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本の虫令嬢は竜騎士様の最愛つがい  作者: 氷雨そら


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15/23

王命による結婚 1



 アーロンが呼び出されたのは、次の朝だった。


「討伐、ご苦労だったな」

「陛下……。ええ、まさかあんなものが現れるとは」

「大けがをして、復帰には一ヶ月以上かかると報告を受けていたのだが、思いのほか元気そうだな?」


 そんな情報を得ていながら、翌日には呼び出すとは、どこまで知っているのかと、密かにアーロンは戦慄した。

 すでに、ミリアの力でアーロンが驚異的な回復をしたことすら、国王ガルーダ・ドルトムントは、知っているのではないかと思えてくる。


 昨日までアーロンが戦っていた、巨大な白虎だった。

 強さで言えば、竜には劣るかもしれない。しかし、多くの魔獣を従えた白虎は、知能も高く、竜とともに戦うアーロンですら苦戦した。

 人間の力では、王国の精鋭達ですら太刀打ちできないだろう。


「アーロンの存在がなければ、この王国は魔獣に蹂躙されていたことだろう。褒美を取らせる。とりあえず、ウェンライト男爵家令嬢ミリアと結婚しろ」

「――――は?」

「これは決定事項だ。明日、褒美を授与するとともに二人の婚約発表を行う」

「…………どういうことですか」


 ガルーダ・ドルトムントの赤い瞳が冷たく細められた。

 見るものを震えさせるような王者の威厳。

 しかし、アーロンはまっすぐに金色の瞳を見据える。


「お前には、ほとんど弱点がなかった」


 確かに、竜人であるアーロンを傷つけられる人間なんて、そうそういないだろう。

 毒だって、人間よりも敏感な嗅覚を持つアーロンを欺いて飲ませることはできない。

 そもそも、竜人は毒物に耐性がある。


「俺だったら、ミリア嬢を狙うな?」

「それはっ」


 アーロンの危惧していることも、それだった。

 少なくとも、アーロンの屋敷にある図書室は、強力な結界を張ってあるし、屋敷の使用人達も優秀だ。

 しかし、ウェンライト男爵家に戻ったミリアを守りきるのは、難しいだろう。


「――――結婚しろ。そして、屋敷の中に囲い、守れ。俺は、番を失った竜人に、王国を破壊されてしまうなんて御免だ」


 番を失った竜人は、寝食を忘れ、最期には死んでしまう。

 だが、その原因が他者にあった場合、竜人は決してその相手を許さない。

 もしも、ミリアが王国の誰かに害されれば、その怒りは王国を灰にするだろう。


「…………そうですね」


 アーロンが、もしもミリアのことを本当に番とだけ認識していたなら、こんな迷いを感じることはなかっただろう。

 しかし、アーロンは、ミリアに番としてだけではなく、恋人として愛を捧げたいと願ってしまった。


 選択肢はそれほど多くない。


 アーロンはため息をついた。

 ミリアは、どう答えるだろうか。

 ようやく思いが通じ合えたばかりなのに、そんなに急に距離を詰めたら嫌われてしまうのではないだろうか。そんな後ろ向きな思考、アーロンは自分がまさかそんな考え方をするなんて、ミリアに出会うまで想像もしていなかった。


「なぜだろうな。お前は、ミリア嬢のことになった途端、ただの青年のようになる」


 国王ガルーダは、少し肩を落として立ち去るアーロンの背中を見送りながら、少し楽しげにつぶやいたのだった。

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