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 母上とのお茶会の目的は所作の練習にもなる。

 まだ5歳とはいえ、積み重ねは大切だ。この世界の貴族はお披露目会が終わった後、交流会やお茶会が執り行われる。


 所作の一つ一つの機微がしっかりしていないと恥だとまで言っている人もいる。


 だから、予行練習も兼ねて母上と定期的なお茶会を繰り返す。


「上出来ね」

「はい、これも母上の指導のおかげです」 


 母上との談話を続けながらお茶を飲む。

 紅茶の飲み方はもう慣れた。

 特に難しいことはない。

 基本的なことはカップは右手で取手はつまんで持つ、飲む時はカップを傾けて飲む、茶菓子などは食べる時は左手でなければいけない。

 これさえ守れば基本は大丈夫。


 僕は一番初めに指摘されたのはカップの取手の持ち方だ。指を入れて持ってしまったので、少し怒られてしまった。


 あとは、テーブルの高さによってソーサーの扱い方も変わってくる。

 テーブルが下腹部より下ならソーサーは持ち、上ならテーブルに置いたままにする。


 細かいルールがあり、前世では意識してなかった。


 どこの家もそうだか知らないけど、お茶の作法指導は基本母親がやるらしい。

 お茶会の予行練習も含まれているので、貴族デビューのお披露目会まで5年、時間をかけて訓練をしていくそうだ。


 3歳の時にウェルに何故教えなかったと聞いたことがあるが「奥様の楽しみを奪うわけには行きませんので」と言われた。


「私もここ数年食べてないわね」

「僕も母上の話を聞き、食べてみたいと思いました」


 話は海鮮について。

 やはり母上との会話内容は基本は海やオーシャン帝国について話すことが多い。

 相手が話しやすい内容というのもそうだが、異国の人との会話の内容から相手方の情報収入の目的もある。

 自分のことも話すのだが、雑談の中にも貴族付き合いのため話すことが多い。


 今は話していて楽しいからいいのだが、貴族同士の付き合いは面倒くさいのだと思った。

 体裁を整え、相手に気を遣い合う。面倒くさそう。


「母上と父上は異国で出会ったんでしたよね」

「ええ、よく覚えていたわね」

「いえ、何回も聞いた話でしたので、自然に覚えてしまったのです」

「あら、ごめんなさいね」


 母上の惚気話は耳にタコができるほど聞かされた。

 おかげで婚約した時のセリフも暗記している。

 母上は父上のことが大好きすぎる。夫婦円満は良いことだが、話しすぎるのもどうかと思われる。

 父上も息子に出会ってから婚約に至るまでの馴れ初めを全て知られていると知ったらどんな顔をするだろう。


 母上と父上はこの世界ではだいぶ遅い婚約となった。

 前にも言ったが、この世界では大体10歳のお披露目会あたりで婚約が決まりはじめる?


 母上は運命だからといっていたが、今の父上と母上を見る限りあながち間違いではないのかもしれない。


「僕の婚約者はどのような方になるのか楽しみです」

「そうねぇ。……アレンはどういう子だと嬉しい?」


 婚約についての流れになったので、僕も気になり聞いてみる。

 いや、別に他意はない、純粋な質問だ。家によっては生まれる前から婚約が決まっている可能性もある。

 もしかしたらぼろっと何か言ってくれるかもしれないし。

 少し鎌をかけるのもいいかもしれない。


「そうですね。母上のような方がいいです」


 遠回しにアレイシアとは真逆の人という意味。


 もしも、アレイシアとの婚約がすでに決まっていて、僕が求める理想像が違かった場合、母上はどんな反応をするのか、聞いてみたのだが。


「もう!アレンったら……私とは結婚できないわよ!」


 いや、そういうことを言ったんじゃないです母上。

 僕の言い方も悪かったかもしれない。


 その後も婚約の話をしても母上はアレイシアの情報は一切話さなかった。

 いや「将来お母さんと結婚する!」という子供の戯言だと捉えられてしまった。

 

 母上とのお茶会が終わると次はシンの元へ向かった。

 

 仕事の見学をしつつ、ウェルに手伝ってもらう。

 シンも休憩はとっているものの、仕事疲れはある。少しでも休んでもらいたいと思ったからだ。

 

 今日も一日平和に終わったと思っていたのも束の間、夕方暗い顔をした父上が帰還された。



 


最後まで読んでくださりありがとうございました。


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントはモチベーションになります。


よろしくお願いいたします。

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