小型空浮艦スキュアー・ダンプリング号
「えっ、誰? もしかしてマイーナ王女様ですか?」
俺はその奇妙な小型空浮艦よりも、その可愛いペンギンの獣人よりも、そこに立っているマイーナ王女と思われる女性に驚いたのだった
なぜなら、マイーナ王女と思われるその女性は、長い髪をポニーテールにし格好も勇ましい姿で、凛とした佇まいだったからである
あきらかに先ほど会ったマイーナ王女とは別人に見える
その女性は俺に笑いながら言った
「ルキさん、もちろん私ですわ! ちょっと雰囲気が変わったかも知れないですけれど」
「あっ、ごめんなさい、変な意味じゃないです……素敵です! お綺麗です!」
「ルキさん、ありがとう……私が、こんなおてんばな格好をすると、陰でヒソヒソ言う者も多いんですよ」
「そうなんですね」
「では、みなさん、私の小型空浮艦スキュアー・ダンプリング号へどうぞ! これは私の相棒の副操縦士のギンちゃんです」
ノースフォートランドのマイーナ王女が紹介したペンギンの獣人のギンちゃんは言った
「みなさん、よろしくお願いします、ギンちゃんです! そこのあなた!」
ギンちゃんは俺を指さした……いや、羽を向けた
「えっ、俺?」
「ええ、あなたです……あなたはこの小型空浮艦スキュアー・ダンプリング号を見て一瞬、眉をひそめましたね!」
「いや、そんな一瞬の表情を見られていたなんて怖いな……まあ、たしかに眉をひそめたけど、ちょっとびっくりしただけだよ……あんまり見ないタイプの小型空浮艦だったし……だけど、美味しそうで素敵だと思うよ」
「まさにそこなのです! この小型空浮艦はこの世界に1台しかありません! この小型空浮艦の船長のマイーナ様のこだわりが詰まった外観……そう! まるで巨大な串団子のようでしょ! 巨大な球状のものが3つひっついていて、その後ろに巨大な串のようなものがついている……しかも2番目の巨大な球状のものの左右には、まるでミカンの皮のような翼がついている……分かります、美味しそうでしょ……ただ……そのせいでよく飛んでいる最中に食べ物に間違われ魔獣に追いかけられるのです……さらに……」
「ギンちゃん、そのへんで……」
「あっ、マイーナ様、つい喋りすぎてしまいました! 申し訳ありません」
俺は心の中でホッとしながら、マイーナ王女に促され、小型空浮艦スキュアー・ダンプリング号に乗り込んだ
そしてコックピットの副操縦士席に座ったペンギンの獣人ギンちゃんが全員が乗り込んだことを確認すると、小型空浮艦スキュアー・ダンプリング号は静かに浮かび始め、ある程度の高さまで来ると、突然アーサー王国の方角へ向きを変え、ものすごいスピードで大空の中へ吸い込まれていったのだった……




