エルフレイクサイドアリーシャホテルを悪魔の軍隊が占領する
ユーカリスが何気なく空を見上げると、一瞬、ドラゴンに乗り体にヘビが巻きついている恐ろしく不気味で悪魔のような雰囲気を醸し出している反面、超絶イケメンな姿をそこに見たような気がした……
アルテミス神殿の神官でありながらカフェ・ド・セリーナの店員であり完璧な美貌の持ち主ユーカリスがエルフ湖のそばにある完成間近のホテル、エルフレイクサイドアリーシャホテルからカフェ・ド・セリーナに戻ろうとキッチンカーに乗り込もうとしていた時、一人の女性がホテルから走ってきてユーカリスに言った
「ハァハァハァハァ、ま、まにあった」
「あっ、すいませんお客さん、もう商品は全部売り切れたんですよ……って、なんだソラファじゃないの、どうしたの、こんなところで……頭に子犬なんか乗せちゃってさ」
「えっ、頭の上? ちょっとグラちゃん! いつの間に頭の上におすわりしてるのよ!」
「ああ、なにせ今は小型犬だろ、ソラファに追いつかないから頭の上に飛び乗ったんだよ」
「そうなんだ、じゃあ仕方ないわね……じゃないでしょ! 降りなさいよ」
「なんだよ、ソラファの頭の上は座り心地が良かったのに……分かったよ、じゃあ飛ぶよ」
「そうよ、飛べるのよ、グラちゃんは!
飛んでね、今度からは飛んでね、ソラファの頭の上にはおすわりしないでね」
「じゃあ、ソラファ私はこれで」
「ちょっと待ったらんか〜い!」
「何よ、ソラファ、だから商品は売り切れたって言ったでしょ、私は、あなたの腹話術を見てる暇はないのよ」
「どこが腹話術なの? もしこれが腹話術なら世界のエンタメは私のものよ!
違うわよ、このグラちゃんは犬の姿をした悪魔なの! 本来の姿になったらユーカリスなんてすぐに食べられちゃうわよ」
それを聞いたグラシャラボラスはすかさず言った
「えっ、ソラファ、この娘、食っていいのか?」
「なんでそうなるのよ! グラちゃんは黙ってて、話が先に進まないじゃないの!」
「分かりました、プリンセスソラファちゃん、どうぞお話しくださいませ〜」
「なんか、ムカつくけど、まあいいわ‥
あのねユーカリス……っていないんか〜い」
ユーカリスはこっそりキッチンカーに乗り込みエンジンをかけアクセルを踏もうとしていた
ソラファはキッチンカーの前に仁王立ちになった
「行かせないわよ、ユーカリス!」
「ちょっと危ないでしょ、ソラファ、どきなさいよ!」
ソラファは慌ててキッチンカーの助手席に悪魔犬グラシャラボラスと乗り込んだ
「何、ソラファ、どういうこと?」
「ユーカリス、急いでアルテミスのところに連れて行ってちょうだい!」
「えっ、私、早くカフェ・ド・セリーナに戻らないと……店長が心配するだろうし‥それに今アルテミス様はコーチス王様の歓迎晩餐会の最中だと思うわよ」
「それでもいいわ、とにかくアルテミスに知らせないと……じゃあ、ユーカリス、理由を説明するわね、よく聞いて……って忘れたわ、なんか私にはよく分からなくて……とにかくホテルに悪魔の軍隊がやって来て占領しててアリーシャ様達やエルフ達は一瞬で固まっちゃって動かなくて私はグラちゃんがいたから大丈夫で……」
「ちょっとソラファ、落ち着いて!」
ユーカリスがそう言うとグラシャラボラスが言った
「ユーカリスちゃん、ソラファは興奮しとるから、ワイが話すわな」
「あっ、ほんとに犬がしゃべってる!
あなた本当に悪魔なの?」
「なんや、ユーカリスちゃん、信じとらんかったんか、そうや、ワイは悪魔なんやで〜……ってふざけとる場合じゃなかった……つまりソラファが言いたかったのはな、俺が王都からエルフの国に着いて俺はソラファに内緒でこっそり魔界に帰ったんだよ」
「ええ、まあ、信じるわ」
「で、その足で魔界帝国のルキフェル宮殿に行って俺と隊が同じネビロス隊でルキフェル帝国軍6将校の一人、ナベリウスが……ああ、このナベリウスってのは冥界ではケルベロスって呼ばれてて、そのナベリウスがアーサー王国にルキ様が居たってことを、俺達の隊長の上級悪魔6柱で将軍の一人、少将ネビロス様に報告したら、同じく将軍の中将で魔界帝国騎士団長のルガタナス様をだし抜こうと、よく調べもせずに、お二人の直属の上官、司令官アスタロト様に報告したところアスタロト様はすぐルキ様を自ら探しに行くぞってことになり、アーサー王国のどこにいるってなってネビロス様が困ってらっしゃったから、つい俺がエルフレイクサイドホテルでルキ様の仲間が騒ぎを起こしたことを言っちゃって‥で今アスタロト様の軍隊と俺も含めたネビロス様の軍隊がこのエルフレイクサイドホテルに押しかけて来たってわけだよ‥俺は責任を感じてル・パン・ド・ソラファにいたソラファに知らせてソラファと一緒にホテルに帰ってきたら大変なことになってて‥あっ、ちなみに俺、グラシャラボラスも魔界帝国軍6将校の一人なんだぜ!!!! えっへん!」
「そう、なんとなくしか分からないけどとにかく大変な状況なわけね、あっ、だし抜くってのはどういうこと?」
「ああ、えっと、魔界帝国の騎士団長ルガタナス様はルキ様の騎士の先生なんだよ……つまり司令官アスタロト様は直属の配下お二人のうち同じ将軍でもルガタナス様を優遇なさってるわけさ‥それをよく思わないネビロス様が今行方が分からないルキ様を見つけて手柄を立てて司令官アスタロト様に取り入ろうとしたというわけさ」
「うーん、やっぱりなんとなくしか分からないわ……でも、とにかくアルテミス様の所へ行きましょう!」
そうユーカリスが言うとソラファが言った
「あっ、グラちゃん、ひとつ聞いてもいい?王都の手前のホテルでも疑問に思ったんだけど、そのルキフェルっていう悪魔があのルキだっていうの?」
「そうだよ、あの時ルキフェル様自身は否定なさったけど、前から魔界では、魔界の皇帝ルキフェル様が突然いなくなったのはどこかで羽を休めてるんだろうって噂があったんだよ……その後、アーサー王国でルキフェル様を見かけたっていう魔界の者も出てきたしね……さらにはルキフェル様のもう一人の腹心の女王チホリリス様が直属の配下で魔界帝国の宰相リーパー様とその側近の6将校の中の2将校マルバス、ベレトと共にルキフェル様を再び魔界の皇帝に戻すべく画策してるらしい……俺もあの時みんながルキって言ってて間違いないと思ったんだけど……ルキフェル様そっくりなニセモノなのかな」
「そう、分かった……ニセモノなのかは分からないけど、ふらふらしてて、たよりなくて女好きなところは、もう立派な悪魔ね‥それより、今マルバスって言った? 私マルバスと旅をしたわよ!」
「えっ、マルバスと旅? そんなことが可能なのか? ああ、そうかソラファが、はめている黄金のソロモンの指輪で言うことをきかせたんだな……そうじゃないと、一度暴れ出したら止まらないマルバスと旅なんか出来るわけはないからな‥あっ、ちょっと俺に黄金のソロモンの指輪を貸してみ!」
「はっ?、グラちゃん、そんなこと言って黄金のソロモンの指輪を奪う気でしょ
そうすれば私の言う事を何でもきかなくてすむようになるからね」
「バレたか、でもまあ使役を解いてくれれば同じ事なんだけどな、ハハハ……ソラファ……その後俺が魔界から直接ソラファの前に現れたらどうする?食っちゃうかもよ」
「えっ、それは考えたことないわね、そん時はそん時よ、でも言っとくけど私は強いわよ! もしマルバスやベリアルが直接来ても負けないんだから!」
「えっ、ベリアルも使役したのか?すごいんだなソラファって……でも大丈夫だよ、たぶん俺もマルバスもベリアルも、もうソラファとは友達っていう絆で結ばれてるからな! 逆にソラファを攻撃してくるやつは俺達がやっつけてやるぞ!」
「ありがとう、グラちゃん!!!!」
ソラファが言うとユーカリスが言った
「あのー、お2人が盛り上がってる時になんだけど、ちょっと質問していいかな……ねぇ、ルキさんが悪魔ってほんと? 信じられない……あんないいかたが……」
「それはユーカリスの前だけよ! じゃあ早く行きましょう!」
ソラファが言うとユーカリスは、うなずきキッチンカーを発進させた
こうしてカフェ・ド・セリーナのキッチンカーに乗ったユーカリスとソラファとグラシャラボラスはアルテミス宮殿にいるアルテミスの元へ向かったのだった……




