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本の虫令嬢は竜騎士様の最愛つがい  作者: 氷雨そら


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20/23

王命による結婚 6



 王からの手招き。

 いつも気負うことなく、国王と接しているアーロンだが、今日ばかりは緊張を隠せずにいた。


「ふーん。ウェンライト男爵令嬢、もっと近くに来なさい」

「は、はい……」


 ここに来て、さすがに緊張したのかと、アーロンが見つめている中、ミリアは優雅な礼を見せた。


「……美しいな。さすがは、孤高の竜騎士を射止めただけある」

「孤高」


 ミリアが言いたかったことが、アーロンにはわかってしまう。

 初対面で、番を見つけたうれしさでミリアに詰め寄ってしまったことは、すでにアーロンの中で黒歴史になりつつある。


 もちろん、ミリアにも番としての認識があったのなら、問題ない行動だったのかもしれないが……。


「……も、もったいないお言葉でございます」


 視線を前に向けながら、微笑んでみせるミリア。


 そういえば、アーロンがあんな勢いで詰め寄ってしまったときも、ミリアは逃げ出したりしなかった。


「ふむ。祝いの品を与えよう。ウェンライト男爵令嬢は、なにが欲しい? 何でもいい、言ってみろ」


 会場がざわつく。


 国王陛下から、直々に、しかもなにが欲しいかと問われる。


 それは、最高の栄誉であると同時に、ほとんど全ての願いが叶えられるということだ。


「何でも、ですか?」


 会場の視線が、全てミリアに集中する。

 なにを願うのかと、誰もが興味を持つ。


 なにを願うのか、すでに予測してしまった約1名を除いて……。


 ミリアは、コテンッと首をかしげた。


「竜人に関する本……でしょうか? 読んだことのないものがいいです」

「そうか……。つまり、バルミール卿ですら手に入れることが出来なかった資料が読みたいと」

「というより、まだ見ぬ本が読みたいです」


 口元をニヤリと歪めて、国王はアーロンに視線を向ける。

 王国の騎士、誰一人として敵わず、誰にも興味を示さなかったアーロンが、確かにミリアの一挙一動に翻弄されている。


「なるほどな」


 シーンッと会場が静まり返る。


 ミリアの願いは、竜人の秘密を知りたいというものだと周囲には聞こえるだろう。


 けれど、アーロンは知っている。ミリアは、本当に見たことのない本が読みたいだけなのだと。


「とっておきを用意しよう」

「ありがとうございます!」

「ところで、アーロン・バルミール卿の願いも、念のため聞いておこうか」

「は。ミリア嬢との婚姻を認めていただきたく」


 はっ、しまった! という顔を隠しきれず、先ほどまでのよそ行きの表情が剥がれてしまったミリアと、あきらめきった表情で微笑むアーロン。


 珍しく軽く目を見開いて、素の表情を見せた、国王ガルーダ・ドルトムント。


「…………はは! 認めよう。二人の子どもは、必ず俺に一番に見せに来るように。名前をつけてやろう」


 貴族達の隠しきれないざわめきの中、微笑んだままのアーロンと、やはりどこか引きつった微笑みのミリアは、二人仲良く腕を組んで退場したのだった。

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