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目の上のたんこぶ



スマホのアラームで目を覚ます。

体を起こそうと手を布団につけた。


「痛っ!」


昨日の練習で腕がかなりひどい筋肉痛になっていた。

腕が使わずに立ってカーテンを開ける。

窓から刺す太陽の光が僕の目を焼く。


「今日の体育は見学かな」


そして部屋を出て階段を降りて玄関側の和室に向かった。階段を降りている時和室からおそらく秀と思われる声が聞こえてきた。

キッチンから美味しそうな匂いがした。


「あぁ、そういえば今日は三葉さんがいる日か」


三葉さんに挨拶に行くために先にキッチンに行くことにした。


「おはようございます。三葉さん」


俺の声に気づいて三葉さんは振り向いた。

パーマのかかった茶髪をしていて優しい顔立ちでエプロンを纏った姿は母さんと大差ないやはり母さんの双子の妹というだけはある。


「拙くん、おはよう。もうすぐご飯出来るから少し待ってて」

「はい、いつもありがとうございます」


キッチンついでに奥の洗面台で顔を洗うついでに今日の朝食を見ると卵焼きと味噌汁、焼き魚に白米だった。


「今日も美味しそうですね」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


三葉さんは笑顔でそう答えた。

そして俺は洗面所で顔を洗う。

水で濡れた顔を拭いて鏡を見るとそこには寝癖のひどい黒髪といつからかずっと消えないくまを持つ顔がいた。


「今日も顔色は悪いと」


いつも通りの自分を確認して和室に向かう。

キッチンには朝食の残り香だけが残っていた。


「タイミングいいな」


和室の扉を開けると自分の正面には父さんが左側に秀が右側に三葉さんがいた。


「兄さん……おはよう」


秀はあまり寝てないのか気だるげに顔を上げてあくびをした。


「秀、父さん、おはよう」

「………」


父さんはこちらに目もくれず箸を動かしている。それを見て父さん以外の2人がムッとしたような顔をした。


「ちょっと父さん、兄さんにおはようぐらい言いなよ」

「そうよ、さっき秀くんには言ってたのに拙くんには言わないのはおかしいんじゃないの」


2人に言われても父さんは顔色を変えず俺に挨拶を返さない、それどころか


「お前らはいきなり赤の他人に挨拶されたら返そうと思うか?」

「父さんそれはいくら何でも言いすぎでしょ」

「自分の息子に向かってなんて事言うの」

「…………」


朝から空気は最悪だった。2人が俺のために怒ってくれた事は嬉しかったけれど秀に言われると素直に喜べなかった。

そもそもの原因はお前だろと考えてしまうから。これが良くない考えだというのはよくわかるけどそう考えてしまう。


「大丈夫だよ。もう慣れてるから。ごめんなさい、せっかくの朝食の時間をこんな空気にしてしまって」


俺はそう言って目の前の座布団に座って箸を取る。


「いや、兄さんが謝る必要はないよ」

「そうよ、拙くんが謝る必要はないわよ」

「ありがとう2人とも」


そして僕は朝食を食べる。


「ねぇ、兄さん今度の日曜、模擬戦しない?」

「い……いいけど、珍しいねお前から誘うなんて」


いつもはたまたま練習が被った日に模擬戦をするか俺から誘うことが多かった。


「もうすぐ大会があるでしょ、僕それに出るからさそろそろ本格的に練習しないといけないと思って」

「なるほどね。今回は誰が出るんだ?」

「今回は山田先輩、佐藤先輩、倉田先輩、峰岸先輩、とかあと……」


全員俺の同級生もしくは後輩でなんなら試合をした事だってある。


「あーあ兄さんが部活やめてなければ兄さんと出れたのに」


弟は寂しげにため息を吐いてそう言った。


「今みんな強いだろ。多分俺じゃ出れないよ」


俺がそういうと秀は首を大きく横に振った。


「いやいや、兄さんだって毎日練習してるじゃん。それに兄さん大会出てた時は全国ベスト4とか取ってたじゃん」

「いや、あれはたまたまだよ」


秀に褒められて少し口角が上がる。


「いくら努力しても勝てなければ意味はない」


さっきまで黙っていた父さんが発した言葉で僕の口角は叩き落とされる。

さっきまでいい感じだった空気が見事に消え去った。

この人は空気が読めない選手権があれば金メダル確実だろ。

でも父さんの言う事はこの家じゃ間違えではない。


ーー勝者が全てーー


これが家訓だ。勝者にだけ価値があり敗者に価値はない。そう、それは家としては正しいけど俺の努力を否定されるのは気に入らなかった。反論の意を込めて父を睨むと父は俺とは比にならないほど恐ろしい形相で睨み返す。


「なにか文句でもあるか」

「あるにはあるけど黙っておくよ」

「それでいい。敗者に文句を言う権利はない」


少し泣きそうだった。ここまで敗者だと実感されて、父さんの中での俺と秀との価値の差を知って。俺を黙らせた父はなにか言おうとしていた三葉さんと秀を睨んで黙らせた。

その後はただただみんな箸だけを動かしていた。


「ごちそうさま」


俺は部屋に戻って制服に着替えて洗面所で歯を磨く。その時洗い物をしていた三葉さんが話しかけた。


「あの人本当に終わってるね。姉さんの時から何も変わってない。拙くんはあんなやつの言っている事気にしなくていいよ」

「はい、ありがとうございます」


歯磨きをして髪を整えて廊下にある鞄を取って家を出ようとした時秀に呼び止められた。


「兄さんちょっと待って。今日は一緒に行こ」

「いいよ」


そして弟の支度が終わるのを待って2人で学校に向かった。















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