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最終章です。

完結まで毎日投稿します。

「さて、こう顔を合わせるのは随分と久々な気がするな」


 深夜、レイルの僅かに震える声が僕の寮室に響く。

 その声からわかるように彼は少し緊張している。


 巧く取り繕おうとしているものの、いつも一緒にいたメンツにはなんとなくわかってしまう。

 集まっているのはいつものメンバーにセバスを加えた五名。


 狙ったか否かはわからないが、クルーガーとギルメッシュはほとんど同じタイミングで学院についていた。

 着いた時間は学院の講義が終わった後。

 寮の門限ギリギリだったため、結果はこの時間帯にしようと決まった。


 ギルメッシュはらしくないレイルを見る。指先で髪の毛を少し掻く。

 

「レイルがこんな緊張してんの珍しいな。明日雪でも降るんじゃねえの?」


 ギルメッシュ様子を窺いながら言葉をかけた。少し茶々を入れることで本調子のレイルに戻そうとしたのだ。

 レイルは大きく呼吸した。


「さぁ。私はいつも通りに接しているつもりだったんだが……どうもダメらしい。息が詰まりそうだ」

「ま、無理ないですもんね。デートの日は明日でろくに打ち合わせがほとんど出来ませんでしたからね。私はなんとかなると思いますよ。人材と情報はある程度事前に調べてありますから」

「俺も人手だけなら貸せるぜ?兄貴と兄貴の隊員たちと少し話したんだけどよ。ブランデーただでやる約束したらみんなやる気でよ。休み返上して手伝うとか言ってたな」


 弱気な言葉をこぼしたレイルにクルーガーとギルメッシュは報告も兼ねて安心される。

 少し話の進行が遅いな。

 いつもなら、レイルが話の中で必要な情報を他の人に言わせ情報共有しながら進行するのに。


 ……いや、そんなことより。


「……少し気になることがあるんだけど」

「ん?どした?」

「ブランデーをタダであげるとかなんとか」

「そうそう。近衛騎士動かすのにブランデー1人一本支給することになったんだ」

「……僕何も聞いてないんだけど」


 これは事後報告ってやつかな。

 そんな軽いノリでいうのやめて欲しいんだけど。まずは詫び入れないのはどうかと思う。


 僕はどういうことだと意味を込めてギルメッシュを凝視する。


「いや、悪いとは思ってる。だが、なんの確証もない絵空事みたいなことに協力してもらうには酒しかなかったんだ」

「お金を積めばよかったのでは?」

「兄貴の率いてる隊はちょっと特殊でな。あいつらは金や正義感だとか義理人情じゃ動かない。……奴らは酒に飢えていた。ブランデーを餌にすりゃ喜んで協力するとさ」


 騎士なんだから義理人情で動くべきでは?

 一応王族を守る存在なんだからさ。


 ……ギルメッシュの兄貴ってそんなに怖い人なのか?

 天才だとか、分隊長やってることは知ってたけどまさか問題児の集まりなのか?


 はぁ……近衛騎士の伝手も必要だし、武力がなきゃいけないし、仕方ない。


「……わかった酒蔵から人数分渡すよ。後で必要な本数教えて」

「おう、悪りぃなぁ」


 絶対反省してないなこれ。

 まぁ、いいだろう。ギルメッシュの伝手がないと騎士の手を借りることもできなかったし。酒蔵庫も余分に確保してあるし大丈夫だろう。


 茶化しや雑談の中で報告を済ませる。その後、レイルは胸に手を当て大きく深呼吸する。


「……感謝する。お前たちのおかげでどうにかなりそうだ」


 断言しないあたり少し不確定要素があるのか?

 確かに数日夜通しで動いているようだし、このままでは倒れてしまうかもしれない。

 普段通りでないのも睡眠をしっかり取れていないから。


「レイル、あとは僕の方から説明しておくから休んでくれ」

「……だが」


 何回か打ち合わせしたし、大丈夫だろうと判断する。

 明日のフローラたちとのカフェデートでは実際僕の働きが重要になってくる。


 レイルは眉を顰める。


「少しは信用してくれ。明日は実質僕だけが重要になってくるわけだし、詳細は僕の方からでも大丈夫だよ。このまま行くと君倒れるよ?責任者が倒れるのはどうかと思うよ?」

「……お言葉に甘えよう。少し休ませてもらう」


 渋々首を縦に振ったと言うところだろう。だが、実際に後日情報のすり合わせをすればいいことだ。


 レイルはセバスさんを連れて自室に戻った。

 彼が退室したのを確認すると、出してあったティーカップの茶を飲みながらギルメッシュは言葉をかけてくる。


「あそこまで疲労しているのは初めて見るな」

「ええ、そうですね。……レイルさんに比べてアレンさんは元気そうですね」 

「……いや、比べる対象がおかしいから」


 クルーガーは同意をしつつ、何故か僕に皮肉を言ってくる。

 ふざけているわけではないので、おそらくレイルが何をしているのかを聞いているのだろう。


「レイルにしか出来ないことをしているんだ。……王族直属暗部を指揮している」

「「……は?」」


 二人は目が点になった。


「すまん、今なんつった?」

「……聞き間違いでなければ……今暗部と言いましたか?」


 我に戻ったギルメッシュとクルーガーはそれぞれ確認してくる。

 王族直属暗部は王族の懐刀だ。

 王族が指揮して国を影から支える存在。まさか、そんな存在が動いているということはそれほど大事ということ。だから、驚いているのだろう。

 レイルから事前に許可を得ている。詳細を説明をする。


「僕も聞かされた時に驚いたさ。……だが、レイルが国王陛下に書面で許可をえた。早くことを済ませたいかららしい。あ、ちなみにセバスさんは暗部の筆頭らしいよ」


 セバスさんが暗部って聞いた時納得した。

 初対面の時、身のこなしが少し怪しかった。普段から足音を立てない歩き方が癖になってる人なんてそういない。

 聞いた時、なるほどと納得できた。


 レイルがパトラス侯爵家に来た時からセバスさんはレイルを守るために国王からそのように指示された。セバスさんは今までレイルを陰から支えていたんだ。


「それを踏まえて説明しようか」


 二人に説明を始めた。


最後まで読んでくださりありがとうございました。


少しでも面白かった、続きが気になると思っていただけましたらブックマークの登録、評価頂けたらと思います。


評価ポイントは作者のモチベーションになります。

よろしくお願いします。

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