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 レイルからの話の内容はある程度予想できたこと、そうでないことが起きた。


 まず、一つ目の内容は乙女ゲーではあり得ないことだった。

 乙女ゲームの主人公はシンデレラストーリーのような形で平民から突然自分の出自を聞かされ貴族となる。

 だが、平民が特待生で入学するなんて話は聞いたことがない。

 レイルがこの話をした理由は様子見して可能ならば囲いたいとのことだった。

 優秀な人材は放っておけないらしい。


 僕は新たな悩みに今後の振る舞いをどうすべきか考えていた。


 平民の少女、アリスは才女らしい。

 

 アリスの存在でいくつか思いつく有力な推察は二つ。

 一つは僕と同じ前世持ち。

 これが一番だろう。

 乙女ゲームの情報を持っている可能性。

 平民が受けられる教育は貴族のものとはレベルが違う。

 平民は前世の日本でいう小学校くらいまで。

 基本の算術や経済や歴史を学ぶ。その内容だけで特待生になるのは難しいだろう。


 やはり前世があると考えた方が良い。

 


 あと有り得る可能性はバタフライエフェクトによるものだ。


 僕がこの世界に干渉をしたから。


 ……もしかしたら、乙女ゲーム「夢ファン」の続編の可能性もある。

 でも、時期が重なるのはおかしい。続編といえど今の僕たちが卒業した後の世界にしないとおかしい。


 ……アリスに関しては観察が必要だと結論づけた。


「特待生については様子を見てからにしたほうが良いだろう。問題なのは次の件だ。エルス学園は爆弾を抱えている状態だ」


 レイルは珍しくため息をしていた。

 まぁ、何となく予想がつく。


 乙女ゲームの主人公、フローラ=メーデン男爵令嬢についてだった。

 フローラはおそらく転生者だ。


 話の内容は面倒の一言に尽きる。


 ……アドリアンとオーラスが攻略され常日頃から一緒にいるらしい。

 そのことを聞かされたギルメッシュとクルーガーは驚きを隠せなかった。

 

 アドリアンならともかくオーラスが誑かされるのはおかしいと思ったからだ。 

 僕もそうだ。オーラスとは少なからずパーティで交流があった。

 秀才で真面目な彼なら攻略されることはないと踏んでいた。

 特にハーレムルートを目指すようなフローラに引っかかるようには思えなかった。


 少しフローラの出自について語ると、フローラの場合はもともとメーデン男爵家の血縁関係にありメーデン男爵家に引きとられ、エルス学園に入学をした。


 乙女ゲームの主人公のフローラは平凡だが、ゲームを進行させることでステータスを上げることができる。

 

 レイルの話では学ぶ意欲がなく、常にアドリアンとオーラスと一緒にいるから教師陣も手を出すことが出来ずにいるとか。


 ……あ、絶対僕のところにも来るパターンだ。

 

「面倒ごとをこれ以上増やさないで欲しいものだ。……オーラスもそれなりに評価していたがな」


 レイルは全てを語り終え、大きくため息をした。

 乙女ゲームのシナリオ通りになってしまっている。

 フローラはこの国の現状をわかってやっているだろうか?

 いや、無理そうだよな。なんせ元平民から貴族になってすぐ学園に入学したのだから。それでも、二人同時に貴族のトップを攻略する時点で感性がおかしいのだが。


 転生者でもまともな感性を持ち合わせている人ならこんなことしないだろうな。


「はぁ……この国の先が思いやられますね」

「学園行く気失せるな……俺らには関係なさそうだが」


 クルーガーとギルメッシュはフローラのことを言っているのだろう。


「二人とも思考がマイナスになってるよ。もっと楽しいこと考えなきゃ」

「例えば?あのわがまま王子と過ごすのはごめん被りたいが?」

「トラブルしか思いつきませんが」


 もう不敬とか気にしないギルメッシュとクルーガーの二人。

 人目がないからって気を抜きすぎな気がする。

 だが、実際その通りなので何も返せる言葉がない。


「僕の場合はアレイシアと全寮制だからほぼ毎日会えることかな」

「自分のことだけだな。お前らしいが」

「はいはい、3人ともそこまでだ。私たちしかいないからって気を抜くのは良くない」


 まぁ、最終的にレイルが僕たちの愚痴を咎める形で終了する。 

 ま、これもいつものことだけどな。


「面倒ごとに発展する可能性は捨てきれない。だが、ここにいるメンバーで入学できるんだ。少なくとも退屈はしなさそうだと私は思うが?」


 レイルは話の終着点をつくのが上手い。 

 その言葉に僕を含めたみんな目を見合わせて頷いた。


 今日はこれ以上の話はなかった。

 少しだけ雑談をしてお茶会は終わった。


 だが、先が思いやられる。とにかく乙女ゲームの主人公は無視。

 関わらないのが一番だ。


 アレイシアに心配をかけたくない。

 それに、特待生も気になる。何も起こさないでくれよ本当に。


 僕は学園生活は平穏を望んでいる。問題なく、僕を放っておいてほしい。そう淡い期待をするのだった。


 だが、その淡い期待も叶わた願いだと気がついたのはエルス学園に入学した後だった。

 

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントはモチベーションになります。


よろしくお願いいたします。


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