴィア王妃様より金貨1万枚が、また王都冒険者ギルドより、【エデンの勇者】の称号が贈られることをここでお約束いたします」


その途端、20万人近くの観客のどよめきが重低音の圧力のように聞こえてきた。


そしてその後すぐ、スタートの合図と共に、101人のプレイヤーたちは一斉に魔法円の門、マジカルサークルゲートの中へと飛び込んでいったのであった……

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