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本の虫令嬢は竜騎士様の最愛つがい  作者: 氷雨そら


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19/23

王命による結婚 5



 それにしても、嫌な視線だ。


 国王ガルーダ・ドルトムント陛下のそばに近づくにつれ、嫉妬や憎しみを含んだ、いつまでも降り続く雨のように、冷たくジットリとした目線が、ミリアとアーロンに向けられる。


 ミリアが不安がっているのではないかと、さりげなく視線を向けるアーロン。


「見て下さい。あの絵、古代神話の一場面です。今は、ほとんどの資料が失われたと言われているのに。先日読んだ古文書に描かれていた場面ですよ! ……あんなに色鮮やかに。さすがは王宮ですね」

「は?」


 アーロンには、ただ男女が見つめ合っているだけの絵画に見える。

 扇子で口元を隠したまま、満面の笑みを返され、アーロンは、また本の話かと脱力した。


「……君の心臓は、鋼で出来ているのか」

「え? 何か仰いましたか?」

「いや、何でもない」

「そうですか?」


 周囲の視線に気がついていないらしいミリア。

 ミリアが、不安がっていないのであれば、捨て置いても良いのかもしれないが……。


「そろそろ面倒になってきたな」


 誰でも聞こえないような小声でつぶやいたアーロンは、密かに、威嚇を含めた魔力を周囲に放つ。

 その途端、つぶらなすみれ色の瞳が、まっすぐにアーロンを見つめた。


「……アーロン様、あまり周囲に敵意を向けるのはおすすめしません」


 そんな言葉とともに、アーロンの上衣の裾をミリアがツンツンッと引っ張る。

 威嚇は、対象だけに向けたはず。アーロンは、軽く目を見開いた。

 

「……どうしてわかったんだ、ミリア」

「真横で、今にも戦いそうな雰囲気になれば、誰でも気がつきますよ。私まで、ピリピリしました」


 そんなはずはない。

 アーロンから魔力を向けられた貴族は、青くなって震えているが、周囲にはわからないようにしたはずだ。

 もちろん、ミリアにも。


 ……番だから、なのだろうか。


「さ、国王陛下に結婚のお許しを請うのでしょう?」


 ミリアは、アーロンの腕に、白くて細い腕を絡ませて、優雅に笑う。

 そのあまりの美しさに、アーロンは、思わず見惚れた。もちろん、周りの貴族達もミリアの笑みから目が離せずにいる。

 アーロンの人間と比べて優れた聴覚には、周囲から感嘆のため息まで聞こえる。


 その視線とため息に、ミリアは気がついているのかいないのか。


 おそらく後者に違いない。社交界から縁遠かったミリアが、周囲の視線を一身に受けてしまうのは、天性のものなのだろう。


 それとも、ほんの少し引いた竜人の血がそうさせるのか。


 どちらにしても、これだけ注目されても平気なミリアが豪胆なのだ。


 アーロンは、そう結論づけた。


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