図書館と結婚式 2
二人の結論として、図書館の名前は二人の名前を掛け合わせて『アーロミリア』となった。
「逆に恥ずかしくはないですか?」
「そう? 俺は、幸せだ」
「…………そうですか。それなら仕方ないですね」
ギュッとアーロンの腕にミリアが抱きつくように、腕を絡めた。
目の前には、赤く長い絨毯が引かれている。
「騎士団長に、宰相、上流貴族……。このあと国王陛下までいらっしゃると聞いたのですが、本気ですか?」
「招待してもいないのに、よくもまあこんなにたくさん押しかけたな」
主賓席で、ミリアの家族がいたたまれないとでも言うように、肩を縮めている。
「それが、竜騎士様がこの王国に及ぼす影響というわけですね」
「……そうかもな。この国は、なぜこんなにも魔獣に狙われるのか。俺がいなかったら、たぶん三度は滅んでいる」
「……私」
それはつまり、この国にとどまる限り、アーロンは戦い続けなければいけないということだ。
ミリアは、この国が好きだ。家族が大切で、離れたら滅ぶかもしれないのに、アーロンとともに竜の国に行くなんて出来ない。
本当なら番を見つけたアーロンは、自由になれるはずなのに。
「アーロン様を守ります」
国王陛下から受け取った本には、遠くにいても番の回復を助けることが出来る方法が、記されていた。
それは、今夜二人の間で実現するだろう。
「……俺の台詞だ。ミリア、君を守れることが俺の幸せなのだから」
少し早い、誓いの口づけを軽く交わして、二人は前を見た。
扉から国王陛下が現れて、正面の宣誓台に上がった。
「国王陛下自ら、宣誓を受け付ける気なのでしょうか」
「うーん。俺もこれは予定外だ」
壇上からこちらを見下ろす国王陛下は、口を歪めてとても楽しそうだ。
「普段、こんな周囲を困惑させること、するお方ではないんだけどな」
「意外と好きになれるかもしれません」
「……俺以外を好きになるなんて、ダメだ」
「ふふ。名付け親になるお方ですから」
アーロンの右腕に腕を絡めたまま、そっと見上げたミリア。
赤く染まった耳は、アーロンが照れている証拠だ。
「君を妻に出来るなんて、最高に幸せだ」
「……私もです」
二人は、図書館の中央に引かれた赤い絨毯の上を歩き出す。
祝福するように天窓から光が降り注ぐ。
それは、番という運命を抜け出た、二人の幸せな毎日の始まりを告げていた。
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