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悪魔と彼女と料理とパーティーと

雪はしんしんと降っていた……


ココアサンドラ号に戻った俺たちは食材をマリアに渡しリビングのソファーに座っていた


寒くはなかった……


暖炉の炎が勢いよく燃え盛っているからだ


だが決してそれだけではなく別な理由がそこにはあった


俺の隣には、俺の彼女のオリンポス最高神ヘラ様が座っていて俺の肩に頭をつけてウトウトしていたからだ


心も体もあったかい……


俺もヘラ様と同じようにウトウトし夢の世界へいざなわれそうになっていた


ヘラ様の側近で虹の女神イーリスは自分の部屋にいるようだった


その時、突然マリアの声がした


「外は吹雪になりそうだわ……」


リビングにやって来て暖炉に薪をくべながらそう言ったマリアの言葉に俺はビクッとして顔を上げマリアを見た


「なんだ、ルキ……起きてたの?」


「ああ、それよりそんなに雪が降ってるの?」


「ええ、見てみる? ちょっと待ってて」


マリアはそう言うとリビング左側の端にある操作パネルを操作し始めた


ガチャ……ウィーン……


少し大きめな音と共に左側の壁が、上から下に向かって動き出していき、上の方から徐々に外の景色が見えてきたのだった


「この部屋の外側の艦体は二重になっていて外側の艦体だけをスライドさせて内側の全面防弾ガラス張りの窓を出すことが出来るのよ」


マリアがそう言い終わる頃にはその防弾ガラスの窓はほぼ全貌を現した


ものすごく巨大な窓だ


その窓の外は雪が後から後から降ってきており防弾ガラスにあたっては消えた


遥か天から降ってくるその雪の姿は幻想的でもあり、また芸術的でもあった


逢魔が時の時刻なのか、こうしている間にもだんだん、ほの暗くなっていく


俺は恐怖というか、魔界の景色が少し……少しだけだがフラッシュバックのように俺の脳裏に現れたのだった……





「ルキ……夜ご飯作るの手伝ってくれる?」


「えっ、いいけど……マリアは先にキッチンに行っててよ」


「ええ、分かったわ」


マリアがリビングを出ていくと俺はヘラ様をソファーに寝かせ自分の部屋から毛布を取ってくるとヘラ様に毛布をかけた


そして床に膝まづいてしばらくヘラ様のその美しく可愛い寝顔を見て幸せを噛み締めたあとヘラ様のほっぺに軽くキスをしてリビングに向かったのだった






「ルキ、遅かったわね……まずはケーキを作るわよ」


マリアはそう言うと俺を冷蔵庫に連れていき、冷蔵庫の中からケーキの粉、卵、砂糖、ミルク、ハチミツ、生クリームを大量に取り出したあと巨大野いちご4個を取り出し俺と一緒にオートクッキングマシンの所へ運んだ


「じゃあ、ルキはオオトロンをさばいてくれる?」


「分かった」


俺がオオトロンをさばく準備をしているとマリアはオートクッキングマシンの投入口にせっせと冷蔵庫から持ってきた物全てを入れた


さらに最後に巨大野いちご4個を投入口にそのまま入れたのだった


「おい、マリア! 全部入れたのかよ! 大丈夫か?」


「大丈夫よ、このオートクッキングマシンは高性能なんだから」


「いや、そういう意味で言ったんじゃないんだけどな……まっ、いいか」


俺はオオトロンをまな板の上にのせた


マリアはタッチパネルを操作している


おそらく3Dプリンターが内蔵されているのでケーキを好きな形に仕上げる為にケーキの形を細かく入力しているのだ


俺は嫌な予感がしながらもまな板の上のオオトロンをさばくことにした


まず頭と尻尾を切り落とし胴体の下側部分のシャリと呼ばれる部分を切り離し小さく1口大の大きさに切り分けた


次に残ったオオトロンの脂ののったネタと呼ばれる部分も小さく1口大の大きさに切り分け、1口大の大きさに切り分けたシャリの上に乗せていった


「マリア、出来たぞ」


「えっ、わぁー、綺麗に出来たわね、じゃあ皿に盛り付けて」


俺が大皿に盛り付けるとマリアはさらに言った


「じゃあ、ルキ、今度はシャキシャキタケをオシャレに切ってくれる?」


「オシャレに切るって何だよ」


俺は自分なりにシャキシャキタケをオシャレに切っていった


その横でマリアはホネツキチキンドリをフライパンで焼き始めた


良い匂いがする


塩コショウした後、タレを絡めると、さらに良い匂いが至る所に立ち込めた


マリアはそのまま蒸し焼き状態にすると俺に言った


「あっ、ケーキが出来たみたいよ」


俺とマリアはオートクッキングマシンの前に行きマリアはタッチパネルを押した


するとオートクッキングマシンの出口側の上部が左右に開きケーキがせりあがってきた


「えっ……」


俺は驚愕した……


そのケーキは幅1m、高さ40cmくらいのアルテミス神殿そのものだったからだ


土台には巨大野いちごが4つ置かれていた


俺は混乱した……


「いや、いちごは絶対、上だろ!」


「ルキ……当たり前は当たり前じゃないのよ……それより神殿の周りをよーく見て!」


俺はアルテミス神殿ケーキに近づいた


「えっ! 何これ! リアル……」


見るとアルテミス神殿に対してリアルな大きさ、リアルな姿形のアルテミス国の仲間達がそこにいたのである


「どう、ルキ、驚いた? それはメレンゲドールよ! しかもルキの仲間達をリアルに再現してあるわ! 題してアルテミス神殿と愉快な仲間たちよ!」


「いや、何だよ、そのドヤ顔は! それにどうしてココアサンドラだけ水着姿なんだよ……美味しそう……いや寒そうだろ」


俺はそう言うと水着姿のココアサンドラのメレンゲドールを頭から押してココアサンドラの体をケーキの中に沈めた


ココアサンドラはケーキから頭だけ出ている格好になった


「えっ、ルキ、酷い……ルキが喜ぶと思ったのに……私……泣いちゃう」


「あっ、ごめんマリア、そんなつもりじゃなかったんだ……このケーキ、ありがとう! とっても嬉しいよ」


「そう? だと思った! 作って良かったわ」


マリアはケロリとして笑顔でそう言った


「泣いてないんかーい!!!!」






俺とマリアはケーキ以外の出来上がった料理とぶどう酒をリビングのテーブルに運んだ


このぶどう酒にはアーサー王国、ぶどう村産と書いてある


ぶどう村はココアサンドラ号なら、この場所から北東へ2時間程行った辺りだ


マリアはイーリスを呼びに行き俺はヘラ様のそばに膝まづいた


「ヘラ様、ヘラ様、起きてください」


ヘラ様は目覚めた


「ルキ……」


ヘラ様は俺を見ると抱きついてきた


「悪夢を見たのじゃ……」


俺はヘラ様をギュッと抱きしめた


「ヘラ様、大丈夫です……俺が守りますから」


「ルキ……」


ヘラ様は俺にキスをすると言った


「それにしてもすごいご馳走じゃな」


その時、イーリスもマリアと共にやって来た


「ヘラ様! 素敵な外の景色、素敵な暖かい部屋、素敵な料理、最高ですね」


「そうじゃな、ではパーティーじゃ!」


みんなで祈りを捧げたあと、俺とマリアはキッチンからケーキを2人で運んできた


「な、なんじゃそれは? アルテミス神殿ではないのかの!」


びっくりするヘラ様とイーリスに俺はメレンゲドールの説明をした


「これはまた精巧に出来たものじゃ……かじるのかの?」


「たしかにリアル過ぎて食べにくいですね……では俺はこのメレンゲドールをかじろうかな」


「ではわらわはこのメレンゲドールをかじることにするぞよ」


俺とヘラ様はその後も長い間、メレンゲドール達で遊んだ


【アルテミス神殿ケーキ】


【ホネツキチキンドリのシャキシャキタケ添え】


【1口大の大きさのオオトロン】


も、ぶどう酒と共に次々になくなっていった


こうして楽しいパーティーが続き夜も更けた頃、俺は何気なく全面防弾ガラス張りの窓の外を見ると、一瞬、トナカイ8頭立ての大型ソリが見えたような……そんな気がしたのであった……


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