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P3(最終ページ)

「あ、ああああの、ぼ、僕、トイレ行ってくるっ」


 言い終わるのといほぼ同時に、ユキは滑るように、いや、実際、滑りながら部屋を出て行った。


 行っちゃった。さてと……。


 私は独りきりの部屋で立ち上がり、窓へと向かう。水色のカーテンと、窓を開け、窓の縁に腰を掛ける。


 そこに座ると、この部屋の涼しい空気とは違った、ぬるく湿った空気が、入り込み混ざり始め、私を包み込む。


 このあたりは住宅街。遠くの国道を走る車のエンジン音が聞こえてくる。


「ごめんね……」


 そうつぶやいてから、目をつむり、私は外へと体重をかけた。


 この瞬間だけは、いつまで経っても慣れることはない。


 目を開いてみると、地面がスローモーションのようにゆっくりと近づいていた。


 私は彼女。


 ユキが居ないと駄目になる。


 ユキに嫌われると消えてしまう。


 それでも、彼女。


 家の一階から声が聞こえる。


「タカユキっ、いつも学校から帰ってきたら部屋に籠って。……一人でいったい何してるのよっ?」


 あれは、ユキのお母さんの声かな。


「うるさいなー。なんでも良いだろ別に」


 これはユキの声だ。


 ユキって、内弁慶なんだよね。ふふっ。


 地面に当たりそうになるが、衝撃はなく突き抜けて、落ち続けてゆく。ちょっと、速度が緩んだかな?

 

 何もない黒い世界。私はふわふわと浮いた状態でいる。そしていつものようにその状態のまま、まどろんでゆく。底になんて着かない。


 ……ごめんねユキ、勝手に帰ったりして。それでも、また明日会えるよね。


 何も見えなく、何も感じられなくなり、次に目が覚めるのは、また日のあたる場所。ユキとの待ち合わせ場所。その間、眠っているのか、気を失っているのか、それとも存在していないのか私には分からない。


 明日はどんな髪型かなあ。どんな服かなあ。可愛かったらいいなあ。あ、でも、露出の多い服はやめてね。恥ずかしいから。


 あ、顔と性格も変えないでほしいなあ。私自身は変えられたこと分かんないけどさ。なんとなく、私が、私でなくなってしまうみたいだから。


 また、明日ね、ユキ。


 ――私は彼女。ユキの、日下 隆行の彼女。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

感想、アドバイス、ダメ出しはご自由にお願いします。

とても喜びます。


まだ数はありませんが、他にも青春系、女子主人公をメインにたまに百合展開もありつつ書いていますので、よろしければ。

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