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 アドリアンの発言からお茶会が始まり、会場にいる者達、特に王族派の人たちは我先にと列へ並び始めた。


 アドリアンはクリスタのことを溺愛している。このことは事前に知っていたので、こんなに必死になっているということはクリスタとあわよければと関係を結ぶのに必死だ。

 僕もすぐに挨拶へ行くべきなのだろうけど、アレイシアが心配なので、列がすいてから行こうと思う。

 レイル達も同じ考えらしい。

 一つ気になることがあるので、レイルに聞いてみるか。


「レイル、クリスタ殿下はこのようなお茶会に参加するのは何度かあるのか?」

「いや、私が記憶している限り今回が初めてだな」


 内容はクリスタについて。

 なるほど。初めてだからこの反応か。

 誰だって王族と関係を持ちたがる。


 男ならクリスタと婚約できれば王族と親戚になれる。

 将来、権力が確立される。

 女ならば友人となれば社交界の地位が手に入る。


 今も一番に並んでいる人が挨拶と自己紹介の後自分の領地の自慢ばかりして猛アピールしている。

 必死だなぁと、なんとなくアドリアン達の会話を聞いているとーー。


『そ…そうなんですね。……あはは』


 ーーガヤガヤとする会場に可愛らしい声がする。

 アレイシアが凛とした声ならば真逆だろう。

 だが、この子も歳の割にしっかりと受け答えをしているようだ。

 気を遣っていることに気がつかないとは……。仲良くしたいなら自分よりも相手の気持ちを汲むことが大切なのに。


「わかりやすく落ち込んでるなぁ」

「ギルメッシュさん、見たことをすぐに口に出すのはよくないかと」

「これからあそこに行かなきゃいけないんだぜ?……面倒かと思わないのかよ」

「……まぁ、どうせ私は相手にさえされないので……面倒ではありますね」

「二人ともどこに聞き耳立ててるかわからないんだよ」


 そして、挨拶が終わった子供があからさまに肩を落としてトボトボと歩いている光景を見てコソコソ話すギルメッシュとクルーガー、それを指摘するレイル。

 この場ではアドリアンに気に入られるかが肝になる。大体の人がアドリアンからあからさますぎるアピールの途中に遮られている。

 

「どうしたんだよ、さっきから黙って……もしかして王女様が気になるのか?」


 目の前で起こっている光景に呆れていたのだが、ギルメッシュに指摘されてしまった。


「否定はしないよ。……なんーー」

「アレン様も……気になるのですか?」


 なんせ下心丸出しの連中に言い寄られて可哀想だと思った……なんとなく質問に答えるつもりだったのだが、そばにいたアレイシアから突然の質問された。

 僕は少し反応に遅れる。

 先ほど黙り込んでしまったアレイシアから小声で言われたからだ。


「……気になると言ってもクリスタ殿下の様子が気になるだけですよ」


 下心丸出しの相手に愛想笑いをしたり、社交界デビューしてないのにしっかりと受け答えしている部分とかが。


 まぁ、クリスタがせっかく相手が気が付かないように気を使って受け答えしているのに最終的にアドリアンが気に入らないと判断したら「次のやつ」……みたいな感じで会話が打ち切っているので挨拶した人は気分を悪くしている。

 

 そんなアドリアンと猛アピールしている人たちに板挟みになっているクリスタが可哀想だと思った。


 それにアドリアンはドンドン不機嫌になって行く。

 妹に言い寄られるのがそんなに嫌ならクリスタを連れてこなければよかったのにと呆れていたりもする。


 

 本当にクリスタは可哀想だ。

 社交界デビューする前に悪い噂が流れてもおかしくない。

 

 アドリアンはその辺りを気にしていない。

 まったく、妹自慢したいなら言い寄ってくる相手がいるくらい予想できなかったのかよ……お茶会開始挨拶といい、後先考えない愚行といいどうにかならないのか。


 まぁ、いっときユベール伯爵家を社交界から孤立させてしまっている僕が言える立場ではないが。


『ドッ…ドッ…ドッ』

「アレイシア嬢?」


 アレイシアは僕の発言のあと、また黙り込んでしまった。


 何か気に触ることを言っただろうか?

 いや、返答は至って普通だと思うが。


「では、私たちは先に行く。しばらく時間が経ったらくるといい。どうせ挨拶と自己紹介をして終わる。後アレン、君の場合は皮肉を言われるだろうから聞き流すようにな」

「あーあめんどうくせぇ」

「私もお先に行きます」


 少し気まずくなってしまった僕とアレイシアに気を遣ってか、レイル達は先に挨拶に向かった。

 それにしてもレイルの助言に反応が困るが、僕はいまだに社交界では黒い噂があるから仕方ないのか。

 なら、一緒に行ってくれよと思ったが、多分レイルは気遣ってくれたのだろう。

 

 僕とアレイシアだけにしてくれた。


 レイル達は列に移動した。

 だが、せっかく気遣ってくれてもなんと声をかければ良いのか分からずお互いに黙ってしまう。

 レイル達が移動して数分、僕はアレイシアに話しかけた。


「あの…どうかされたんですか?気分がよろしくないのでしたら一度席を外されたほうが」

「ご心配していただかなくても大丈夫ですわ。……あ……本当に大丈夫です。……ご挨拶に参らねばいけませんので」


 アレイシアはハキハキと否定はしたが、明らかに様子がおかしい。今までにも似たような言動があったけど。

 

 

 アレイシアは僕の返答を待たずに列へ向かってしまった。

 僕はどうすれば良いかわからず、彼女の後を追うのだった。



最後まで読んでくださりありがとうございました。


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


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よろしくお願いいたします。

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