クズの集い
「剣城 拙、君わたしと契約しないかい」
とクロとシロの両方の尻尾を立てた猫は俺の目を見て言った。
まるでアニメや漫画みたいな状況だ。もしかしたらものすごい特殊能力をもらえるのかと期待した。
「契約ってどんなの?」
「思ったよりすんなりと飲み込んだな、普通喋る猫にいきなり契約しよだなんて言われたら何かしら疑ったりすると思うんだけど」
「なんかアニメのワンシーンみたいでワクワクして」
だって喋る猫、それに加えてその猫から契約しよだなんて完全に空想での出来事じゃないか。期待に胸を膨らませている俺とは違って猫は真顔のままだった。
「まぁ、楽だからいいか。契約内容を説明する前に一つ確認させて」
「なになに?」
「君はさ、弟に剣術で負けていることに対してとてつもない劣等感を抱いているよね」
それを聞いて先程の期待は消え失せた。
「なんでそれを」
期待に満ち溢れた表情は一瞬で曇った気がした。
「さらに家では父親から弱者という理由から自分の価値を否定されて、学校でも友達がいないから自分に価値がある事を証明してくれる人間がいない。そうだよね」
「黙れ」
「それとは対照的に弟は中学に入って友達がたくさんできて彼女もできて、勉強もできて部活でも大活躍」
「黙れって言ったのが聞こえなかったのか!」
俺は激昂して猫に蹴りを入れた。
「は?」
入れたはずだった。俺の足は猫の体をすり抜けた。
「いきなり蹴るとはそれほど図星だったのか」
「今、すり抜けた」
「私は幽霊だからな」
今まではなんとか飲み込んできたがこうも現実離れした情報が連続で入ってくると流石に飲み込むのにも限界が来る。
「ゆ、幽霊!?」
「君はさっきから喜んだり怒ったり驚いたり忙しいやつだな」
「もう俺意味がわかんないよ。俺の事や弟の事を知っていてさらに幽霊だなんて。今まで飲み込んでいた分まで出そうだよ」
「俺の事や弟の事を知っているという事は俺が確認した事は事実だな」
猫は俺の気持ちなんてお構いなしだった。
もう猫のことを飲み込む事を諦めようそうしないとこいつは俺のことを置いて行ってどんどん話を進めていきそうだ。
「事実かどうかはそちらのご想像にお任せするよ」
「もし事実ならば今からする契約はきっと君を君の望む未来へと連れていってくれるよ」
「どんな契約?」
「簡単に言うと殺した人間からその人間の能力を奪えるっていう能力」
一瞬思考が止まった。ん?今殺した人間から能力を奪うって言ったよね。え?殺す?
「ちょっと待て。そんな犯罪を犯さないと成立しない馬鹿げた能力なんざ俺はいらない」
「安心しろ。仮に殺してもお前が警察に捕まる事はほぼない」
いやいや警察に捕まるとか捕まらないとかが問題じゃなくて人を殺す事自体が問題なんだよ。
「そんな能力なら俺はいらないから帰る」
猫は若干不満気に俺を見た。
「めんどくさいなーまぁでもいいか」
「?」
「君はどうせまたすぐ来るから。私はいつでもここにいるから。契約したくなったら来てよ」
そう言ってクロとシロの両方の尻尾を立てた猫は消えた。




