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魔力と記憶






ヒューーーーッドーーン!!!!!!


トントンカカカットンカッカッ……






遠くに聞こえる太鼓の音……


時々上がる花火の音と光……






「えっ……なんでここに?」


月の女神アルテミスは思わず呟いた


「アルテミス様、ここがアルテミス神殿なのですか?」


俺は月の女神アルテミスに質問しながら、ここは夢の世界かと思っていた……


なぜならそこは、外という概念が当てはまらない空間だったからだ……


しかし、その空のような空間には、時々大きな音と共に花火が上がっていた……遠くから太鼓の音も聞こえた……


しかも地上と言うのが正解なのか分からない場所にはビッシリとうさぎの獣人が埋め尽くされていた


そのうさぎの獣人の数は、とても数え切れないほどいた……おそらく数万匹はいるだろう……


「えっ……こ、ここは……えっと……」


アルテミスは戸惑いの声を発した……





その時、後ろから声がした……


「あっ、アルテミス様、どうしてここに? そいつが魔界の皇帝ルキフェルですか?」


「シィーッ!!!! ミーナ、黙って!!!!」


アルテミスは人差し指を自分の口の前に置きミーナという者にそう言ったあと突然俺を強く抱きしめた


「えっ……」


俺はびっくりしてアルテミスから離れようとしたが、アルテミスは俺を強く抱きしめたまま、俺のひたいに自分のひたいを押し付けてきた


次の瞬間……


アルテミスのティアラが光り出した


「あっ……」


俺はものすごい勢いでブルームーンストーンが散りばめられているティアラに魔力を吸い取られ、奪われていくのが分かった


だが突然美しいアルテミスに強く抱きしめられ、油断していた俺がそれに気づいた時はすでに遅かった


俺の魔力はあっという間に完全に奪われてしまった……体に力が入らない……


アルテミスは俺をそっと地面に寝かせると俺に覆い被さるような姿勢で言った


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


俺がアルテミスを見ると、アルテミスの目は熱い目と冷たい目を交互に繰り返しながら俺を見ていた……






アルテミスは立ち上がるとミーナに言った


ミーナとは可愛いうさぎの獣人だった


「ミーナ……テレポートする瞬間、大きな音に驚いたせいか、テレポート地点がズレたの……アルテミス神殿にテレポートするはずだったんだけど……ここ、ムーンに来てしまった……」






その時光り輝くオーラと共に太陽神アポロンがやって来た


「あっ、お兄様……」


「ん? アルテミス、なぜここに?」


俺は何とか声を絞り出した


「お前は誰だ……」


すると太陽神アポロンは言った


「ああ……貴様が魔界の皇帝ルキフェルか……まあ、そうだな、教えてやろう……ここはアルテミス神殿と通じている異空間ムーンと呼ばれている場所だ……アルテミス神殿がある世界の1階層上にあって、月の女神アルテミスが月の女神と呼ばれるゆえんたる場所だよ……そして、私の悪魔一掃計画の為のアポロン軍が駐留する秘密結社ムーンの本部でもあるのだよ……まあ、ここは貴様に見せる予定はなかったのだが、見られた以上貴様を始末するしかなくなったようだな……まあ、どのみち始末する予定だったのだがな……」


「えっ!! お兄様……始末って? ルキさんを殺すってこと? それは私は聞かされてないわよ!!!!」


「どうした、アルテミス……そんなにムキになって……いいじゃないか……ルキフェルは1年前に魔界に堕ちてからあっという間に魔界を統一し魔界の皇帝に上り詰めてしまった天界にとっての厄介者だ……そのルキフェルを始末し秘密結社ムーンに集結したみんなで魔界を制圧すれば世のためになるというものだ」


「えっ、魔界を制圧? 待ってお兄様……それも私は聞かされてないわよ! お願い、全てを中止にして!!!!」


「もう、遅いのだよ、アルテミス……さいは投げられたのだ」


「この事はヘラ様はご存知なの?」


「いや……ヘラ様には事後報告になるが……まあ、説明すれば、分かってもらえるさ」


「そんな事ないわ! きっとヘラ様はお怒りになりお兄様は罰を受けることになるわ!」


「もうよい……時間がないのだ、とっととルキフェルを始末して魔界に行って魔族どもを根絶やしにしてやる!」






その時、可愛いうさぎの獣人ミーナがものすごい勢いで走ってきて太陽神アポロンの前にひざまづき言った


「大変です! サタンが……魔界の女王チホリリスの引退した親である、あの大悪魔サタンが今旅から魔界へ戻ってきたとのことです!」


「な、なんだと……あの大悪魔サタンが……」






「くそっ!! 中止だ……今すぐ皆に伝えるのだ!!!!」


「ハッ!!!!」






「ではルキフェルを始末するか……」






太陽神アポロンが俺に近づいてくる……


だが月の女神アルテミスが太陽神アポロンの前に両手を広げ立ち塞がった


「お兄様……ルキさんは殺させない……」


「アルテミス!! そこをどけ!!」


「いえ、どかない!! もし殺すならこの事をヘラ様に全てお伝えするわ!!」


「なんだと!! だがどうする!! ルキフェルにこのムーンの存在が知られたのだぞ……もし、ルキフェルを逃がせば、じきに魔界にもムーンの存在が伝わりルキフェルを先頭に魔族が攻めて来るんだぞ!!」


「そ、それは……そうよ! そうだわ! お兄様……私がルキさんの魔界の記憶を消した上でそばに置いて見張るわ!」


「はっ? アルテミス……自分が何を言ってるのか分かっているのか? そいつは魔界の皇帝なんだぞ! 今後どんな災いをもたらすか……」


「分かってる……でも私はルキさん……いえ、ルキが欲しいの……お兄様……あることないこと、ヘラ様に話してもいいの? 私がオリンポス12神の中でも1番ヘラ様に可愛がられてることは知っているでしょ!!」


「うっ……アルテミス……もういい!! 好きにしろ!!!! 但し、後のことは全て責任を持てよ!!!! 私はオリンポスへ帰る!!!!」






月の女神アルテミスは俺の目の前に来ると言った


「ごめんなさい……兄を許して……」






アルテミスは俺を抱きしめると俺にキスをした……


ビクッ……ウグッ……


俺はだんだん頭に魔界の映像が溢れ出ては消えていくようなそんな感覚に陥った


(ルキ……あなたは私のものにするわ……あった! ちょうど1年前、大天使ルキフェルが天界から追放を言い渡された瞬間だわ……ルキ……この後の記憶を消させてもらうわね……)






俺は気づくとベッドの上にいた……





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