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ティンとロクアケス

宮廷魔術師リコッチーは気づくと、王都を流れる川の河原かわらのそばに立っていた


「あれ? 私、今ルキたちがいるVIPルームにいたわよね……ここ、どこよ~!!!! あっ、でも、ここ見覚えがあるわ……たしか魔術省の近くの川だと思うけど……」


リコッチーがそう言いながら川の方へ歩いて行こうとした時、後ろから叫び声がした


「ややっ! あそこに見えるのは、私が探し求めているリコッチー様じゃないか! やっと見つけたぞ! お~い、リコッチー様~!!!!」


「ピー、ガガガ……」


リコッチーが振り向くとその叫び声の主は土手を下りて来ている途中だった


「えっ、なによ、あれは!!!!」


リコッチーは思わず叫んだ……なぜなら土手を下りて来ているのはどう見てもロボットだったからだ


そして、土手を下りたロボットは、まっすぐに河原かわらのそばにいるリコッチーに近づいてきたのだ


リコッチーは魔術師の杖を取り出すといつでも魔術で攻撃出来るように杖を振り上げ構えた


だが、近づいてくるにつれ、そのロボットは1mほどの身長しかなく、見た目も、どこか可愛い感じがした


「あのロボット、丸い両目、三角の鼻、四角い口……どこか愛嬌があるわね……」


そしてロボットがリコッチーの目の前まで来たところで、リコッチーは魔術師の杖を収めた


「ビー、ガガガ……」


ロボットがリコッチーに対して何か言っている感じがしたのでリコッチーはロボットに話しかけた


「あれ、あなた、さっき流暢りゅうちょうに私に叫んでたと思ったけど」


その次の瞬間、突然ロボットの肩の上に、20cmほどの案山子かかしが現れリコッチーに話しかけてきた


「それは、私が言ったのですよ~!!!!」


「わっ! びっくりした! あなた誰よ!!!!」


「私? 私は、呪いの案山子かかし人形のロクアケスで~す」


「さらっと呪いって言ったわね、怖いわよ……私を呪いに来たの?」


「違いますよ、リコッチー様、私は大魔術師マーリン様が作られた魔術人形で、このロボットもマーリン様が作られた、ブリキのカラクリ魔術人形のティンですよ」


「パパの……それで私を探してたって言うのは?」


「はい、マーリン様に頼まれまして……ちょっと待っててくださいね、今準備しますから」


そう言うと呪いの案山子かかし人形のロクアケスはブリキのカラクリ魔術人形ティンのお腹部分を開けると、そこには水晶玉が備え付けられていた


「用意出来ました! ではどうぞご覧ください!」


リコッチーがその水晶玉をジーッと見ているとぼんやり人影が出てきた


「あっ、パパだわ!!!!」


すると水晶玉の中に浮かび上がってきた大魔術師マーリンは言った


「あれっ、 もう本番? おい、いいのかティン、しゃべるぞ! 何だって? ロクアケス分かった、じゃあいくぞ…………リコッチー、このティンのお腹にある水晶玉を見ているということは、私はおそらくヴィヴィアンに捕まったのだろう……」


「えっ、何? 何の冗談? ドッキリなの? ねぇ、これドッキリでしょ!!!!!!!!」


「リコッチー様、静かにしてください! これはマーリン様が考案した水晶玉映像記憶魔術ですよ! もう! 映像が先に進んだじゃないですか~! ちょっと巻き戻しますね……はい、では、どうぞ続きからご覧ください」


「…………ヴィヴィアンに捕まったのだろう……私はお前をシコークスシティで買った城に隠したあと、ディーナ王女様の冤罪えんざいを晴らす為、一人で調査していたのだ……やはり、天界の連中と私の弟子ヴィヴィアンの仕組んだ罠であったことが分かり、ようやく冤罪の証拠も手に入れることが出来た……これから、私はヴィヴィアンのところにおもむき、自首をさせようと思う……だが、反対に捕まるかもしれない……リコッチーよ、もしこれを見ているなら、ティンの体の中にあるディーナ王女様の冤罪の証拠を持って陛下の元へ行き…………いや、ギネヴィア第1王妃に骨抜きにされた今の陛下にその力はないか……リコッチー、何とかしてその証拠を持って、必ずやクレタ島の迷路の中の監獄におられるディーナ王女様をお救いするのだ……では、ヴィヴィアンのところへ行ってくる……リコッチー、あとは頼んだぞ………………ああ、なお、この水晶玉は自動的に爆発する……5、4、3、2……なあんて、リコッチーよ、びっくりしたか? ティンを爆発させるわけはなかろう……私も、たまには冗談のひとつも言うのだ……とにかく、我が愛する娘リコッチーよ、成功を祈る……」


大魔術師マーリンがしゃべり終えた瞬間、水晶玉は普通の水晶玉に戻った


「パパ……パパー!!!! きっと……きっとパパもディーナ王女様も私が助けてみせるわ!!!! 待っててね……パパ……」






その頃、ギネヴィアアリーナの4階にあるエレベーターに1番近いVIPルームでは大天使ミカエルと、天使ヒナスタシアがメイドに化けた天使を待っていた……


突然部屋のドアがノックされ天使ヒナスタシアが出るとそこには、魔術大臣で魔術師のヴィヴィアンとメイドに化けた天使が立っていた


「さあ、入ってヴィヴィアン、ミカエル様がお待ちかねよ」


「あなたは?」


「私は天使ヒナスタシアよ」


そう言って魔術師ヴィヴィアンを部屋に招き入れると天使ヒナスタシアはドアのところにいるメイドに化けた天使に言った


「あなたは、ヘラのところへ戻って引き続き任務を遂行しなさい」


「はい、分かりました」


そう言ってメイドに化けた天使が立ち去り、天使ヒナスタシアがドアを閉めた途端、天使ヒナスタシアの後ろ……テラスの向こう側から大歓声が聞こえたのだった……





「それで……ヴィヴィアン……ひとつあなたに聞きたいのですが、この大会の優勝杯……あれはどこで手に入れたのですか?」


「はい、ミカエル様、実は元魔術大臣のマーリンという者が……」


「ああ、そのことならサリエルから聞いています……ですが捕らえて何の問題もないのですよね?」


「はい、そのことは問題ないのですが……その後、証拠を探そうと魔術省のマーリンの部屋をくまなく探したところ証拠は出てこなかったのですが、そこにあったショーケースの中に、この大会の優勝杯にふさわしい大きく立派なものを発見しまして……それを優勝杯となるよう台座に取り付けつけたのです」


「なるほど……ところで、その大きく立派なものには文字などは刻まれてはなかったのですか?」


「はい、何も……」


するとそこで天使ヒナスタシアが話に割って入ってきて大天使ミカエルに言った


「ミカエル様、人族には天使文字は見えませんので……」


「ああ、そうでした……」


それを聞いていた魔術師ヴィヴィアンが恐る恐る大天使ミカエルに聞いた


「あの……文字が何か?」


「いえ、良いのです、ヴィヴィアン、分かりました……では、今からその優勝杯を、ここに持ってきてもらえますか?」


「えっ、はい……分かりました」






「あっ、ヴィヴィアン様、どうぞお入りください」


ギネヴィア第1王妃とガヘリス王太子がいるVIPルームの前に魔術師ヴィヴィアンが行くと見張りの兵士はすぐにギネヴィア第1王妃に伝え魔術師ヴィヴィアンは部屋に入った


魔術師ヴィヴィアンがギネヴィア第1王妃に優勝杯をエレベーターに1番近いVIPルームに運んでもいいかと聞くとギネヴィア第1王妃は言った


「なぜ、優勝杯をその部屋に?」


魔術師ヴィヴィアンはギネヴィア第1王妃に事情を話すとギネヴィア第1王妃は言った


「えっ、ミカエル様が? 分かりました……持っていきなさい」






魔術師ヴィヴィアンは優勝杯をエレベーターに1番近いVIPルームにいる大天使ミカエルの前まで運んだ


大天使ミカエルは優勝杯を見て考えていた


(なんだ? これは一体どういうことなんだよ……このサルピンクスは全くのニセモノじゃないか!!!! ということは、この短い間に、すでに本物と、すり替えられていたのか……ああ、こんなことを出来るのは、この場にはヘラしかいないか……だが、さすがにこの俺でも、あのオリンポス最強の……いや、もしかしたらこの世界最強のあの大女神ヘラを相手に何の策もなくいどむわけにはいかないよな……まあ、仕方ないか……上には報告だけすればいいさ……そもそも、我らの神の腰巾着こしぎんちゃくサルトの尻拭しりぬぐいなど、この俺の仕事ではないからな)


大天使ミカエルは魔術師ヴィヴィアンに向き直ると言った


「ヴィヴィアン、ありがとうございました、もう、あなたへの要件は済みました……この優勝杯はギネヴィアに返しておいてください」


「はい、分かりました」


魔術師ヴィヴィアンがそう言って優勝杯を運びながら部屋を出ていくと大天使ミカエルは天使ヒナスタシアに言った


「ヒナスタシア、よく知らせてくれました……では私は天界に戻ります……あなたも休暇を楽しんでください」


「えっ、あの……もうサルピンクスはよろしいのですか?」


「ええ、もうよいのです……あの優勝杯のサルピンクスには天使文字は刻んでありませんでしたから……」


「そ、そんなはずは……私、たしかに見ました! あの優勝杯のサルピンクスには天使文字で書かれた我らの神の言葉と5という数字が……」


天使ヒナスタシアはそこで喋るのをやめた……なぜなら、もうそこに大天使ミカエルの姿はなかったからである……

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