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ジュージュー焼き

最新式小型空浮艦ココアサンドラ号が、アルテミス国をぐるっと取り囲む巨大なバニラアイスの城壁を飛び越えてから3時間経ち、辺りはだんだん薄暗くなってきていた


俺は自分の部屋を出てリビングに向かった


リビングのソファーにはオリンポスの最高神ヘラ様が座っていたので俺はヘラ様の隣に座ると言った


「ヘラ様、先程は……」


「ルキ! 大変なのじゃ」


ヘラ様は何事もなかったようにあっけらかんとした明るい表情で俺に食い気味に言った


「ど、どうしたんですか? 何か重大な事ですか?」


「そうなのじゃ! マリアのせいなのじゃ、実は……」


すると突然マリアが俺とヘラ様の前に現れ言った


「お言葉ですがヘラ様、冷蔵庫と戸棚に食糧が少ないのは私のせいではございません」


「何だ、そんなことか……」


俺がそう言うとヘラ様は急にほっぺを膨らませたかと思うと俺の顔にめっちゃ近づいてきて言った


「そ、ん、な、こ、と、じゃと?」


「へ、ヘラ様、近いです……ごめんなさい、たしかに最重要事項ですね……おい、マリア! 何で食糧調達しとかないんだよ」


「はっ? ルキがすぐに出発って言ったんでしょ! ササーヤンマートで買ってから出発したら良かったのよ」


するとヘラ様は一層俺に近づき言った


「全てルキのせいじゃ、なんとかせよ」 


「いや、なんとかせよと言われましても……じきに王都へ着いたら食糧調達してきますので」


「だめじゃ、王都へは一直線に行かぬと言ったであろう」


「分かりました、なんとかいたします」


俺はヘラ様に返事をしつつ心の中で思っていた……あれっ、たしか今すぐ出発じゃと俺に指示を出したのはヘラ様だったような……


「なあ、マリア、この辺りに湖はあるかな?」


「えっ、待ってルキ、すぐ調べるから……あっ、あったわよ……今モニターに出すわね」


「ああ……」


俺は調べるのが早すぎるマリアに感服しながらもリビングにある大型モニターに映し出された大きな湖に見入っていた


「かなり大きいな……マリア、あの湖のそばに着陸してくれないか?」


「ええ、いいわよ」


マリアがそう言った途端、ココアサンドラ号は降下を始めた……徐々に深い森の中にある大きな湖に近づいていく……


やがてココアサンドラ号はその大きな湖のそばに着陸したのだった……





着陸してすぐにイーリスがリビングに入ってくると、俺に一瞥いちべつをしヘラ様の近くに座った


俺はイーリスを気にせず自分の使い魔であるミニドラゴンのリュウト君を召喚した……


「ルキ様、お呼びですか?」


「ああ、リュウト君、ちょっと手伝って欲しいんだけど」


「ええ、それはもちろんよいのですが、これはどういう状況ですか? そしてそちらの方々は……」


俺はリュウト君に簡単に今の状況を説明した後、ヘラ様を紹介した


「えっ! あなた様があのヘラ様であらせられるのですか!! ルキ様のす……」


「おい!」


俺はリュウト君の喋りをさえぎった……リュウト君は優秀な使い魔だが、いつも一言多い……


リュウト君はハッとした顔をした後、急に冷静に喋り出した


「あっ、いえ……何でもございません」


その場の微妙な空気を感じてかヘラ様が言った


「よいよい、リュウト君とやら、よろしくなのじゃ」


「はいっ、ヘラ様……以後お見知り置きを」


リュウト君はそう言うとイーリスを見てさらに言った


「ルキ様、そちらの方は?」


「えっ、誰? ヘラ様以外見えないんだけど」


「はっ? 見えてるでしょ、とぼけちゃって……リュウト君、私はイーリスよ、よろしくね」


「はい、よろしくお願いします……それでルキ様、私は何をすれば……」


「えっ、ああ……リュウト君を紹介がてら夜ご飯を一緒に作って食べようかなって思って」


「それはルキ様ありがとうございます……それでは何なりとお申し付けください」 


「あっ、その前にマリア、まさかこのテーブルは鉄板になったりしないよね?」


「えっ、なるわよ、鉄板に」


「なるんかい! すごいな!」


「そりゃそうよ……なんたってこの船は最新式……」


「わ、わかったからそのくだりはもういいから……テーブルを鉄板に変えといて」


俺は最後まで説明出来ず不満そうな顔をしたマリアからリュウト君に向き直り言った


「リュウト君、じゃあ、着いて来て」


「かしこまりました」


俺はキッチンに行くと冷蔵庫を開けた


「よしっ……何とかなりそうだな」


冷蔵庫の中から必要な物を取り出すとリュウト君にも持ってもらい再びリビングに戻りソファーに座るとヘラ様が近づいてきて言った


「ルキ、一体何を作るつもりなのじゃ?」


「はい、ジュージュー焼きを作ろうと思います」


「何と! あの西の大陸の名物ジュージュー焼きとな! あれは美味でおじゃる! 楽しみじゃ!」


「ではヘラ様これを混ぜてください」


俺は底の深い器にジュージュー焼きの粉と水を入れたものをヘラ様に渡した


「わらわが混ぜるのか?初体験じゃ」


ヘラ様はそう言うと予想に反して上手に混ぜ始めた……俺はそれを見てテーブルの上にまな板を置きキャベツを千切りに切った……5人分の巨大ジュージュー焼きの為、キャベツの千切りは山のようになった……


「出来たでおじゃる」


ヘラ様から渡された生地は綺麗に混ざっていた


「ヘラ様、天才です!」


「そ、そうでおじゃるか?」


「はい、最高です!」


俺は喜ぶヘラ様にしばし見とれていた……


「ルキ様!!」


リュウト君の声で我に返り俺は生地を鉄板の上に薄く丸くめっちゃ大きく広げた


ジュー!


焼ける音が心地よい


さらにその生地の上に大量の千切りのキャベツを乗せ、最後に肉を乗せた


そして数秒後、生地をひっくり返した


ジュージュー!!


焼ける音がさらに大きくなり良い匂いが立ち込め始めた


ジュージュージュー!!!!


突然激しく焼ける音がし隣を見るとリュウト君が焼きそばに焼きそばソースをかけて炒め始めた所だった


俺は生地を焼きながらその隣の空いた場所で玉子を生地の大きさまで丸く広げ焼いた


しばらくして俺はリュウト君の作ってくれた焼きそばの上に良い具合に焼けてきた生地を乗せた


さらにそれを丸く広げ焼いた玉子の上に乗せた


「さあ、いくぞ!」


俺はそれをバラバラにならないように上手にひっくり返すと、しっかり焼き上げ、仕上げに上からジュージューソースと青のりをかけた


「完成で〜す」


凄まじく良い匂いが辺りを包む中、俺がそう言うと、みんなの目が輝いた


「はよう、食べるのじゃ!」


ヘラ様が可愛く俺をせかした


俺はリュウト君に5枚の皿と5つのグラスを持ってくるように言い、目の前の巨大なジュージュー焼きを5等分に切り分けた


そしてリュウト君がみんなの前にそれぞれ皿とグラスを置くと、俺はピザのように切り分けたジュージュー焼きをみんなの皿に置いていった


皿からはみ出すくらい大きいジュージュー焼きを配り終えた俺は冷蔵庫に向かい冷蔵庫の中にあったキンキンヒエヒエ酒を取り出し栓を抜くとみんなのグラスに注いで回った


「さあ、食べましょう」


待ちきれないマリアが言った


俺が全員にキンキンヒエヒエ酒を注ぎソファーに座ると、俺達は、この世界とヘラ様に感謝と愛を込めて祈りそして食べ始めたのだった


「めっちゃ、美味しい〜!」


「美味じゃ、美味じゃ」


「最高ね!」


「たまりません!」


「美味すぎる!」


そんなこんなで巨大なジュージュー焼きはみるみる無くなり飲んで食っての大騒ぎの楽しい夜ご飯はあっという間に終わったのだった


夜ご飯の後、俺は片付けが終わるとヘラ様に呼ばれた


いまだグビグビとキンキンヒエヒエ酒を豪快に飲んでいるヘラ様の横に座るとヘラ様は言った


「ルキ、これから外へ行くぞよ」


「えっ、もう外は真っ暗ですよ……明日にしませんか?」


「いやじゃ、月明かりが出ておるから大丈夫なのじゃ」


「見たんですか?」


「見てはおらぬ……感じるのじゃ」


「えっ、部屋の中にいても分かるなんてすごいですね、さすがヘラ様……分かりました、行きましょう」


ヘラ様は嬉しそうだ……それにほろ酔いのヘラ様はとにかく可愛いすぎる……色気も半端なく仕草も色っぽい……それに俺を見る視線の絡め方といったらたまらない……もしこの場に誰もいなかったら俺は絶対ヘラ様を押し倒して……いやいやいやいや、もとい!! 俺は絶対我慢出来ずにヘラ様をぎゅっと抱きしめていただろう……


「では行くかの……」


ヘラ様はそう言うと右手を上げた


すると瞬時に長い王笏が出現したのであった


「ではルキ、おんぶせよ」


「いや、どういうことですか? 歩かないのですか?」


「良い気分なのじゃ、歩きとうない」


「分かりました……ではどうぞ」


俺がヘラ様に背中を向けてしゃがむとイーリスがずかずかとやって来て言った


「なりませんヘラ様……ルキなどの背中に乗るなどと……私がおんぶいたします……どうぞ私の背中にお乗りになってください」


「ううっ……ルキすまぬな、イーリスがこう申しておるのでな、また今度……」


「ヘラ様! なりません! 今度も何もルキとは距離をとって頂きませんと!」


「イーリス! いちいち、わらわに指図するでない!」


「こ、これは申し訳ございませんでした」


「もうよい……ではルキ、行くでおじゃる」


そう言うと王笏を持ったヘラ様はイーリスにおんぶされエレベーターに向かった


俺とリュウト君もその後を追いエレベーターに乗り込んだのであった……




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