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気づいた悪魔

悪魔を召喚し使役することが出来るソロモンの黄金の指輪の所有者:大天使ミカエル→アルテミス神殿の神官ユーカリス→アリーシャ公国の公爵令嬢アリーシャ→エルフの国のプリンセス・ソラファ

VIPルームがある階を厳重に兵士たちに警護されながら歩いていたアーサー王国の第1王妃ギネヴィアと、その息子で王太子のガヘリスと、台車に乗せられたこの大会の優勝杯は、俺たちがいるVIPルームを通り過ぎ隣のVIPルームの前で止まるとギネヴィア第1王妃は言った


「扉を開けよ!!!!」


するとVIPルームの中で唯一、両開き扉であるその部屋の扉に2人の兵士が駆け寄り、両開き扉をゆっくりと開けると、ギネヴィア第1王妃はガヘリス王太子の手を引き満足そうに部屋の中へと入っていったのだった


そしてギネヴィア第1王妃とガヘリス王太子に続いて優勝杯の台車も運び込まれた後、部屋の扉の前に見張りとして2人の兵士を残し他の兵士は廊下を戻っていった


その様子を、俺たちがいるVIPルームの隣のVIPルームに入っていったギネヴィア第1王妃のさらに隣のVIPルームから、ほんの数秒前に出てきた一人の妖艶ようえんな女性が見ていた


その妖艶な女性とは、誰あろう魔界のクィーン、チホリリスであった


チホリリスは思った


(あら? あの優勝杯に天使文字で刻まれた言葉と5という数字……もしかしてサルピンクスかしら……なんでこんな所に……5番のサルピンクスと言えばオリンポス山を攻撃するためのラッパね……ああ、残念だわ……もしあれが魔界を攻撃する4番のサルピンクスなら是が非でもここで奪ってやるんだけど……でも、もしチャンスがあるなら、あの5番のサルピンクスも欲しいわね……)


その時、チホリリスの視線の先に数人の姿が目に飛び込んできた


それは、アリーシャ公国の公爵令嬢アリーシャと、アリーシャの両親のランスロット卿とエレイン公爵夫人、そしてエレイン公爵夫人が両手で抱き抱えているのは、まだ赤ん坊のアリーシャの弟ガラハッドであった……その4人から一歩後ろを歩いているのは、アリーシャ公国の騎士団長でアリーシャの側近サーラと、アリーシャ公国のアリーシャ城で執事をしているバトラーであった


ちなみにエレイン公爵夫人は、エルフ族でエルフの国の女王エウリュディケの妹なので、ハーフエルフの公爵令嬢アリーシャとエルフの国のプリンセス・ソラファは従姉妹同士なのである


6人は俺たちがいるVIPルームの前まで歩いてくると止まったのだが、何やら揉めているようだった


その時アリーシャ城の執事バトラーがチホリリスの方を向いた


チホリリスが視線を合わせるとバトラーは、ひどく驚いたような素振りを見せた後、サーラに耳打ちし、チホリリスの方に近づいてきた






アリーシャ城の執事バトラーはチホリリスの前まで来ると言った


「魔界のクィーン、チホリリス様でいらっしゃいますよね? ご無沙汰しております」


「えっ、どなた? もしかして魔界の方なの?」


「はい、チホリリス様」


そう言うとバトラーは目を閉じ体に力を込めながら何事か唱え始めた


すると顔がみるみる本来の姿に戻ったのだった


「あっ、あなた、マルコシアスね…… どうしてあなたがここに?」


バトラーは魔界の狼の悪魔マルコシアス侯爵だったのだ


マルコシアスは顔を元のバトラーの顔に戻すと言った


「はい、私は以前アリーシャ様にソロモンの指輪で召喚されたのですが、願いを叶えたあとも、アリーシャ様の、そのお人柄に感銘を受けアリーシャ様のおそばにお仕えしようと心に決めたあと、獣人の姿に身を変えアリーシャ城の執事となったのです」


「そうだったのね……あっ、ひとつ聞いてもいい?」


「何でしょう、チホリリス様」


「こちらの世界でルキ……いえ、ルキフェルを見てない?」


「魔界の皇帝、ルキフェル様ですか? いまだ行方しれずとか……いえ、見ておりません……ですがルキフェル様ほどの強大な魔力の持ち主であれは、魔力を感知すればすぐ見つかるのではありませんか?」


「それは分かってるんだけど……そんな強大な魔力の持ち主はどこにもいなくて……ただ、ルキって名前で、顔もルキフェルに似てる者がいたんだけど……その者は、とにかく魔力が微弱で、おそらくルキフェルとは別人だと思うわ」


「そうですか……分かりました、もしルキフェル様を見つけた場合は真っ先にチホリリス様にお知らせいたします」


「ありがとう、マルコシアス…… あっ、頼まれついでにもう一つお願いしてもいいかしら?」


「何でしょう、チホリリス様」


「さっき、天使のラッパ、サルピンクスを見つけたんだけど、それがこの大会の優勝杯なの……あなた、人族に変身して決勝で優勝してくれない? あなたの名前……そうね、マルコって名前で決勝の名簿に私が魔法で書き加えとくから」


「はあ……まあ、他でもないチホリリス様の頼みとあらば致し方ありません……分かりました、ですがアリーシャ様にはなんと言えば?」


「それは問題ないわ、ちょっと一緒に部屋に入ってくれる?


「分かりました」






チホリリスのVIPルームのドアを、チホリリスは開けた


「さあ、入って」


チホリリスにそう言われマルコシアスは部屋に入ると明るいはずの部屋はなぜか仄暗ほのぐらかった


カチャッ……


後ろで音がしたのでマルコシアスが振り返ると、ちょうどチホリリスが後ろ手でドアを施錠せじょうしているところであった


「チホリリス様……」


その時、突然一瞬、まぶしい稲光いなびかりが部屋の中を照らしたかと思うと激しい雷鳴らいめいの音がした


そして、それはそこに現れたのだった


古い扉だった……


マルコシアスは思った


(これは、悪魔の扉では……)


チホリリスはそれを見透かしたかのようにマルコシアスに言った


「そうよ、マルコシアス……これは悪魔の扉よ」


マルコシアスはチホリリスから視線を外し悪魔の扉に近づくと、悪魔の扉の表面に書かれた古代文字が光っていた


「開けてみて」


チホリリスにそう言われマルコシアスは悪魔の扉の取っ手に手をかけた


「あっ、待って、忘れてたわ」


チホリリスはそう言いながら小さな不気味な人形を取り出し悪魔の扉に近づいた


「さあ、開けて」


チホリリスの合図と共にマルコシアスは悪魔の扉を開けた






開いた扉の枠の中は全てが鏡だった


チホリリスは小さな不気味な人形をその鏡の中に向かって投げ入れた


ポチャン……


鏡はまるで水面のようにその小さな不気味な人形を飲み込んだ


チホリリスは一歩下がると、鏡にはマルコシアスだけがうつっていた


「あっ!!!!!!!!」


マルコシアスは驚いた


なぜなら突然鏡の中からマルコシアスの方に向かって手が伸びてきたからだ


マルコシアスが驚いていると、手から腕が、次は足から腰が、そして最後に胸から頭が鏡の中から出てきたのであった


それはマルコシアスそのものであった


いや、違った……マルコシアス本人とは何もかもが逆であったのだ


顔もマルコシアスの顔とは左右が逆になっており、当然着ている執事服も執事服に付いているアリーシャ公国の紋章も逆であった


驚くマルコシアスにチホリリスは言った


「どう? 驚いた? うふふ、聞くまでもないわね……この者はね、私が鏡の中に投げ入れた悪魔のコピー人形があなたに変身したものなの……但しコピーと言ってもコピーされるのは、鏡に映った者とその者が持っている知識だけで、能力はコピーされないの……元々人形だから感情もないし……でも、とりあえずあなたの身代わりにはなるでしょ……決勝が行なわれるあいだだけだし」


「えっ……はあ……そうですね……」


「ああ、あと、服は交換してね、その服だとさすがにバレるから」


「あっ、はい、かしこまりました……」






その後、上着を交換した魔界の狼の悪魔マルコシアス侯爵は、その場に残り、悪魔のコピー人形が化けた狼の獣人バトラーは、急いで部屋を出たあとアリーシャの元へ向かったのであった……

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