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アンドロイドホース1頭立てカブリオレ型二輪馬車で食料調達へ

「ヘラ様、アルテミスシティで少しばかり食料を買ってきました」


オリンポス最高神ヘラ様の忠実な側近、虹の女神イーリスはヘラ様の隣に座るとそう言った


今、最新式小型空浮艦ココアサンドラ号のリビングには、この艦に乗っている全ての者がリビングのソファーに集まっていた


それは、オリンポス最高神ヘラ様と、その忠実な側近で虹の女神のイーリス……そしてもちろん俺と……最後にもう一人、ココアサンドラ号の中枢コンピュータがオペレーター用として自ら作り出したリアルな人族の姿をした女性……マリアである


そのマリアがイーリスの言葉にヘラ様が答える前に割って入った


「えっ!!!! 食料?」


マリアはイーリスが買ってきた食料に興味津々である


イーリスはマリアを一瞥いちべつしたが気にせずヘラ様に続けて話しかけた


「お口に合うかは分かりませんが……」


ヘラ様はそれを聞くと優しい口調でイーリスに言った


「イーリス、わらわは今気分が良いのじゃ……今なら、たとえわらわが食したことがないものでも食べてみたいぞよ……してアルテミスシティから何を買ってきたのじゃ?」


「はい、私がアルテミスシティで買ってきた物は、アポロンチョコレート、アポロンマドレーヌ、アポロンキャンディ、アポロンキャラメルでございます!」


俺はすかさずイーリスにツッコんだ


「いや、どんだけアポロン様が好きなんだよ!!!!」


マリアも残念そうに言った


「お菓子……だけね……」


その言葉にイーリスがすぐに反応した


「はっ? いいでしょ! 太陽神アポロン様は私の推しなんだから! アポロン様の双子の妹であられるアルテミス様にお会いして、アポロン様をお慕いする気持ちが急に盛り上がってきたのよ! 私は絶対アポロン様と結婚するんだから!!!!」


その直後、俺は余計な一言を言ってしまった


「えっ、結婚? イーリスなんかが鬼嫁……いや違った……兄嫁になったらアルテミスも苦労しそうだな」


「な、な、な、な、なんですって!!!! ルキ!! もういっぺん言ってみなさいよ!!」


イーリスはそう言うとソファーから立ち上がり俺に向かってこようとした


だがイーリスの隣にいたヘラ様がイーリスの前に手を出し制したあと言った


「イーリス、わらわがあとでルキにおしおきをしておくから怒りをしずめるのじゃ」


「はい、ヘラ様……そういうことなら……」


イーリスは納得いかない顔で俺に再び向き直り言った


「ルキ、覚えときなさいよ!」


(イーリス……怖い)


俺が少し戸惑っているのを見たヘラ様がアポロンマドレーヌを手に取り食べながら言った


「これは美味なのじゃ、イーリス礼を申すぞよ」


「はい、ヘラ様、お褒めの言葉嬉しいです」


イーリスが笑顔になったのを見て俺はイーリスに話しかけた


「あっ、イーリス、俺にもひとつくれるかな?」


「はっ? あんたなんかにあげるわけないでしょ!」


その時、マリアが思い出したように言った


「あっ、ルキ、そういえば、いよいよ食料が底をつき始めたんだけど、これから外へ行って食料調達してきてくれないかしら?」


「えっ、今から……まあ、それはいいけど……」


「行ってくれるの? それならマンモス1頭、お願いね」


「おい! マンモス1頭って……冷蔵庫に入るのかよ」


「入るわよ」


「入るんかい!」


「ギリギリだけどね」


「いや、ギリギリでもすごいよ……マンモス1頭入る冷蔵庫って……一体、中はどんな仕組みなんだよ」


「それは企業秘密よ」


「あー、そうなんですか、マリアさん……ではわたくしはこれで……」


俺はそう言うと自分の部屋に戻ろうとした


「ちょっと待ちなさいよルキ、どこ行くのよ! 今食料調達に行くって言ったでしょ!」


「俺はマンモスと戦いたくないんだよ……外は寒いし……」


「ヘラ様は行く気満々のようよ」


たしかにヘラ様を見るとイーリスをマンモスに見立て槍を投げるような格好をしていた


それを見た俺はマリアに言った


「誰が行かないって言ったよ……行くよ、行くに決まってるだろ!」


「分かりやすいわね、ルキは」


「いいだろ! それより見たところ 森の中は鬱蒼うっそうとしてて高級スポーツカーじゃ入れそうにないぞ……ココアサンドラ号に馬車とかないのかよ!」


「あるわよ」


「あるんかい!」


「但し小さいわよ、2人乗りだから」

「ああ、いいよ、俺とヘラ様が乗れれば」


それを聞いてイーリスが俺をじろりと睨んだ


「とうぜん、わたくしもヘラ様にお供しますわよ、おほほほほ」


「えっ、いいよ、イーリスは来なくても……そうですよね、ヘラ様?」


「よいではないかルキ……イーリスも外に出て楽しもうぞ」


「はい、ヘラ様ありがとうございます、ではお供いたします」


イーリスはそう言いながら勝ち誇ったような顔で俺を見た


俺はすぐにイーリスから視線を外した


(俺はヘラ様とイチャイチャしたかったのに……まあ、イーリスを置いてヘラ様と2人きりで出かけるのは不自然か……ヘラ様と付き合ってることは秘密だし……)


「じゃあ……案内するわね」


マリアはそう言い歩き出したので俺達もマリアの後に着いていくことにした


マリアはエレベーターの開くボタンを押しながら言った


「馬車は2階にあるから」


(えっ、そうだっけ? そういえばココアサンドラ号を隅々まで見たことはないな……)


俺は1度ちゃんとココアサンドラ号の中を見て回らなきゃいけないなと思いながらヘラ様とイーリスと共にエレベーターに乗り込んだ


マリアは全員が乗り込んだのを確認したあと開くボタンを離し閉まるボタンを押すとドアはゆっくり締まりエレベーターは静かに下降し始めたのであった


誰も喋らないエレベーターの中で俺はヘラ様を見た……ヘラ様も俺を見ていた……


エレベーターが2階に着きドアが開くとまずマリアが降りた


俺達もマリアの後に続いた


少し歩きテレポートルームに着いたがマリアは素通りし、さらに奥に進んだ


1番奥らしい場所にはドアがありマリアはドアを開けた……部屋のようだった


俺達もその部屋に入ると、そこは研究所のような雰囲気だった


俺はマリアに聞いた


「マリア、ここは?」


「ええ、ここは私の……趣味の部屋? って所かな……」


「へぇー……」


「何、ルキは興味なさそうね……まあ私なんかに興味はないんでしょうけど」


「そ、そんなことないさ……で、馬車はどこにあるんだよ」


するとマリアは布で覆われている大きな物体のそばに歩いていったかと思うとその布を勢いよく引っ張った


「えっ、すごい!!!!」


俺は驚いた……それはとても美しい馬車だったからだ……まるで上流貴族が乗るような馬車で細かい装飾が細部に渡り施されている


ただそれが俺の目にはどこか奇妙にうつったのは、馬の違和感だった


「マリア、この馬……なにかが違うような……」


俺がマリアにそう言うとマリアは驚いたような表情をしながら言った


「ルキ! よく気づいたわね……そう、この馬はね、私が作り出したアンドロイドなの……つまりこれは……そうね……2人乗りの馬車だし……言うなれば、アンドロイドホース1頭立てカブリオレ型二輪馬車っていうとこかしら」


「おおー!! すごいな!! マリア、天才かよ!!」


俺が感心してその馬車に近づくとヘラ様も興味深そうに言った


「マリア、これは、戦いにも利用出来そうじゃな」


「そうですね、ヘラ様」


イーリスも馬車の周りを回りながらまじまじと観察している


ヘラ様が続けてマリアに聞いた


「マリア……して、これは手綱はどうやって取るのじゃ?」


「ヘラ様、このアンドロイドホースは手綱を取る必要はございません、最初に御者となる者に音声認証してもらえば、声紋認証システムによりその後は声で操作出来ます」


「なんと!!!! マリア……とんでもないものを作り出したものじゃ……ちょうどよい、ルキ、さっそくこの馬車に乗って食料調達に行くでおじゃる」


「分かりました」


俺はそう言うとマリアに頼み音声認証をした


そしてすぐに俺達は馬車をテレポートルームに移動させた


俺はアンドロイドホース1頭立てカブリオレ型二輪馬車に乗り込んだ


そしてヘラ様に手を差し出した


ヘラ様は俺の手を取り俺の隣に座った


俺はヘラ様の手を握ったままヘラ様と熱く視線を絡めた……




「私はどこに乗ればいいの?」


イーリスがマリアにそう言うのを聞いて俺はヘラ様の手を離しイーリスを見た


するとマリアは馬車の後ろに回りこみ指をさしながらイーリスに言った


「ここに立ち台があるから、ここに立って」


「分かったわ」


俺はイーリスが馬車の後ろにある立ち台に上がったのを見て言った


「じゃあ、マリア……食料調達に行ってくる……」


「あっ、ちょっと待って……はい、これお弁当作っといたから……みんなで食べて」


「えっ、ありがとうマリア!!」


俺はそのでっかい三段重ねの重箱を受け取ると馬車にある荷物入れの中に入れた


「じゃあ、テレポート行くわよ」


「ああ……頼む」


俺がマリアにそう言うと、マリアはテレポートボタンを押した


その数秒後、俺達はテレポートルームから馬車ごと消えた……


さらに、その数秒後……


「テッテレー!!!!」


テレポートルームにテレポート完了を告げる音が響き渡ったのだった……


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