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本の虫令嬢は竜騎士様の最愛つがい  作者: 氷雨そら


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17/23

王命による結婚 3



「ミリアにとって、俺はどんな存在?」


 我ながらずるいな、と思いながらアーロンは口を開いた。

 だが、もしもアーロンにとってミリアがどんな存在か語り始めたなら、一晩では語り尽くせない。


 いくら恋人同士になれたのだとしても、二人の気持ちには温度差があるのだと、アーロンは思っている。


「……うーん。結婚するとしたらアーロン様しか考えられないくらい好きですよ?」

「えっ?」

「……えっ? アーロン様にとっては、違うのですか? わぁ、恥ずかしいです。初対面の時、求婚されたので、今でも有効なのかと……」


 眼鏡の奥で、すみれ色の瞳を瞬き頬を染めるミリア。


「あっ、えっ。本当に……? いや、有効どころか、今すぐさらって結婚式にしたいくらいなのだが」

「極端です」

「……しかし、なぜ」


 アーロンは口ごもった。

 王命による結婚。アーロンは、ミリアのそばにいられるのなら理由は何でも良いが、ミリアはどう思うだろうと、頭を悩ませていたのに。


「アーロン様、陛下との謁見から帰ってきてから深刻な表情しかしていませんよ? きっと、私が関係しているのでしょう? 違いますか?」

「……違わない」

「アーロン様の想像する竜人の愛と、私が思う人間の愛にはずれがあるんです。竜人と番に関する本をたくさん読みましたけど、理解できる部分と出来ない部分があります」

「そうだろうな……」


 ミリアの手は、未だにアーロンの手を強く握ったままだ。


「私とアーロン様は、人間と竜人。違うのかもしれません。……でも、人間同士だって、ちゃんと言わないとお互いのこと分からないんです」


 番であれば、それだけでそばにいる理由としては十分だ。

 そして、確かにアーロンとミリアは番なのかもしれない。


 それでも、アーロンは、番というだけで、ミリアにそばにいてほしいとは、もう思えなかった。


「……そうだな。王命なんて伝える前に」


 きつく握っているミリアの手の甲に、アーロンは口づけた。

 それだけで、あれだけ強く握られた手は、ふにゃりと力を失って離れていく。


 アーロンは、ミリアの目の前にひざまずいた。

 金色の目が、上目遣いにミリアを見つめる。


「愛している。結婚してほしいのは、君だけだ。どうか俺の伴侶になってくれないか」

「……アーロン様。王命、ですか?」

「ミリアと結婚するようにという王命だから従うだけだ。別れろという命令だったなら、君が許してくれるなら連れて逃げる」

「そう、ですか」


 出会ったばかりのアーロンとミリア。

 ミリアだって、結婚するならアーロンがいい。


「私は、アーロン様の弱点になりますよ」


 まっすぐ見つめるミリアの瞳は、思慮にあふれる。古今東西、強者の弱点は狙われるのだ。


「……俺の弱点? 弱点というより、ミリアを危険にさらすのは、俺だ。それでも、今すぐ結婚してほしいのは」

「私を守るためですか?」

「……守りたい。ミリアがいなくなったら俺は」


 少し震えたアーロンの両腕に抱きしめられて、ミリアは覚悟を決めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初対面のときの迫り方がウソのように悩んじゃうアーロン様♪ かわいいです(〃ω〃) 無事にプロポーズできてよかった*\(^o^)/*
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