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神官の秘密

「ねぇ、ちょっと聞いてみるんだけど」


キッチンカーを運転しているユーカリスはソラファに言った


「何、ユーカリス、またいつもの質問攻め? 質問は3つまでにしてね」 


「はっ? いいでしょ、質問するの好きなんだから!!!!」


「まあ私は大丈夫だけど、この間の旅でユーカリスは質問好きだよねって話題になった時、ココアサンドラがユーカリスの質問攻めはイラッとするって言ってたわよ」


「えっ、そうなの? ココアサンドラ様、そんなこと思ってたのね……分かったわ、気をつける……じゃないわよ……何、話変えちゃてくれてんの? ソラファに聞きたいことがあるのよ!」


「何よ」


「ソラファ……さっき私がソラファとグラちゃんの話を聞いても驚かなかったの不思議に思わなかった?」


「まあ、たしかに……でも魔族とは全面戦争中ではないんだし……」


「いえ、そのことじゃなくて、その黄金のソロモンの指輪のことよ」


「そういえばこの指輪のことユーカリスには話してなかったわね……ユーカリスはこの指輪のこと知ってるの?」


「やっぱりソラファは知らないのね‥その黄金のソロモンの指輪はなぜあなたが持ってるの?」


「それは従姉妹のアリーシャから譲ってもらって……」


「その前は?」


「その前ってどういうこと?」


「アリーシャ様の前の指輪の持ち主は誰かってことよ……実はその指輪は私がアリーシャ様にお譲りしたものなの」


「えっ、どういうこと?」


「その黄金のソロモンの指輪は私が聖騎士パラディンだった頃、大天使ミカエル様から頂いた指輪よ……でもその後アルテミス様にお仕えすると決めた時アリーシャ様が困っておられたからお譲りしたの」


「でも……なぜミカエル様が指輪をユーカリスに? ユーカリスはミカエル様の弟子なの?」


「いえ、私……私は……天使なの……」


「えっ、天使? 人族じゃなく?」


「ええ……」


その途端悪魔犬グラシャラボラスはユーカリスに近づきニオイをクンクン嗅ぎ出した


「ちょっとやめなさい、グラちゃん!」


ソラファがユーカリスからグラシャラボラスを引き離そうとした


「やめろよ、ソラファ、こいつは全魔族の敵である大天使ミカエルの犬かも知れないんだぞ! 犬の俺が言うのもなんだけど」


「今は違うわよ! ねえユーカリス、そうでしょ?」


「ええ、今は違うわ、私はミカエル様の裏の顔が嫌になって悩んでいた時に助けていただいたアルテミス様に、今は忠誠を誓い私の全てを捧げているのだから」


だがグラシャラボラスはずっとユーカリスのニオイを嗅いでいる


「もう、仕方ないわねグラちゃんは! それでユーカリス、なぜそのことを私に告白するの?」


「ええ、実は私……黄金のソロモンの指輪で悪魔を召喚し使役したことが一回だけあるのよ」


「えっ、そうなの? で、誰を呼び出したの?」


「それは……グラちゃんが、さっき話してた魔界の王の一柱……ベレトよ……」


その瞬間グラシャラボラスが叫んだ


「ベレトー!!!!!!」


「グラちゃんはベレトと知り合いなの?」


「ああ、よーく知ってる、猫のベレト……じゃなかった……猫の魔王ベレトは俺の友達だ!」


「へー、そんなんだ……それでそのベレトが何なの? ユーカリス」


「ええ、そのベレトともう一度会いたくて‥その指輪で呼び出してほしいの」


ユーカリスがソラファに言うとグラシャラボラスが犬らしく後ろ足で体を掻きながら言った


「まあベレトはいいやつだからな、その気持ちは分かるが、今は俺が召喚中だから呼び出せないぞ」


「やっぱりそうよね……あきらめるわ」


「俺が今度連れてきてやろうか?」


「いいの?」


「ああ、ミカエルを裏切ったところが気に入ったからな」




一方、アルテミス宮殿では執事の羊の獣人カール君が高級リムジンを駐車場からアルテミス宮殿の前に回してきた


アルテミスとココアサンドラは高級リムジンに近寄っていく


するとアルテミス宮殿の警備隊長ライオンの獣人のガオー大佐が入り口から飛び出してきたかと思うとアルテミス達を追い越し高級リムジンの後ろのドアを開けた


「ありがとう」


「いえ、アルテミス様、いってらっしゃいませ」


「私もいますわよ、オホホホホ」


ココアサンドラが言うとガオー大佐は慌てて言った


「どちらのお嬢様で?」


「えっ、私よ私……ココアサンドラ!」


「こ、これはココアサンドラ様でしたか! 申し訳ございません……あまりにもお美しくなられて……恋の魔法ですかな?」


するとアルテミスが言った


「私急いでるんだけど! あっ、いえ、もうココアサンドラとのお喋りはいいかしら?」


「これは失礼いたしましたアルテミス様……お急ぎでどちらへ?」


「えっ、ああ……ルキが乗った小型空浮艦が見つかったらしいからちょっと行ってくるわね」


「はて、何を申されてるのかよく分かりませんが改めまして、アルテミス様、ココアサンドラ様、いってらっしゃいませ」


アルテミスとココアサンドラが高級リムジンに乗り込むとドアは閉まり高級リムジンは静かに発進した……





ガオー大佐が高級リムジンを見送り宮殿内に戻ろうとした時、高級リムジンと入れ替わるようにカフェ・ド・セリーナの店のキッチンカーが宮殿前にやってきた……


「ユーカリス、その続きはアルテミスに会ってから聞くわね」


「ええ、分かったわ」


そう言うとソラファはキッチンカーから降りガオー大佐に駆け寄った


「ガオー大佐、アルテミスいる?」


「これはエルフの国のソラファ王女様ではないですか、アルテミス様なら今お出かけになられましたが」


「えっ、そんな……どこへ?」


「なんでもルキが乗った小型空浮艦を見つけたらしいから行ってくると」


「もしかして小型空浮艦ってココアサンドラ号?」


「それは存じ上げませんが」


「とにかく行き先は分からないのね?」


「はい、それを詳しく聞く間もなく行ってしまわれましたもので」


「どうしよう……困ったわ」


ソラファはキッチンカーに戻るとユーカリスに説明し言った


「私のママに相談しましょう……今はそれしか良い考えが浮かばない……」


「分かったわ……来た道を戻りましょう」


カフェ・ド・セリーナの店のキッチンカーはアルテミス宮殿を離れ来た道を戻り始めた


そして妖精の森の入り口まで来たその時である!


突然キッチンカーの前に飛び出してきた者がいた


「あっ、危ない!!!!!!」


キキーッ!!!!!!


ユーカリスは急ブレーキを踏んだ


ソラファがキッチンカーを急いで降りて叫んだ


「ちょっと危ないでしょ!!!!!!」


「あっ、ごめん……嬉しくなってつい……」


「あっ! あなたは……」


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