王女がクレタ島……通称監獄島へ移送される……そしてプランZ
塔の上でアイコディーナ王女はさめざめと泣いている
その日、突然アーサー王国全土に魔法の水晶玉を通してニュース速報が流れた……
「速報です! スパイの罪が確定したアーサー王国の元王女アイコディーナは、その身分を剥奪され身柄をクレタ島へ移送されるもよう……また名前もこれからはミドルネーム表記だけに変わりただのディーナとなるとの事です……」
街の人達が噂をしている
「やっぱりね、私は最初からそんな人だと思ってたのよ」
「どうやら王室もディーナの幼い弟ガヘリスの母親で第二王妃のギネヴィアが第一王妃に繰り上がるらしいぞ……ディーナの母親は表向きは実家のオリンポスへ帰るらしいがおそらく追放なんだろうな……」
「あっ、それからディーナ本人もあの恐ろしい島……通称監獄島へ送られるそうよ」
「ああ……あそこの看守長ミノタウロス様はまるで牛の怪物のようだからな……」
「そうそう……迷路の中にある監獄……たとえ脱獄が成功して迷路を抜けたとしてもその先は断崖絶壁……海もいつも荒れ狂っているし……まさに重罪人だけの島ね……」
一方、ササーヤンマートの前にルキが乗る最新式小型空浮艦ココアサンドラ号があるという情報をつかみすぐさまアルテミス宮殿から高級リムジンで出発した月の女神アルテミスと女神見習いのココアサンドラと執事の羊の獣人カール君は、あっという間にササーヤンマートがある草原に到着した
アルテミスは急いで高級リムジンから降りると辺りを見回した
「ココアサンドラ号は? いないじゃないの!」
カール君も降りてきた
「アルテミス様、ちょっとササーヤンマートで聞いて参ります」
そう言うとカール君はササーヤンマートに突進していった
「っらっしゃいまっせ〜!!!!」
「メェー、メェー、メェー!!!!」
店からそんなやりとりが聞こえしばらくするとカール君が戻ってきた
「アルテミス様、どうやらココアサンドラ号はどこかへ飛び立ったまま帰ってこないそうです」
「なんですって……もう……ルキのやつ絶対許さない……」
アルテミスがぷりぷり怒っている横でココアサンドラはササーヤンマートをじっと見つめている
「ねぇ、アルテミス、ルキもいなかったことだし、私ここでバイバイしてもいい?」
「いいけど……ちゃんと宮殿に帰ってきなさいよ! 課題を見るから」
「えっ、ええ……分かってる……じゃあね」
そう言うとココアサンドラは一直線にササーヤンマートに飛び込んでいったのだった……
「あれはお菓子目当てね……ココったら……全くもう……お菓子より私が出した夏休みの課題はちゃんとやってきてるのかしら……帰ってきたら先生モードにならなくっちゃ!!!!」
アルテミスはそう言い、何をしてもその言動が可愛すぎるココアサンドラに半ば呆れながら高級リムジンに乗り込んだのだった
そしてアルテミスがカール君にアルテミス宮殿に戻りましょうと言おうとした途端カール君は突然叫んだのだった
「アルテミス様! こ、これを見てください!」
カール君に促されアルテミスが車内にある魔法の小型水晶玉を見るとそこには魔術省の者らしき女性が興奮して喋っていた
「明日、アーサー王国の元王女ディーナがクレタ島へ移送されるそうです……これは異例の早さだと思われ……」
「えっ、アイコディーナがどうして……」
アルテミスは魔法の水晶玉に近づき下のテロップを読んだ
「な、な、なんてこと!!!!!! カール君! プランZを実行する時が来たわよ」
「えっ、なんですって……いきなりプランZですか?」
「ええ、時間がない……プランZで行きましょう! 準備は出来てるのよね?」
「はい、プランZは水面下で着々と準備して参りました!」
「ではすぐにカフェ・ド・セリーナへ行きましょう!」
「分かりました、では!」
カール君は高級リムジンを急発進させた
キーッ、パン、パン、タタタッ、ガチャ
「セリーナ! セリーナはいる?」
店内の客が一斉にアルテミスとカール君を見た
「どうされたんですか? アルテミス様……セリーナ様はおられませんが……」
カフェ・ド・セリーナの店長巨大な白熊の獣人カゴシャンが言うとアルテミスは言った
「そう、分かった……カゴシャン、すぐに熱々のコーヒーをいただけるかしら!」
「はい、かしこまりました……砂糖とミルクはどうされますか?」
「そうね、砂糖とミルクはどうしようかなー……って! じゃなくて熱々のブラックコーヒーを今ちょうだい、すぐちょうだい!」
「か、かしこまりました……ではすぐにお持ちいたします」
「あっ、カゴシャン、ごめんなさいね、急がせてしまって‥今度神殿の儀式の時、良い席を用意するからね」
「あ、ありがとうございます……嬉しいです……ココアサンドラ様がおられる側の席がいいのですが……」
「分かったわ、ユーカリスに頼んどくわね……あれっ、そういえばユーカリスは? コーチス王との儀式が終わった後、店に行ったんだと思ってたけど」
「はい、ユーカリス様が乗ったキッチンカーはまだ帰ってなくて……セリーナ様もルキ様と一緒に住むとかで出て行ったまま帰ってこられませんし……」
「えっ、今なんて?」
「はい、ユーカリス様が……」
「いえそこじゃなくてセリーナがルキと何ですって?」
「はい、セリーナ様はルキ様と一緒に暮らすらしいです」
「な、なんてこと……私の知らないところでそんなことが……ルキのやつ……」
「では熱々のコーヒーを取ってまいります」
その時カール君がボソッと言った
「まさか……駆け落ちでは……」
その途端アルテミスが怖い顔でカール君を睨んだ
カール君は背筋が凍りすぐに言った
「じょ、冗談ですよ、アルテミス様……ルキ様とセリーナ様に限ってそんなことは……」
するとそこへカゴシャンが熱々のコーヒーを運んでくるとアルテミスに渡した
アルテミスはすぐにいつもの上品で優しい表情に戻り言った
「ありがとう、カゴシャン……」
アルテミスとカール君は店を出ると湖に向かって急いだ
熱々のコーヒーを持ったアルテミスは湖のほとりに来るとカール君に言った
「じゃあ、いくわよ……」
「はい、アルテミス様……」
アルテミスは熱々のコーヒーを湖の中へ注いだ
そしてカール君と一緒に湖の中へ手を入れた……その瞬間……
「パンパカパーン!!!!!!!! アルテミス様、羊、熱々のコーヒー、
3つのアイテム調合コンプリート確認しました! 只今よりアイスの魔女セリーナ様の国への扉が開かれます……追加緊急プログラムプランZ発動確認完了……ようこそ! セリーナ城へ!!!!」
湖の番人でありゲートの管理者であるアイスの国のアリスがそう叫んだ瞬間、湖面が光だし巨大な湖を取り囲むようにして草木の精霊達が激しいダンスを繰り広げだした
そして光が収まると同時に湖面の水がみるみるバニラアイスに変わっていき盛り上がっていった
どんどんどんどん盛り上がっていく
天まで届きそうな勢いでバニラアイスは城の形に変化していった
そしてついに城はそびえたった
だがまだ終わらなかった
突然、湖の向こう岸のバニラアイスだけが上へ上へと伸び巨大な城壁になった
そのバニラアイスの城壁は左右にものすごい速さで横へ横へと伸びていく
その時アリスがアルテミスに言った
「アルテミス様、すぐにプランZは終了いたします……ささっ、セリーナ城の中へどうぞ……」
セリーナとカール君がアリスの案内でバニラアイスで出来たセリーナ城に入ると全員でエレベーターに乗り1番下の階へ降りた
そこは何もない部屋で部屋の真ん中に階段が下へ続いていた
アリスは言った
「アルテミス様、階段の先はアイスの国に通じています」
その時カツカツと靴の甲高い音を響かせ階段を上がってくる者がいた
そしてその者がアルテミスと目が合った瞬間、走ってきてアルテミスにひざまづいた
「あっ、これはアルテミス様、プランZ完了まで今しばらくお待ちください」
「チョコミント将軍、完了までとは城壁が完成する事ですか? そのほかは完了しているのですか?」
「はい、アルテミス様、バニラアイスの城壁以外は完了しております……プランZが発動した瞬間、直ちに以前アーサー王様とアルテミス様との間で取り交わした密約を実行いたしました」
「どのように?」
「はい、まずアーサー王様と政教条約の規定に基づき締結、調印した文書をセリーナ城の魔法スタジオで映しながら、私がアーサー王国に向け、アーサー王国から独立しアルテミス国を建国したことを王都の魔術省の魔法の水晶玉を通して通達いたしました……そして先程アイスの国へ行きアイスの兵士の軍隊を呼びに行ってまいりました……やがて続々とアイスの兵士がやってくることでしょう……その頃にはアイスの城壁がアルテミスシティとアルテミス神殿をぐるっと取り囲んでアルテミス国が完成しているはずです……そして、国境の出入り口に兵士を配置した後、アーサー王国全土に向けてセリーナ城の魔法スタジオからアルテミス国が政治的に独立した区域となったことを放送いたします」
「分かりました……よくやってくれました……ありがとう」
小型空浮艦ココアサンドラ号にいる聖女モモーナは言った
「ルキ、私コーチス大使館に一度戻って生活に必要な物を取ってくるわ」
「ああ、分かった……ひとりで大丈夫? 俺も行こうか?」
「えっ、いえ……そんな……ひとりで大丈夫よ! ルキは来なくていい! 待ってて」
「分かったよ……ていうかモモーナ、なんでそんなに慌ててるんだよ」
「えっ、慌ててなんかないわよ……じゃあ行ってくるね」
モモーナはルキがフィアンセだと思い込んでいるコーチス王にルキを合わせたくないのであった……
モモーナが言った後すぐ、セリーナが叫んだ
「あっ! ルキ見て! このニュース」
俺が水晶玉を見ると、見るからにチョコミントアイスが好きそうな男が喋っていた
「……であるからしてここに城郭都市アルテミス国を建国するものとする」
「ん? アルテミス国?どういうことだ?」
するとセリーナが真剣な表情で俺に言った
「ルキ……黙っててごめんなさい……これはプランZだわ! すぐカフェ・ド・セリーナへ戻りましょう!」
「プランZ? 何それ?」
「それは行きながら話すわ……とにかく急ぎましょう!」
「分かった……でもモモーナに伝えないと」
「そうね……私の使い魔のフクロウのホーちゃんに行ってもらう?」
「いや、俺の使い魔を使うよ」
俺はすぐさまミニドラゴンのリュウト君を召喚した
「お呼びですか、ルキ様」
俺はリュウト君に事情を話し言った
「リュウト君、悪いけどモモーナに事情を説明した後、モモーナをリュウト君の背中に乗せてカフェ・ド・セリーナまで連れてきてくれないか?」
「かしこまりました、ルキ様、仰せの通りに」
そう言うとミニドラゴンの使い魔リュウト君はスゥーっと消えた
俺はマリアを呼び出し言った
「さあ、カフェ・ド・セリーナに向けて出発だ!」
「ルキ分かったわ‥ココアサンドラ号発進!!!!!!」
そう言うが早いか小型空浮艦ココアサンドラ号はあっという間にその場から飛び立ったのであった……




