女神ヘラをお姫様抱っこする……そしてカエルの魔獣の正体
俺とサヤカーリンはココアサンドラ号のリビングに戻った
ヘラ様はソファの端で眠っているようだ
サヤカーリンはソファのど真ん中に座った
俺はヘラ様のそばに行き、ヘラ様を揺すってみたが起きる様子はない
俺は仕方なくヘラ様をヘラ様の部屋に連れて行くべくヘラ様をお姫様抱っこした
そしてソファに座っているサヤカーリンの真後ろにくると突然強烈な光を感じた
最初その光はソファの前方の壁のやや上にある大型モニターの方からだと思ったが、よく見ると大型モニターの下にある水晶玉から光は出ていた
それはおなじみのテレビのような元ミーナ首相が考案して魔術省が作った魔術による送信装置だった
今では一家に一台はあり、魔術省が伝えたい事があると魔術省のスタジオの映像が突然水晶玉に映し出されるわけだ
いつもは女性アナウンサーがニュースを読むだけだが今回は趣向が違った
見ると魔術師が子供達を前に魔術を披露している
まるで子供番組だな……
俺がそう思っていると、それを見ていたサヤカーリンが、キャッキャ言いながら楽しそうに手を叩いて笑いだした
俺はミーナのおかげでずいぶん魔術省も変わったもんだなと思いながらリビングをあとにした
ヘラ様をお姫様抱っこしたままヘラ様の部屋に入った
真っ暗だ……
だが両手が塞がっていて電気がつけられない
俺は仕方なく……いや本当に仕方なくだよ……ゆっくりと真っ暗な部屋を進みベッドの上にヘラ様をおろした……
が、その瞬間、ヘラ様が俺の首の後ろに両手を回してきた
俺は外そうとしたがどんどん俺はヘラ様に抱きしめられていった
「ヘラ様、起きてるんですか?」
「寝てるぞよ」
「いや、完全に起きてますよね、離してください、俺部屋を出ますから、ゆっくり休んでください」
「分かったぞよ、ルキはつまらん男じゃな、ではおやすみじゃ」
そうヘラ様が俺の耳元で言ったので俺はヘラ様の両手を離そうとするのをやめ、逆にヘラ様をもう一度ギューッと抱きしめてから、おやすみなさいヘラ様と言ってヘラ様から体を離し部屋を出たのだった
リビングに戻るとサヤカーリンはいなくなっていた
「ケロケロケロケロケロ……」
下の方からカエルの鳴き声がする
俺は空中に向かってマリアを呼んだ
「マリア、この鳴き声のする場所を教えて」
するとマリアが急に俺の目の前に現れた
「わっ、マリア、いきなり目の前に現れたらびっくりするだろ」
「あはは、驚いた?ごめんごめん、カエルの鳴き声はテレポートルームから出ているようね」
「あっ、カ、カエル君のことすっかり忘れてた!」
「私は忘れてないわよ、なんたってこの船の中で起こることは全て分かるんだから……ちゃんとカエルの魔獣の世話はしてたわよ」
「そうなんだ、マリアありがとう!」
「まっ、それはいいとして、さっきは楽しそうだったわね、ルキ」
「えっ、さっきって?」
「ヘラ様の部屋でよ、私は真っ暗でも見えるんだから」
「覗いてたのかよ」
「失礼ね、見えたのよ! 言ったでしょ、この船の中で起こることは隅々まで見えるのよ」
「なんか怖っ、俺が風呂入ってるのは覗くなよ」
「覗かないわよ!!!!!!!!」
俺は怒るマリアを残しコックピット前のエレベーターに乗りテレポートルームのボタンを押した
するとエレベーターは降下しエレベータードアの上にあるテレポートルームのボタンの所で光ると停止しドアが開いた
いい匂いがする……
俺がテレポートルームの奥に行くとそこにはサヤカーリンとカエルの魔獣が仲良くカップ麺をすすり楽しくしゃべっていた
「何してんだよ、サヤカーリン?」
「えっ、カップ麺食べてるんだよ」
「いや、そうじゃなくてお腹減ったのか?肉と野菜のポセイドン様を食い尽くしたのに」
「だってナベリウス君がお腹空いてると思って……」
「ナベリウス君?ああカエル君の事か……」
その時である……
「ルキ様、お久しぶりです」
突然カエルの魔獣ナベリウスがしゃべったかと思うと変化した
「えっ、ナベリウス君、なんか変化して怖くなってるじゃん!」
「いや、ルキ様、お忘れですか、これが私本来の姿、魔界の侯爵ナベリウスでございます」
「いや、ちょっと何言ってんのか分かんないっスね」
「えっ、やはり、噂は本当なのか……ルキ様、私をお忘れなのですか?」
「いや、全く記憶にないっス」
「ああ、なんということだ……ルキ様、私はこれからすぐ魔界に帰り、報告し対策を練ります、こんな不幸な生活も、もう少しの間だけガマンなさって下さい」
「いや、俺今めっちゃ幸せですけど……」
「ああ、なんとなげかわしい……ではルキ様、失礼いたします……あっ、サヤカーリン、いろいろ世話になったな、ルキ様に会わせてくれるという約束たしかに受け取ったぞ、サヤカーリンとの旅もなかなか楽しかったし、また会おうぞ! ではさらば!」
そう言うと魔界の侯爵ナベリウスは消えてしまった
「ナベリウス君……」
サヤカーリンは何だか寂しそうだ
だが俺は、近頃は変なやつが多いからなと思いながらサヤカーリンを連れてリビングに戻ったのだった……




