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 アリスとアレイシアの友人関係が成立し、僕たちは急ぎ教室へ戻った。教室ではすでに今後の説明は終了していて、解散寸前であった。

 

 入った瞬間皆から奇異の視線に晒される。

 ある程度わかってはいた。女二人を連れて教室を急に抜け出すだけでも悪目立ちするのに、アリスの問題行動があった後だし。


「お騒がせして申し訳ありませんでした!」


 皆の視線が刺さる中、まず謝罪したのはアリスだった。


「実はアレン様は世間知らずの私を心配してくださったんです。思い出すは入学式の1月前……アレン様に王都に来て日も浅く右も左もわからない時に助けていただきました。その時はお礼も言えませんでした。私は平民です。その境遇に不安で押しつぶされそうになったとき、クラスへ入るとアレン様を見つけました。私は緊張ゆえ数々の問題行動を起こしてしまい、それを咎めるため、連れ出して下さった」


 ……クラスの雰囲気が良い方向になったか?

 この場を収めるため、僕を庇うための発言。前世を持っているため、精神的には大人なのだろうな。


「お騒がせして申し訳ありません。まだ不出来な身ではありますが、支えてくれると嬉しいです」

『ドクン…ドクン…ドクン』


 だが、緊張しているのは確かだ。

 鼓動は僅かに早くなっている。不安もあるのだろうな。


 だが、アリスの謝罪は届くことはない。むしろクラスの連中は良い顔をしない。


『あれだけのことを起こしておいて、ないわ』

『そうそう、それに平民の分際で何よあの態度』


『色々大変そうだな』

『特待生と言っても所詮は平民だしな。気にしたらキリなさそうだな』


『ちょっとあの態度むかつかない?なんか上から目線で』

『確かにそうだな』


 聞き取れる範囲でも気に入らないという意見がほとんど。


 学園は身分統一を公言しているが、それを忠実に守っている人はいない。暗黙の了解というやつで、身分の差ははっきりとしている。

 今後のため少しフォローしておくか。

 

「先ほどはお騒がせして申し訳ない。だけど、可能ならフォローして欲しい。彼女は僕たちの友人だからね」


 ーーザワ


 クラスはざわめきが増す。  

 これでソブール公爵家の令嬢に平民のアリスは保護されていると解釈した。


 結果はどうあれ当初の目的は完遂した。

 アリスの正体把握に保護。

 レイルから言われていたことも達成したわけで。

 これでアリスは特待生だからといじめられることはないだろう。

 皆アリスに手を出すとソブール公爵家を敵に回すことになると解釈した。


「話はすみましたか?なら、席に座りなさい」

「……はい」


 担任の先生はかなりのお怒りのようだ。

 話がまとまるまで待ってくれたが、指摘を受けたので座る。


「ユベールさん、先ほど今後の流れについての説明は終えました。2度もいうのは手間がかかります……そうですね……」


 僕たちが席につくと担任はクラスを見渡し始める。

 ……おそらく、僕たちに説明をする人を探しているんだろうな。

 だが、面倒なようでクラスメイトたちは視線を合わせないようにしていた。

 僕たちと面と向かって話したくない連中が多いためだ。


「クルーガー……ウォーウルフに後ほど聞きます」

「ということです。ウォーウルフさん。よろしくお願いします」

「……承りました」


 どうせ後でレイルたちと話すことになるだろう。

 なら、こういう形で終わらせるのがベストだ。

 ふと、クルーガーに視線を向けるとやれやれっと言わんばかりのため息をしていた。


 悪かったって。


「色々想定外のことが起きましたが……本日は解散となります。明日からエルス学園の生徒としての自覚を持って学業に勤しんでください」


 だから僕を見ながら言わないでくださいよ先生。もう気をつけますから。


 僕だって問題起こしたいわけじゃないんですよ。


 その内心の言い訳は先生には届くことはない。今後は気をつければ良いと思ったが。

 生徒一人一人の過去はある程度学園側に伝わっているとレイルが言っていた。

 僕は問題児として少し警戒されているのかもしれない。実際に入学式当日に問題を起こしたわけだが。


 少し自重をしたいと思うが、僕から問題に突っ込んでいるのではなく、別方向から来ているので気をつけようもないが。


 可能な限り自重しよう、内心決めたのだった。

 その決心は長くは続かないであろうと思う。


「さ、アレンきゅん……詳しいお話聞かせてください。レイルさんがサロンを予約しているそうです」

「……わかったよ」


 解散した後、すぐにクルーガーが席に寄ってくる。

 この意図的に言っているであろう言葉……口元を隠しながら言ってるあたりからかってやがる。


 この前世での男子高校生のノリ。

 後で散々揶揄われるなぁ。

 

「アレイシア様と……アリスさんもご一緒いいですか?」

「はい。喜んでご一緒させていただきます」

「わかりました!」


 多分事情説明を二人にも聞くつもりなのだろう。

 クルーガーは僕の隣席のアレイシアと、いつのまにか近くにいたアリスに声をかけていた。

 

 その後、レイルとギルメッシュと合流した。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。


次は日曜日に更新予定です。

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