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最近分かったことだけど、ユキはこれでしっかり聞いているらしく、一度話した友人の話をすると「あの時言ってた」と反応してくれる。それがまた嬉しくて、私はさらにヒートアップして話してしまい、一人でずっと話していることがよくある。ユキはこれで良いらしい。
これも最近気づいたことだけど、ユキは自分のことを話すのをとても嫌っているらしい。だから私は、ユキがどんな高校生活を送っているのかも知らない。どんな友達が居て、どんな話をしているのかも聞いたことは無い。まあ、この自己主張の強い部屋を見れば、想像するのは難しくないけど。
話していると、話の種が尽きることがある。そういう時は部屋を見回す。前回私が来た時と何が変わっているのかを見つけるために。例えば、マンガが増えていたり、ライトノベルが増えていたり、それを指摘すると、ユキは熱く語り出し、私は黙ってうなずく。実を言うと、話の内容はよく分らない。それでも、ユキが熱く語っている表情。それが、私は、たまらなく大好き。
稀に部屋の模様替えがされていて、それを指摘した時は「何となく」で流されて、話が終わったこともある。
しかし、今日は少し違っていた。部屋をきょろきょろと見回していると、ユキが口を開いた。
「あ、あのさ……」
どもりながら言うユキに、私は、「なあに?」と聞き返す。
「ユカリさんってさ、妄想?」
……どういうこと? モーソー? 妄想好きってこと?
私が少し困っていると、ユキも困りながら続けた。
「いや、違うんだ。今日学校でさ、ユカリさんの話をしてたら、お前にそんな彼女居る訳ない。妄想かなんかだろ。って言われてさ……」
私が妄想ってことは、私は存在してないってこと? ……イライラするなあ。
机の下で、両掌を握ったり、開いたりしてみる。
ほら、私は存在してるでしょ。
「それで気になったんだ。その……あの……ユカリさんみたいな……良い人が、本当に僕の恋人なのか、疑問になったんだ」
私は、少し力を込めて両手でテーブルの面を叩き立ち上がる。
その音に驚きながら、こちらを見ているユキ。その目を見つめながら、私はスカートをなびかせながら、ひらりと回って見せた。
「これでも私が存在しないって言うの?」
なぜかユキは顔を真っ赤にしている。
疑問に思った私が、「どうしたの?」と尋ねる。
「あの……スカートが……ふわって、なってて……かわいいな…………なんて」
そう言われると、私の頬までユキと同じく真っ赤になってしまい、小さく跳ねるように座った。
いくら非現実の存在と言われて、腹が立ったとはいえ、どうしてこんな事しちゃったんだろう。ユキの顔を見るのも恥ずかしい。
ユキも同じように考えてるのか、真っ赤にした顔を上げようとはしない。
えっと………………こういう時は、どうすれば良いの? 神様、教えて下さい。
「あっ……」「そのっ……」
私がこの状態をどうにかしようと声を出した。それに対しユキも、この状態を打破しようと思っていたらしく、動き始めた。どうにも間が悪い。
また、黙りこんでしまう二人。チラッと時計を見る。
……そろそろ時間かな。
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次回更新は明日(7月5日)を予定しています。
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