表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

P2

 最近分かったことだけど、ユキはこれでしっかり聞いているらしく、一度話した友人の話をすると「あの時言ってた」と反応してくれる。それがまた嬉しくて、私はさらにヒートアップして話してしまい、一人でずっと話していることがよくある。ユキはこれで良いらしい。


 これも最近気づいたことだけど、ユキは自分のことを話すのをとても嫌っているらしい。だから私は、ユキがどんな高校生活を送っているのかも知らない。どんな友達が居て、どんな話をしているのかも聞いたことは無い。まあ、この自己主張の強い部屋を見れば、想像するのは難しくないけど。


 話していると、話の種が尽きることがある。そういう時は部屋を見回す。前回私が来た時と何が変わっているのかを見つけるために。例えば、マンガが増えていたり、ライトノベルが増えていたり、それを指摘すると、ユキは熱く語り出し、私は黙ってうなずく。実を言うと、話の内容はよく分らない。それでも、ユキが熱く語っている表情。それが、私は、たまらなく大好き。


 稀に部屋の模様替えがされていて、それを指摘した時は「何となく」で流されて、話が終わったこともある。


 しかし、今日は少し違っていた。部屋をきょろきょろと見回していると、ユキが口を開いた。


「あ、あのさ……」


 どもりながら言うユキに、私は、「なあに?」と聞き返す。


「ユカリさんってさ、妄想?」


……どういうこと? モーソー? 妄想好きってこと?

 

 私が少し困っていると、ユキも困りながら続けた。

「いや、違うんだ。今日学校でさ、ユカリさんの話をしてたら、お前にそんな彼女居る訳ない。妄想かなんかだろ。って言われてさ……」


 私が妄想ってことは、私は存在してないってこと? ……イライラするなあ。


 机の下で、両掌を握ったり、開いたりしてみる。


 ほら、私は存在してるでしょ。


「それで気になったんだ。その……あの……ユカリさんみたいな……良い人が、本当に僕の恋人なのか、疑問になったんだ」


私は、少し力を込めて両手でテーブルの面を叩き立ち上がる。


 その音に驚きながら、こちらを見ているユキ。その目を見つめながら、私はスカートをなびかせながら、ひらりと回って見せた。


「これでも私が存在しないって言うの?」


 なぜかユキは顔を真っ赤にしている。


 疑問に思った私が、「どうしたの?」と尋ねる。


「あの……スカートが……ふわって、なってて……かわいいな…………なんて」


 そう言われると、私の頬までユキと同じく真っ赤になってしまい、小さく跳ねるように座った。


 いくら非現実の存在と言われて、腹が立ったとはいえ、どうしてこんな事しちゃったんだろう。ユキの顔を見るのも恥ずかしい。


 ユキも同じように考えてるのか、真っ赤にした顔を上げようとはしない。


 えっと………………こういう時は、どうすれば良いの? 神様、教えて下さい。


「あっ……」「そのっ……」


 私がこの状態をどうにかしようと声を出した。それに対しユキも、この状態を打破しようと思っていたらしく、動き始めた。どうにも間が悪い。


 また、黙りこんでしまう二人。チラッと時計を見る。


 ……そろそろ時間かな。


お付き合いいただきありがとうございます。

次回更新は明日(7月5日)を予定しています。

よろしくおねがいします。


感想、アドバイス、ダメ出しはご自由にお願いします。

とても喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ