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1日目



変な猫だったな。馬鹿げた能力だったけど俺が望む未来とはなんなのか。

挙げてみればたくさんある。父さんに俺の価値を認めてもらうこと、秀に剣で勝つこと、学校で友達をたくさん作ることそして母さんの病気が良くなること。まだあるにはあるが代表的なものはこれくらいだと思う。だけどこれとあの能力との繋がりが一切見えない。


「考えても仕方ないか。帰ろ」


俺は来た道を戻って通学路に行き、バスに乗った。バスは住宅街を抜けて、大通りに行った。そこを数十分走って別の住宅街に入った。そしてすぐにバス停で止まった。

俺はそこで降りた。そこから数分歩くと坂道に出会う、それを登る。さっきまでの道には洋風の建物がたくさん並んでいたが今は右側の森と正面に見える道路しか無い。俺の家はこの坂を登った先にある。

まるで全ての家を見下ろすかのように立っている和を基調とした建物それが俺の家である。家の扉を開けた。


「ただいま」


返事はない、いつもの事だ。俺は荷物を置くために突き当たりを曲がって階段に登った。

部屋に入ろうとドアノブに手をかけた時父さんが書斎から出てきた。


「ただいま」


一応言っておいたが返事はなかった。父さんはそのまま階段を降りた。いつものことだけど目の前で無視されると少し傷つく。嫌な気分になりながら部屋に入って奥のクローゼットから運動着と木刀を取り出し、嫌な気分を吹き飛ばすかのように叫ぶ。


「よし、今日もやるか!」


そして部屋を出て一階に戻って廊下を歩いた。途中和室からテレビの音が聞こえてきたので父さんがそこにいる事を認識した。

そしてさらに奥まで進んで木の枠出てきたガラス張りの扉を開けて縁側に出た。俺はサンダルを履いて離れの道場まで歩いた。

運動着に着替えて木でできた人形を自分の近くに置いた。


「よし、これで準備完了」


まず木刀を握って素振りをする。どんなに腕が辛かろうが最低でも500回は振り続けるようにしている。


「はっ!ふっ!」


木刀が空気を切る音と自分の呼吸だけが聞こえる。200回あたりで手汗で木刀が抜けそうになった。


「はっ!はっ!」


400回で腕が痛み始める。


「はっ…はっ!」


500回目自分の足元が汗で軽い水たまりが出来ていることに気づいた。

600回を超えると腕の感覚が消え、声を出すことを忘れてしまう。

697、698、699、700


「はぁー!今日の素振りは取り敢えずこんなもんにしよ」


素振りから解放された腕にやる気は一切感じなかった。


「少し今日は振りすぎたかな」


一瞬、今日はここまでにしようかななんて考えが浮かんだ。


「いや、これだけでへばっていたらあいつには勝てない。まだやろう」


敗北した時の悔しさが自分を引っ叩く。

俺は人形を自分の前に置いた。

今からやるのは人形を人に見立てて技を出すことで技の完成度を高める練習だ。


「やぁー!」


基本的な技や難易度が高い技、色々な技を何度も何度も打ち続ける。死んだ腕は最後通告とばかりに悲鳴を上げているようだがそれは俺の思考に届かない。


「やぁー!はっ!はっ!」


まだ、まだ行けるぞ!俺は!

俺の心は体を置き去りにした。


「いっっ!」


おいて行かれた体は追いつこうとして前を走る心の足を引っ張るように電流のような激痛を走らせた。動かそうと思っても腕がピクピクするだけで自分の思った通りに動いてくれない。


「やりすぎたか……」


時計を見るともう9時だった。

俺は5時間ぶっ通しで刀を振ってたのか。

これ以上は無理だと感じ家に帰った。

汗を流そうと風呂に向かうと通り道のキッチンで秀が冷蔵庫を漁ってた。


「あれ兄さん、すごい汗だくだねぇ。もしかしてさっきまで道場で練習してた」

「あぁ、してたよ。そう言うお前は何してんだ?」

「僕?僕はね夜ごはん食べたけど少し物足りなかったからなんか適当なの探してる」

「そう、じゃあ俺風呂行ってくるから」


呑気なものだな。お前に勝つために必死に練習してる間に食い物探しとは。……でも俺はそんな奴に負けてるのか、そんな奴よりも価値がないのか。


ーー俺の努力はいつ報われるのだろうかーー


毎日毎日これぐらいの練習を続けているのに全く勝てない。積み重ねた努力を持って大して努力もしてない秀と戦って負ける。その度に自分の努力が否定されたみたいでイラつきが止まらなかった。

いかんいかん、こんな事を考えるのは一旦風呂に入って全て忘れよう。

そして風呂に入ってその日は夜飯も食べずそのまま泥のように寝た。










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