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旅立ち

皆が沈黙する中、ヘラ様は俺の背中を優しくポンポンと2回叩いた後、自分の部屋の方へ歩いて行った


イーリスも慌ててヘラ様の後を追った

俺もその流れに乗るように廊下へと歩き出した


俺の前を行くイーリスが3つある部屋の1番手前の部屋に入ろうとしている……モモーナが住んでいた部屋だ


俺は蚊の鳴くような声でツッコんだ


「イーリス、何で入ろうとしてんだよ」


「えっ、ルキ、今何か私に言った?

聞こえなかったんだけど」


まっ、いっか……


俺は心の中でそう呟き、真ん中の自分の部屋に行こうとすると後ろからイーリスが俺の腕を掴んで引っ張った後、羽交い締めをしてきて言った


「ちょっと、ルキ! 無視して行かないでよ!」


俺は羽交い締めを外そうとイーリスの腕を掴み、イーリスはそれを阻止しようと揉み合っていたが突然俺はハッとした


1番奥にある自分の部屋に入ろうとしているヘラ様が部屋のドアノブを持ったまま、こちらをジーッと見ているのだ


その両目は惹き込まれそうなくらい美しいが瞳は冷ややかだった


ヤバっ……


俺はイーリスを強引に振り切り急いでヘラ様の所へ走った……だが俺がヘラ様の所に行き着く前にヘラ様は部屋の中へ入り鍵をかけてしまった


俺はノックしながら部屋の中へ向かい声をかけた


「ヘラ様、開けてください、ヘラ様」


だが返事はなかった……


そこへイーリスがやって来て俺を押しのけ俺と同じようにノックしながらヘラ様の部屋に向かって声をかけた


「ヘラ様! イーリスです」


ガチャ……


部屋のドアが少しだけ開いた


その途端イーリスは俺に向かいニヤッと笑いながらその少しだけ開いたドアから中へ素早く入って行ったのだった


再び鍵をかける音がした……


イーリスにしてやられた!!!!


俺は一緒カチンときたがモモーナのこともあり怒る気になれず一つため息をついた後、廊下を引き返し自分の部屋に入ったのだった……






俺は自分のベッドに大の字になって色んな事を考えていた


「ルキ、それでこれからどうするの?」


そう言いながら突然俺の股の間からマリアが浮かび上がってきた


「おわっ!! おい!! どっから登場してんだよ!!」


俺は俺の股の間に平然と立っているマリアに怒鳴った


「はっ? 何その態度、せっかく心配して直接来てあげたのに、股間踏み潰すわよ」


そう言うとマリアは俺の股間の上に右足を置いた


「おい! やめろよ!」


俺は慌てて飛び起きた


「まあ、元気はあるようね、いいから早く答えなさいよ」


「ああ、分かったからベッドから降りろよ」


「はいはい」


マリアはダルそうに返事をするとベッドから降りた


「とりあえず北へ向かってくれ」


「じゃあこのままアーサー王国の王都へ向かうのね」


「ああ、そのつもりだ」


「分かったわ」


そう言うとマリアはドアの方に向かったがドアではなくドアの横の壁の中へ吸収されるようにスーッと入っていったのだった


俺は思った……ドアから出ろよ



しばらくして急に部屋全体が揺れたような気がした……カーテンの隙間を見ると何かがおかしい


俺は急いで窓に近寄り勢いよくカーテンを開けた


「えっ、何?」


窓の外を白い物がものすごいスピードで下へ流れていく……それと同時に甘い香りも漂ってきた……


その時、部屋のどこからかマリアの大きな声が聞こえてきた


「只今、目の前の巨大なバニラアイスの壁を越えようと、バニラアイスの壁の手前にてココアサンドラ号は急上昇しております……乗客の皆様におかれましては廊下などに出られませんようにお願いいたします……尚リビングや皆様のお部屋は自動水平装置により、常に地面と水平になっておりますのでご心配なく」


「おい! 言うのが遅いんだよ! しかも何、気取って喋ってんだよマリア! って聞こえてないか」

「はっ? ルキ! しっかり聞こえてるわよ! 雰囲気よ雰囲気!! 何だか楽しくなってきたでしょ」


俺は窓の外を見てるうちに確かに楽しさを感じたのだがマリアに楽しいと言うのはシャクなので返事はせず一人呟いた


「そうか、バニラアイスなんだ……何だか白い川のようだな」


そう言い終わる瞬間にはもうココアサンドラ号は青い空の中にいた……窓の外も真っ青だ……上か下かも分からない


その数秒後、徐々にココアサンドラ号自体も地面と水平に戻り、さらに下降し始めたのか、俺の視線の先には深い緑が見えてきたのだった……


「ポーン……皆様、もうお部屋を出られても結構です」


「口でポーンって言うなよ」


こうして俺達はアルテミス国を後にしてアーサー王国の王都へ向け旅立ったのであった……




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