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令嬢ディンドランの正体とガヘリス王太子の秘密

現在、エルフの国のプリンセス・ソラファは、アイスの魔女セリーナが経営するアルテミス国の森の中にあるカフェ【カフェ・ド・セリーナ】の2階の部屋をエルフの国の臨時大使館として使用中である……ちなみに【カフェ・ド・セリーナ】の店長は、巨大な白熊の獣人カゴシャンである

「ディンドラン様! どうしてこちらへ?」


漆黒のフードを取った女性……その女性の顔を見たMSRエージェントでメイドに化けたスパイのサラはすぐにその女性が自分の上司のMSR長官で可愛いうさぎの獣人ミーナ同様、オリンポス派の重鎮パーシヴァル卿の妹、令嬢ディンドランであることが分かり尋ねた


「そのことに答えるより、先に入ってもよろしいかしら?」


「えっ、はい、そうですね……どうぞこちらへ」


サラは令嬢ディンドランと、ディンドランの後ろにひかえているディンドランと同じ漆黒のフード付きのローブを着て顔をフードで覆っている従者2人を部屋の中へ入れるとドアを閉めヘラに言った


「ヘラ様、ディンドラン様が……」


「ほう……ディンドランとな? うむ……なるほどの……あとでこちらからおもむこうと思っておったのじゃが……手間がはぶけたのじゃ」


オリンポスの最高神、大女神ヘラはそう言うとソファーに座ったまま、後ろを振り返ることもなくサラに続けて言った


「ディンドランを、こちらへ連れてくるのじゃ」


「はい、ヘラ様」


サラはそう言うと令嬢ディンドランをヘラの前まで案内しようとしたが令嬢ディンドランはそれをさえぎるように強い口調でサラに言った


「ああ、案内はいいわ、それより、この部屋のことは私の侍女にやらせるから、もうあなたは帰りなさい」


「ですが……」


令嬢ディンドランはサラの両肩の上に乗っている20cmほどの人形を怪訝けげんな顔でまじまじと凝視ぎょうししながら、苛立いらだった声でサラに言った


「何? 逆らうの? あなたの上司は誰?」


「い……いえ、申し訳ありません、承知いたしました、では失礼いたします」


サラはそう言って令嬢ディンドランに会釈えしゃくをし部屋を出るためドアの方へ歩き出した


令嬢ディンドランもサラとすれ違う瞬間には人形から視線を外しヘラの方を向いた


そしてサラがドアを開けた瞬間、その20cmほどの人形……つまりドーナツ人形の大賢者ササーヤンとチュロス人形のアイスの魔女セリーナが、突然サラの肩の上から飛び降りたかと思うと、ものすごい勢いで床を走り令嬢ディンドラン目掛けてジャンプしたのだった


しかしササーヤンとセリーナが次々とディンドランに飛びついたと思った次の瞬間、突然ササーヤンとセリーナの体の至る所から10cmほどの稲穂らしきものが次々と生えてきて、あっという間に隙間のないくらいびっしりと稲穂が生えた稲穂ボールになってしまったのだった


稲穂ボールになったササーヤンとセリーナはジャンプした勢いのままコロコロと俺とヘラが座っているソファーの方に転がってきた


俺はおもむろにソファーから立ち上がると稲穂ボールになったササーヤンとセリーナをつかみ胸に抱きかかえアリーシャファミリーが来た時と同じように紅茶を用意するために歩いているヘラの側近で虹の女神イーリスの元へ歩いていった


それを見て令嬢ディンドランはソファーに座っているヘラの所まで歩いてくると言った


「お久しぶりです、ヘラ様……申し訳ありませんが先に、お人払いを……」


「人払いは無用じゃ! ここには、わらわが最も信頼しておる者しかおらんのでな……まあ、座るがよいぞ、ディンドラン……いや、そなたはデメテルなのであろう? 」


カチャンッ……


ヘラの言葉に驚いた虹の女神イーリスがティーカップをひっくり返した


「申し訳ありません、失礼しました……でも……本当にデメテル様なのですか?」


令嬢ディンドラン……いや、オリンポスの大地と豊穣の女神デメテル……つまり国民にはケレス第2王妃だと思われている大地と豊穣の女神デメテルはヘラの正面に座ると言った


「ハァ……やはりヘラ様は、お気づきだったのですね……」


ため息混じりにヘラにそう言った大地と豊穣の女神デメテルは、虹の女神イーリスの方を見て続けて言った


「久しぶりね、イーリス」


そう言ったあと、デメテルは目を閉じ深い深呼吸をすると、みるみる顔が令嬢ディンドランから本来の姿、大地と豊穣の女神デメテルになったのであった


「あっ、本当にデメテル様だわ! お久しぶりですデメテル様! ということはこの者は、まさか……」


イーリスがデメテルの従者2人に向かってそう言うと従者2人は漆黒のフードを取った


「ああ、イーリス、ご想像の通りゼピュロスだよ、めっちゃ久しぶりだな」


デメテルの従者2人とは、大地と豊穣の女神デメテルの側近で、西風と豊穣の神ゼピュロスと、同じくデメテルの側近で、花と豊穣の女神フローラだったのだ


だが、虹の女神イーリスは、西風と豊穣の神ゼピュロスには返事をせず突然俺の方に走ってきたので俺はイーリスに聞いた


「どうしたんだよ、イーリス、ゼピュロスって誰だよ」


「いいでしょ、誰だって! ルキには関係ないんだから……」


するとヘラが、ヘラに礼を尽くしているゼピュロスとフローラを見ながら言った」


「ゼピュロスはイーリスの元彼じゃ……イーリスを泣かせた悪い男なのじゃ」


「ちょっと、ヘラ様~、そんな風に言わないでくださいよ~、もう、終わった事なんですし~」


「まだそんな事を言っておるのかの……お主、デメテルがかばわねば今頃冥界をさまよっていた所じゃぞ」


「ちょっと、ヘラ様~、怖いこと言っちゃダメッスよ~」


それを見て俺は小声でイーリスに言った


「なんか驚きだな……イーリスって、てっきり太陽神アポロン様みたいな男が好きなんだとばかり思っていたんだけど……」


「うるさいわね! 早く紅茶をデメテル様にお出ししなさいよ! 全く人の気も知らないで……ルキは……」


「分かった、分かった」


俺は稲穂ボールになったササーヤンとセリーナをとりあえず冷蔵庫に入れ、デメテルの前まで歩いていき紅茶をデメテルの前のテーブルに置くと、さっそく、いつもの言葉が聞こえてきた


「ヘラ様、この者はヘラ様の……」


ヘラはうんざりしたかのような態度を見せ、間髪入れずに言った


「眷属じゃ! それも、とーっても、お気に入りなのじゃ! ゼピュロスもフローラもルキと仲良くするのじゃぞ!」


「つまり、ヘラ様のペットってことっすね……よろしくな、ルキちゃん、ワンワン!」


西風と豊穣の神ゼピュロスが、ふざけながら俺にそう言ったあと俺は思った……


(あー、こいつ、うぜー、ぜってー、殺してやる!)


「私はフローラよ、よろしくね、ルキさん」


花と豊穣の女神フローラは俺に手を差し出しながら、そう言った


「よ、よろしくフローラさん」


俺はフローラの手を取りフローラと握手をしながら思った


(えっ、なんていい子なんだ! しかも、ものすごい花の良い香りがする……ん? あっ、ヘラが睨んでる……)


俺は慌ててフローラの手を離すとイーリスの所へ戻った


数秒間、俺を睨んでいたヘラはデメテルに向き直ると言った


「それで、デメテルは、なぜ王都におるのじゃ? 天界派により国外追放だと聞いておったのじゃが……」


「はい、ヘラ様……その件では私の娘ディーナのせいで、ヘラ様はじめ、アルテミスやいろんな方々にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした……私は国外追放当日、オリンポス派のスパイによって、天界派が王都を出た私を暗殺する計画を立てていることを知ったのです……そしてその事を知ったオリンポス派の重鎮パーシヴァル卿が私の身代わりを立て王都の外で逆に刺客を抹殺し、私を自分の妹ディンドランとしてかくまうことになったのです……そしてヘラ様が今王都へいらしているとオリンポス派の者から聞いてどうしてもお会いしたくてやって来たのです」


「そんな訳があったのじゃな……わらわも、そなたに会いたかったぞよ……どうしても確認しておきたいことが出来たのでな……」


「どういうことでしょうか?」


「うむ……実は先ほどテラスから王太子ガヘリスを見たのじゃが……そなたは知っておるのかの? あれはアーサー王の息子ではないのであろう? あれは天使の血が入った天使の子じゃ!!!!」


「ヘラ様……私も女神の端くれ……その事は薄々感じておりました……ですがアーサー王……陛下はギネヴィアに骨抜きにされ……いえ、それより……誰にでも優しく大人しいために何も言えず天界派に担ぎあげられて利用されているガヘリスが不憫ふびんで……ですが私が間違っておりました……もっと早くに手を打っておけばオリンポス派も弱体化せず、ディーナも、こんなことにはならず、アルテミス国とも戦争になることは、なかったはずです……」


「そうじゃな……」






俺はササーヤンとセリーナの事を思い出し冷蔵庫を開けた


「カチンカチンになってるかな……良かった! そうでもない」


「何が良かったって?」


俺は冷蔵庫の奥から聞こえてきた声に驚き冷蔵庫の奥を見ると、そこにはエルフの国のプリンセス・ソラファの顔があり、俺はソラファと目があった


「あっ! やっぱりルキだわ! ちょっとルキ、一体ササーヤンとセリーナに何をしたのよ! 私がカフェ・ド・セリーナに帰ってきたらカゴシャンが大慌てで私のところにやって来て、ササーヤン様とセリーナ様が冷蔵庫の前で倒れてますって、しどろもどろで、いまにも泣き出しそうで、大変な状況だったんだから! でも私がササーヤンの近くに落ちていた紙を見つけて……そこに、私とセリーナは大丈夫やん、冷蔵庫から王都へ行ってくるやんって書いてあったから、とりあえずカゴシャンも落ち着いたけど……やっぱりルキのせいだったのね!」


ものすごい形相である


俺は冷蔵庫を閉めた


冷蔵庫の中から声が聞こえる


「コラー! ルキー! 開けなさいよ! 開けないと、ただじゃおかないわよー!」


俺は冷蔵庫を開けた


「ルキ! 今度閉めたら……分かってるわよね! とにかく、 ササーヤンとセリーナが王都にいるってどういうことなの? 2人とも無事なの?」


「ああ、無事だよ、ほらここにいるし」


俺は稲穂ボール二つを見せ言った


「2人とも元気そうだろ? 心配すんなよ、ソラファ」


「はあ? ちょっと何言ってんのか分かんないわよ!」


「まあ、ちょっと待ってろよ」


俺はヘラのところに稲穂ボール二つを持っていき、ヘラに耳打ちした


「なんじゃと? ソラファがそんなに怒っておるのかの……それに、それは何じゃ? 何、デメテルがやったのかの……うむ、どうするかの……おお、良い考えが浮かんだぞよ……ルキ、ソラファに冷蔵庫の前で、目を閉じて横になれと伝えるのじゃ」


「えっ、どうされるのですか?」


「まあ、よいから伝えてまいるのじゃ」


俺は再び冷蔵庫の前まで行きソラファにヘラの言葉を伝えた


「えっ、ヘラ様が……そう、ヘラ様のお力なのね……それなら信じるわ……じゃあ目を閉じて横になってるわね」


「なんだよ、ヘラ様の言うことには疑いもなく素直に従うんだな!」


俺はブツブツ言いながらヘラの所に行き再びヘラに耳打ちした


「うむ……ではルキ、それをテーブルの上に置くのじゃ」


俺は稲穂ボール二つをテーブルの上に置いた


「さて、デメテル……これはわらわの大事なものなのじゃ、どうしてくれるのじゃ?」


「えっ、そうでしたか! 知らぬこととはいえ、それは申し訳ありませんでした……ですが元には戻らないかと……」


「分かっておる……そこでじゃ、そのつぐないにそなたの力を貸してはもらえぬかの?」


「それはいいですが……私は何をすれば?」


「うむ……すぐに、人族3人分のもち米を出して欲しいのじゃ」


「はい、分かりました」


大地と豊穣の女神デメテルはそう言うと、あっという間にテーブルの上に大量のもち米が現れたのだった


「フローラにも力を貸してもらうぞよ……フローラ、色んな色の花びらを出してたもれ」


「はい、ヘラ様」


そう言った途端、花と豊穣の女神フローラの手のひらから次々と色んな色の花びらが飛び出しテーブルの上に舞った


「さあ、餅つきじゃ!!!!」


ヘラはそう言いながら手を上げると、ヘラの手には一瞬で王笏おうしゃくが握られていた


ヘラが王笏を降るとテラスの前に巨大なきねうすが現れ、テーブルの上にあったもち米と色んな色の花びらが、その巨大な杵と臼目掛けて飛んでいき次々と巨大な臼の中に入っていった


全てのもち米と色んな色の花びらが臼の中に入った次の瞬間、王笏はヘラの手から離れ巨大な杵と臼の周りをぐるぐると回り始めた


すると徐々に巨大な杵と臼は光り始めゆっくりと巨大な杵は巨大な臼の中にある色んな色の花びら入りのもち米をつき始めた


最初はゆっくりついていた巨大な杵だったが、すぐに高速でつき始めた


ドンドンドンドンドンドン……


ものすごい振動と共についていた巨大な杵がピタッと動きをとめた


その瞬間、巨大な臼の中から、巨大な鮮やかな色の餅が浮かび上がってきた


そしてその巨大な鮮やかな色の餅は突然三つに分かれ、横一列に並んだかと思うと、それぞれが、だんだんと、まるで人族のような形に変化していったのだった


それと同時にテーブルの上にある稲穂ボール二つが光り始め冷蔵庫もガタガタと揺れ始めた


バンッ……


突然冷蔵庫が開いたかと思うと、中から光が飛び出してきて巨大な鮮やかな色の三つの餅……いや、三つの鮮やかな色の餅人形、目掛けて飛び出していった


それと同時に稲穂ボール二つからも光が飛び出し巨大な三つの鮮やかな色の餅人形、目掛けて飛び出していった


そして三つの光は三つの鮮やかな色の餅人形の中へとそれぞれ消えていったのだった


すると王笏は止まりヘラの元に戻ってきた


王笏を手に持ったヘラは言った


「さあ、3人とも、こちらへ来るのじゃ」


その瞬間三つの鮮やかな色の餅人形は強烈な光を放った







光が収まり三つの鮮やかな色の餅人形が見えた時、そこには、ササーヤン、セリーナ、ソラファそのものが立っていたのであった……

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