あきらかに
もうずっと、外に出ていない。
今の時代、家の中に居ても事足りるからだ。
アラタさんに言わせるとそれは良くないことらしい。
彼は良くないこととはっきり明言しておきながら、どこか軽やかな口調だった。まるで、振り返ってほっぺたをつんと指差すいたずらを咎めるみたいに。
「植木さんは生きていないのと一緒ですよ、だって誰にも知られてないんだから」
そんなの辛辣過ぎやしないか。アラタさんとは、このときが初対面だった。友達のまきちゃんの彼氏のアラタさん。美容師をやっているので、まきちゃんのいうわたしのちんちくりんな髪の毛をなんとかしてくれるためにやってきた。
「わたしは生きているわ」
腹が立って、棘のある言い方になった。わたしが生きているということは、わたしの家族もまきちゃんも、ここに来たアラタさんも知っている。
「証明できますか?」
「証明?」
「ぼくは美容師の免許を持っていて、美容室で働いていて、まきちゃんの彼氏です」
「そんなのわかってる」
「あなたは何ですか?」
わたし?わたしは。