混乱
アルテミスが何か俺に向かって喋りかけている
……思い出せない……
何も聞こえない……
意識が俺を見下ろしている……
吹雪の音さえ聞こえない……
俺は天界を追放されて以降のことを思い出そうしたが、その記憶の前にまるで鍵のかかった扉が立ち塞がっていて、奥に進むことが出来ず、焦りと不安でズキンと頭の奥が痛んだ
しかし頭の奥の痛みとは裏腹に俺の心は、しきりにそれを思い出せと言っている
……思い出せない……
恐怖にも似た例えようのない空虚感……
何かがおかしい……
俺は誰で今何をしているのだ……
俺は目の前の高くそびえる山を見上げた……
……分からない……
俺はなぜここに来たんだろう……
俺はどこへ向かっていたんだっけ……
なぜこんな無謀なことを……
俺は、なぜ魔物に会うのだ……俺は魔族ではないとアルテミスは言う……ならば魔界を目指す必要はないではないか
もし、こんなところで魔物に襲われたら……俺たちは……突然ハッとして吹雪の音と共にアルテミスの声が聞こえてきた
「ルキ……気が済んだ? もう戻った方がいいわ……」
「……分からない……」
俺はその場にうずくまった
「ルキ……ごめんなさい……さあ、帰りましょう……」
月の女神アルテミスは俺を優しく抱きしめオッドアイの賢者クレオブロスと黒きゴスロリ美少女バトルアンドロイド、カーリンに合図をすると、その場を離れ潜水艦クレオブロス号に戻ったのであった……




