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盲目



秀と登校するのはいつぶりだろうか。俺が中学に入ってからは別々で登校してたっけ。

中学の通学路と小学校の通学路はバス停まではほとんど一緒だけどなんとなく秀と登校するのが恥ずかしくて「一緒に行こ」って誘われても「嫌だ」って言って断ったなぁ。

俺がそう言っても秀は一緒に行きたいから

偶に時間を見計らってたまたま一緒の時間に家から出るふうに装ったりもしていた。


「兄さん、何をボーッとしてるの?もしかしてさっきのことまだ気にしてるの」


昔は俺について行ってばかりの可愛い弟はいつのまにか俺に追いつくどころか俺を追い越してしまった。


「いや、そんなまさか。あんなのいつものことだよ」

「兄さん、あれに慣れちゃいけないよ。もし辛いことがあったらいつでも僕に言ってね」


そう言う弟の顔は真剣だった。


「あぁ、ありがとう。いつでも頼らせてもらうよ」


俺がお前を頼ることなんて万にひとつもあり得ない話だ。


「あれじゃなかったら兄さんは何でボーッとしていたの?」

「昔の秀は可愛かったなってことだよ」


そう言うと秀は少しムッとした。


「何、今の僕は可愛くないの?」

「そうだなぁ、今のお前はどちらかと言うと逞しいだろ」

「え、そう?いやー照れるなー」


そうやって褒められたら調子に乗る点は昔から変わらないなと思った。


「僕は兄さんに感謝しているんだよ。多分兄さんがいなかったらこんなふうには育っていなかったよ」


俺もだよ、俺もお前がいなければこんなふうに育たなかったよ。


「そうか、そう言ってもらえると嬉しいよ」

「だからさ兄さんはもっと自信を持っていいと思うよ。僕は誰よりも兄さんを尊敬してるから」


秀は恥ずかしさを誤魔化すように笑顔で言った。きっとすごく良いことを言っているのはわかる、わかるが俺には同情しているようにしか聞こえない。


「それは、同情か?」

「え?」


秀は驚いた顔をした。


「ち、違うよ兄さん、僕は本心を言っただけだよ」


秀は慌てた様子だった。


「そ、そうだよな。ごめん変なこと聞いて。今のは忘れてくれ」


どうして俺を尊敬するのだろうか?俺がお前に勝てないことに同情して?それとも父さんは認めないけどせめて僕だけは兄さんを認めているよっていう情けか?

わからない。俺を尊敬する要素がわからない。


「あ、ちょうどバスが来ているよ」

「そうだな」


俺たちはバスに乗って、最寄りのバス停で降りて2人で雑談をしながら学校に行った。


「じゃ、兄さん僕はこっちだから。ばいばい」


秀は手を振りながら一年の下駄箱に走って行く。


「じゃーなー」


俺はそれに答えて振り返す。

そして授業が始まった。

3限の授業までは特に何事もなかったが3限後の休み時間に次の体育をどうするか考えた。今日からの体育は確かハンドボールだった。一旦確認のため腕を回したりして色々と動かすと結構痛い。

この腕でハンドボールは厳しいと考え俺は見学することにした。見学のことを先生に言いに行くために職員室に向かった。職員室は一階にあるのでここから少し離れている。

一階まで階段を降りていつも使う下駄箱の前を通って一際暗く、狭い廊下を進んで職員室に到着した。


「失礼します」


職員室では先生同士で話していたり、パソコンで何かを打ち込んでいたり、生徒と何か話していたりと色々な人がいた。

俺は周りを見渡して、体育の先生を見つけた。先生は何やら女生徒と話していた。

とりあえず、俺は先生と話したいので女性徒の後ろに並んだ。


「あの、先生もう私は耐えられません。どうにかしてください」

「わかった。先生から校長に伝えておくよ。校長に伝わったらすぐに学校が動くから申し訳ないがそれまで待っていてくれ」


彼女も先生も声は真剣な感じだった。しかし彼女の真剣な目に対して先生の目は無気力だった。


「わかりました。お願いします」


そう言って彼女は振り返った。振り返って見れた彼女の容姿は美しかった。

まるで全ての光を飲み込むかのような黒とダイヤモンドのように眩しい艶を持つロングヘアそして燃えるように煌めく赤い若干吊り目気味な女性がそこにいた。ただただ美しいそれに尽きる。俺が彼女に見惚れてボーッとしてると


「おい、剣城何してるんだ?」


先生の声で我に帰る。


「あ、すいません。あの今日の体育なんですけど少し腕をやってしまって見学します」

「腕をか大丈夫なのか?」

「そこまで大きな怪我ではないですけど動かすと痛むので」

「わかった。じゃあ活動記録を渡すから授業後に出して」


先生は机の引き出しから紙を出す。


「ほい、じゃあお大事にな」

「ありがとうございます」


そして職員室を出て教室へと帰る。

一年の教室がある階に上ると聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ごめん、今日は部活があって遊べないんだ」

「まじかー、でもしょうがないよな大会近いし頑張れよ。秀作」

「また今度誘ってよ」


秀が4人の生徒と一緒楽しそうに歩いている。俺とは全くの逆の光景だ。集団の足音はこちらに向かっているようなので俺は逃げるように階段を上った。

そして体育を終え、昼飯を食べて、5、6限を越えて放課後になった。






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